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第27回
従業員が新型コロナウイルスに!
受けられる給付は3種類

公開日:2022年9月15日
更新日:2023年11月9日

ここがポイント!

  • 療養期間・待機期間については流動的にルールが変更となる
  • 従業員が受けられる給付は主に3種類
  • 会社は従業員への十分な説明と適切な対応を

社会保険労務士法人アールワンの西嶋です。

新型コロナウイルス感染者が再び増加し、全国の感染者は過去最高人数を更新しています。
それに伴い、感染された方の勤怠の扱いや、受けられる給付金についての問い合わせが多くなってきています。

すでに、感染された従業員の対応をしている労務担当者様は多くいらっしゃると思いますが、
今一度、整理をかねて本コラムをお役立ていただければと思います。

今回は、会社にとって必要な新型コロナウイルスへの対応についてお伝えします。

※ 2022年9月現在の情報に基づきます。

1. 新型コロナウイルス感染時の療養期間、待機期間について

新型コロナウイルス感染時の療養期間や濃厚接触者の待機期間について、当初のルールと比べて日数・時間が変更されています。

陽性者

症状あり 無症状
療養期間 10日間かつ症状軽快後、72時間
(※ 当初は14日間)
7日間
(※ 当初は10日間)
起算日 発症日の翌日 検体採取の翌日
健康観察 10日間を経過するまで自己で健康状態の確認を行う

濃厚接触者

一般 社会機能維持者
療養期間 7日間
(※ 当初は10日間)
5日間
(※ 当初は7日間)
起算日 感染者と最後に接触した日の翌日

濃厚接触者の定義(陽性者と発症2日前に接触した場合)

① 感染者と同居(車内など狭いところにいた)、または長時間の接触があった
② 1m以内でマスクなど感染防止対策をせず、15分以上一緒にいた
③ 感染者の体液などに直接触れた可能性がある …など
※ 5日目にPCR検査か抗原定量で陰性、抗原定性検査で4日目と5日目ともに陰性であれば待機解除。

なお、療養期間・待機期間についてはルールが流動的に変更となることが予想されますので、都度確認をお願いします。

2. 従業員が感染した際の勤怠や受けられる給付について

新型コロナウイルス感染時の勤怠と受けられる給付について

勤怠 休業手当の支払い義務 受けられる給付
労働者本人陽性 欠勤 or 有給休暇 なし 傷病手当金
濃厚接触者(家族や職場同僚等が陽性) 欠勤 or 有給休暇 なし なし
本人に症状があり、自主的に休暇を取得した場合 欠勤 or 有給休暇 なし 傷病手当金
本人に症状があり、会社が一律に休ませる場合 会社都合の休業 あり 休業手当
感染経路が業務によることが明らかな場合 欠勤 or 有給休暇 なし 労災

勤怠

原則、新型コロナウイルス陽性、または発熱等の症状がある場合の勤怠は「欠勤」となります。
従業員が希望し、会社が認めれば有給休暇の消化が可能です。
大事をとって会社が従業員を休ませる場合は、会社都合の休業に該当します。

受けられる給付

① 傷病手当金

4日以上私傷病で労務に就かず、休んでいる期間給与の支給がない場合に支給されます。
医療費負担:3割負担
申請者:会社 or 従業員
支給額:1日つき標準報酬日額 × 3分の2 × 休んだ日数(4日目からが支給対象)

※ 原則、申請の際は医師の証明(労務ができないことの証明)が必要です。
しかし、新型コロナウイルスの場合は医療機関を受診できないケースもあるため、医師の証明の代わりに「療養状況申立書」を添付することで申請が可能となります。

※ 休んでいる期間をすべて有給休暇で消化する場合、傷病手当金の申請は不可となります。

② 休業支援金

会社都合の休業で従業員を休ませたが、休業手当を支給しなかった場合、従業員に手当金が支給されます。
申請者:会社 or 従業員
給額:休業前1日あたりの平均賃金の80%×休業日数が支給(1日当たりの上限8,265円)

※ 正式に濃厚接触者となり、欠勤となった場合でも、休業に協力したということで休業支援金の申請が可能です。

③ 労災(休業補償)

新型コロナウイルス感染が業務に起因する場合、休業補償の支給対象となります。
医療費負担:なし
申請者:会社 or 従業員
支給額:給付基礎日額(平均賃金)×80%(保険給付60% 特別支給20%)(4日目からが支給対象)

