いまさら聞いた

社会保険電子申請が義務化されています

Charlotte社員ブログ 第1回

公開日:2021年3月5日

はじめまして! 社会保険業務と電子申請をもっともっと学びたい黒澤です。

今回は、勉強中の私が、いままでに社会保険電子申請の義務化について、概要からレアケースの話まで幅広く先輩に具体的に突っ込んで聞いたことを、みなさんにお伝えしようと思いました。

Charlotteでは初めての試みになりますが、いま私たちが考えていることや知っていることを、企業様や労務担当者様にうまくお伝えできておらず、「もっともっと知っていただくことで何か変わるかも!」と思い立ち、私たちが「ナルホド!」と思ったことをお伝えできるよう、上司に無理を言ってこのようなページを立ち上げました。

社会保険業務と社会保険電子申請のことをよくご存じの方も、そうでない方も、ぜひご覧ください。

Charlotte推進室 企画チーム

安田

安田(やすだ)
入社以降ずっとCharlotte推進チームに所属。社会保険業務を勉強し、若手ながらセミナー講師を担当。

黒澤

黒澤(くろさわ)
企画イベント会社から転職し、現在入社1年目。社会保険は過去に経験がなく、ただいま勉強中?

行政からのお知らせが実務担当者まで届いていないことも。
電子申請義務化対象企業か要確認!

黒澤

突然ですが、安田さん!

電子申請の義務化対象であるということをご認識されていないという企業様がいらっしゃったというお話が、昨日の社内会議で挙がっていました。

去年(2020年)の4月から始まっているので、皆さんすでにご存じかと思っていましたが、違うんですね。

なぜいまだにこんな状況なのでしょうか?
私には皆目見当もつかず……。

安田

私もインパクトが大きかった話題でした。もう一度整理すると、今回は健康保険組合側から、対応の催促を受けて検討を開始するというケースでしたね。そこでご相談をいただき、電子申請を初めて検討していると。

一般的には、厚生労働省から送付されたり、ハローワークで配布されているリーフレット(図1図2)などを参考にしてご検討されているようなんですが、「リーフレットが企業の代表取締役宛に届くため、実務担当者までまわってこなかった」というケースはよく聞きますね。

※ 厚生労働省より、2020年4月から特定法人についての「社会保険」の電子申請利用の義務化が報じられました。

黒澤

厚生労働省が2020年4月から各企業に配布しているリーフレットですよね。
インターネットからでも確認ができました。

安田

そうです。去年(2020年)の6月頃の社内会議で言っていましたが、もう一つのケースとして、ハローワークが一時期、コロナの影響で申請窓口の受付中止していましたよね。

来訪制限により、目に触れる機会が少なかったので、知るきかっけを失ってしまった可能性も考えられます。

黒澤

ナルホド……。

つまり、労務担当者様の目に触れる機会が減ってしまっていたため、義務化の開始や義務化について正しく認識できていないことがあるかもしれないんですね。

安田

そうですね。

おさらいを兼ねて、「社会保険の電子申請義務化」について確認しておきましょう。
黒澤さんがナルホド、と思うことは重要なことですし。

黒澤

私、「義務化」の内容については、かなり勉強してきましたよ!

安田

頼もしいですね。では……いきなりですが問題です。
「義務化とされる対象企業と、対象となる手続き」は何でしょうか?

黒澤

カンタンですね!

資本金1億円を超える企業」と「健康保険厚生年金保険・雇用保険・労働保険の一部の手続き」 でしょうか?

安田

少し足りてませんが……だいたい正解です。ここで対象企業についてよく間違えられることがあります。

資本金1億円を超える企業というのは 1億1円からが対象企業となります。

黒澤

1億円ジャストの企業は対象外ということなんですね。間違えて捉えていました。危なかったです。

安田

図1にある「特定法人事業所」とは、①「資本金/出資金が1億を超える」企業の他にも、②保険業法が定める「相互会社」「投資法人」「特殊目的法人」の合計4つがあります。

POINT

①については
1)資本金が1億ジャストの企業は対象外であり、1億1円以上が義務化対象です。
2)資本金や出資金が定義されていない企業は対象外の可能性があります。

判別の手段
A. 税の電子申告の義務化と同じ条件の為、税が対象となっている企業
B. 企業の代表に対して、厚生労働省等から図1のような通知が届いている
C. ハローワークや日本年金機構から直接対象の連絡がある
D. 労働基準監督署から送られ来る申告書に図2のような記載がある場合

黒澤

ナルホド……。
①の「資本金/出資金が1億を超える」だけだと、迷われる企業様もいらっしゃるんですね。
社会保険だけじゃなく、社会を少しわかってませんでした……。

そういえば、今、社労士コラムを執筆いただくために先生とやり取りしていますが、社労士事務所にお願いしている義務化対象企業はどうなるのですか?