※ 原則、申請の際は医師の証明(労務ができないことの証明)が必要です。
PCR検査や抗原検査からの陽性結果通知や、My HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)により電磁的に発行された証明書等を添付すれば申請が可能です。

労災保険の該当例

  • 感染経路が業務によることが明らかな場合(職場でクラスターが発生していた、陽性者と接触した等)
  • 感染経路が不明の場合でも、感染リスクが高い業務(以下①②)に従事し、それにより感染した可能性が強い場合
    ① 2人以上の感染者が確認された労働環境下での業務
    ② 顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下の業務
  • 医師・看護師や介護の業務に従事される方々については、業務外で感染したことが明らかな場合を除き、原則として対象

申請後、労働基準監督署から、本人と会社に事実確認が行われる場合があります。

労災保険について詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

3. 会社として必要な対応

会社として必要な対応は、主に次の3つです。

① 勤怠の扱いと給付金の説明

すべて有給休暇の消化とするのか、欠勤扱いとして傷病手当金等の申請を行うのかは、労務担当者と従業員で相談の上、勤怠の扱いを決定しましょう。
従業員に説明する際、受給できる手当金の詳細について説明できるとより望ましいです。

② 感染を拡大させないための対応

感染者もしくは濃厚接触者が発生した場合、定められた期間に基づき療養と待機となります。
会社として、感染者が発生した場合の対応や防止策を明確にしておきましょう。

<例>
発熱等感染が疑われる場合、会社を休んでPCR検査を受けてもらい、陰性の場合は出社してもらうか、大事をとってしばらく在宅勤務にするか判断を行う。
陽性者が発生した場合、在宅勤務が可能な方にはしばらく在宅勤務を行ってもらう。

③ 業務体制の確認

感染者、濃厚接触者が発生した場合、業務の滞りが生じないよう体制の確認をしましょう。
業務進捗シート等を用意しておき、感染者・濃厚接触者からヒアリングした内容を記載して、他者でも対応できるようにしましょう。

こんなときどうする?

① 発熱等感染が疑われる従業員が発生した場合

勤怠:欠勤もしくは年次有給休暇(申出があった場合)
会社を休んでPCR検査を受けてもらい、陰性の場合は症状が落ち着くまで療養してもらい、可能であればしばらく在宅勤務を行ってもらう。
(発熱等の症状が出ている場合、十分な労務の提供ができないため、休んでもらう。欠勤扱い)

② 従業員の家族が濃厚接触者となった場合

勤怠:出勤(在宅勤務)、欠勤もしくは年次有給休暇(申出があった場合)
家族のPCR検査等の結果によって判断する。
家族が陽性:従業員は濃厚接触者となるため、自宅待機。(在宅勤務が可能で症状がなければ在宅勤務で対応)
家族が陰性:通常どおり勤務してもらう。

③ 会社で感染者が発生した場合の対応

勤怠:出勤(在宅勤務)もしくは休業
濃厚接触者がいるか確認を行い、該当者がいた場合はPCR検査等を受けてもらう。
すぐの検査が難しい場合は、在宅勤務で対応し、後日検査を受けてもらう。
症状がなく、会社が休むよう指示した場合は休業扱いとなり、休業手当の支給が必要となる。

④ 子供の保育園、小学校などが臨時休業となったため、会社を休まなければならなくなった場合

勤怠:特別休暇(賃金の支給あり)
年次有給休暇を消化してもらうか、特別休暇を与えて休んでももらう。
特別休暇を与えて休んだ場合は「小学校休業等対応助成金」の申請対象となるので、申請を行う。
参考:厚生労働省「小学校休業等対応助成金について」

※勤怠の扱いについては状況に応じて決まりますので、慎重に確認してください。

 

4. まとめ

従業員の方が一番気にするのは、感染して仕事を休む(約10日間)ことへの不安だと思います。

会社として感染者が発生した場合の対応も大切ですが、安心して療養してもらえる体制の整備も重要です。

しばらく、新型コロナウイルスの感染拡大が続くと思いますが、会社と従業員で協力して対応していきましょう。

本コラムの著者

社会保険労務士法人アールワン

社会保険労務士法人アールワン

東京都千代田区麹町1-3 ニッセイ半蔵門ビル3F
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