安田

いい質問ですね。

法律では、社労士や社労士事務所に委託する場合も、社労士側が電子申請を利用して申請しなければなりません。

委託している社労士に現状の申請方法を確認して、違ったら対応していただく必要があるということです。

黒澤

では、社労士も義務化対象企業から委託を受けていたら、電子申請を導入せざる負えないということですね!

安田

その通りです。黒澤さんから質問をもらったように、各企業様からもいろいろなご質問をいただいています。

以下、Charlotte推進室宛にいただいたご質問を、あわせてご紹介します。

よくあるご質問

Q1 「相互会社」「投資法人」「特殊目的法人」以外の義務化対象法人の「基金」は「資本金」としてみなされますか?

A1 いいえ、「基金」は基本対象外です。

Q2親会社が資本金1億円超の場合、資本金1億円以下の子会社も電子申請義務化の対象となりますか?

A2 法人単位で義務化の対象を判断します。資本金1億円以下の子会社は電子申請義務化の対象とはなりません。

Q3 紙申請から電子申請義務化への切り替え時期は、事業年度が切り替わる決算月でしょうか?

A3 各会社の決算月の翌月からです。

Q4 事業年度の途中で、資本金等を変更する場合、いつの時点をもって電子申請義務化の対象になるのでしょうか?

A4 「事業年度開始の時」に判定することになります。
事業年度開始時に資本金等が1億円を超える場合で、期中に資本金等が1億円以下となったとしても、当該年度は義務化の対象になります。
事業年度開始時に資本金等が1億円未満の場合で、期中に資本金等が1億円を超えたとしても、当該年度については義務化の対象となりません。

※ 厚生労働省HP掲載「電子申請義務化リーフレット・Q&A」より

安田

「これってどうなんですか?」とお気軽にご相談いただけますので、Charlotte推進室としても答えがいがあります。

わからないことは私たちがお客様に代わって、調査してお答えしているので、勉強にもなりますね。

黒澤

私も先輩方にたくさん質問しても怒らないでちゃんと答えてくれますので凄く、助かっています。

安田

…………。
そうですね、頼られて嫌な方はいないですからね。

電子申請の「義務化手続き範囲」は、意外と複雑
その手続きが対象になるかどうかをチェック!

安田

さて、次の問題。
手続きの対象範囲」は全部で何手続きあるでしょうか?

黒澤

また、問題ですか……。
雇用保険の資格取得、喪失、転勤、給付金関係、厚生年金保険健康保険の賞与、算定、月変……労働保険の一部です。

安田

かなりアバウトな覚え方ですね。図1の通り、正解は全12手続きです。(2021年1月現在)

黒澤

だ、だいたい、合っていましたね(反省)

安田

ちなみに、意地悪な質問ですが、「雇用保険 資格喪失(離職票あり)」は義務化対象手続きでしょうか?

黒澤

!!!
含まれません。図1の中に記載されていませんし、そもそも「離職票」は義務化ではない手続きということを、社内勉強会で聞きました。

安田

不正解です。

黒澤

……あれ?なぜですか、混乱してきました。
「雇用保険 資格喪失」は義務化対象手続きですし、「離職票」は義務化対象外手続きですよね。ここまでは合っている自信はあります。

安田

「雇用保険 資格喪失」「離職票のみ」の認識は正解です。
ただ、この件も社内会議で共有されまてましたが、「雇用保険 資格喪失」と一緒に「離職票」を提出する場合は義務化対象手続きとなります。
「離職票のみ」を提出する場合は、義務化対象外となるということです。
社内会議の資料(表1)のように「実は、それ義務化対象に該当します。」という手続きが多いんですよ。お客様からもよくご質問を受けます。

表1

電子申請義務化未対応に罰則はある?
様々な考えられるPOINTとは……

黒澤

きちんと理解しておかないと、知らない間に義務化未対応になってしまうってことですよね。
義務化対応しないと罰則などはあるのでしょうか?

安田

現時点では法的な罰則規定は定められていません。
お客様にもよく言われますね。「税は罰則があるのに……」と。

黒澤

罰則はないんですね。
だとすると、積極的に義務化に対応する必要性ってないんじゃないですか?
確か、部長がこの件でなにか仰っていたような……。

安田

業務の効率化やリスク排除など、電子申請対応には様々なメリットもありますよ!
罰則ではありませんが、厚生労働省の今後の対応方針として想定できるのは……。

POINT

①「厚生労働省が公表しているブラックリストへの掲載」
実際に厚生労働省は他の法律違反の企業については、ブラックリストを公開しています。(正式名称:「労働基準関係法令違反に係る公表事案」)
これは企業の株価への影響や、採用問題など様々な影響がでるため、単なる罰則金より怖い気がします。
厚生労働省HP:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/jirei_toukei/souken_jirei.html

※ 2020年1月31日時点では、行政との意見交換会の場において、厚生労働省より現時点での企業名公表予定は無いと回答されております。

②「照合省略の取り消し」
もともと、社会保険の申請で適正な事務処理が行われていることが条件ですので、電子申請利用の義務化に未対応の場合は取り消される可能性は十分にあるのではないでしょうか?
また、審査の優先度について、電子申請を優先していくとの話も出ているようです。

黒澤

まだ、想定ですよ……ね?
実際にそうなると、大変困ったことにはなりますね。

安田

えぇ、想定です。黒澤さんから受けた質問もよく質問されますが、他にも、私たちが思いつかなかったご質問をCharlotte推進室宛にいただいたことがあるのでご紹介します。

よくある質問

Q5 CDやDVD-Rは電子媒体なので電子申請となりますか?

A5 いいえ、電子申請と認められていません。

※ 官報 平成31年3月8日 号外 第44号「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令」より

Q6 全国健康保険組合への提出はメールで行うと電子申請となりますか?

A6 いいえ、電子申請と認められていません。
もし健康保険組合へ自社独自のソフトで電子申請をしている場合、マイナポータル経由でなくとも電子申請としてみなされます。

※ 官報 平成31年3月8日 号外 第44号「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令」より

Q7 国民健康保険や共済は電子申請対象外ですか?

A7 はい、国民健康保険(国保)は国民健康保険料、全国労働者共済生活協同組合連合会(共済)は組合員保険料のため対象外となります。

黒澤

電子申請の提出方法についてこんな法令があったなんて知りませんでした。すごくためになりました!

正直、この会社に入るまで法律なんて、なんとなく知ってるだけで、ちゃんと意識したことはありませんでした。

ひとつ疑問があります。私は安田さんや社内の方に質問ればスムーズに解決できることが多いですが、一般企業が「電子申請について」不明点があった場合、どこにお問い合わせすればよいのでしょうか?

誰に頼ったらいいのかわからない。
正しい情報を一般企業様や労務担当者様は
どうやって収集する?

安田

一般企業様の場合は、各行政機関のホームページを細かくチェックいただくか、ハローワークなどのリーフレットなどを読んでいただくのが一般的な方法となります。

電話でのお問い合わせは図1の下部にある通り、年金事務所や、労働局、ハローワークまたは都道府県労働局雇用保険電子申請事務センターへ確認する方法があるそうです。

ちなみに、電子申請の支援ツールを提供している私たちはどこから情報を収集しているでしょうか?

黒澤

「社会保険システム連絡協議会」を通じて共有される情報などから、最新の正しい情報を仕入れているのですよね?

安田

それだけではありません。
厚生労働省や内閣府、総務省、日本年金機構などの行政が準備しているサイトからの定期的な情報収集をしている社内担当もいるんですよ。
黒澤さんは共有されている情報を目にしたことがありますか?

黒澤

同じ部署内にそのような担当者がいるとは……。
私の知らないところで最新の情報や正しい情報を収集するために動いているだなんて……。
いままでまったく知りませんでした。

安田

ですので、黒澤さんも今後、そういった情報を元に、私たちは気づかないお客様からのお問い合わせを気づきにして、社会保険業務と社会保険電子申請をもっと学んでいきましょう。

あと、黒澤さんが社内会議の話をあまり聞いていなかったことは、部長に報告しておきますね(笑)

黒澤

それは、新しいコラムネタということで……。いえ、本当にすみません(汗)

まとめ

  • 対象の企業は、4タイプある。

    「資本金/出資金が1億を超える」企業か、保険業法が定める「相互会社」「投資法人」「特殊目的法人」

  • 紙申請から電子申請義務化への切り替え時期は、すべての企業が2020年4月開始ではない。

    「2020年4月以降の事業年度開始の各会社決算月の翌月」からが義務化対象

  • 義務化対象の手続きは全12手続きある。

    健康保険・厚生年金保険、労働保険、雇用保険の一部の手続き

    図1に掲載されていない「雇用保険 資格喪失(離職票あり)」等、対象手続きがほかにもある

  • 義務化対象企業が対応しなかった場合の罰則やデメリットは、現時点では法的な罰則規定は定められていない。

    だが、想定される事項として「厚生労働省が公表しているブラックリストへの掲載」「照合省略の取り消し」

最後に

現在、特定の法人の事業所に対して、社会保険の電子申請の利用に関する義務化が始まっています。

国が定めたものだから「仕方なく」始めるのではなく、この機会を利用し積極的に電子申請を始めた企業様もいらっしゃいます。
社会保険の電子申請業務から業務周りの効率化を進めるきっかけとなった」
いままで課題だと思わなかった作業の無駄が顕著になり、業務改善につながった」

とユーザー様からお声をいただいております。

みなさまの「このような感じで電子化へ切り替えました」「こんな電子申請の運用をしています」というご意見を聞かせていただけると、とてもうれしいです。

また、このサイトに対する評価や義務化以外のご質問も受け付けていますので、お問い合わせフォームからお気軽にコメントいただければ幸いです!

最後までお付き合いありがとうございました!
引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。