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第47回
育児介護休業法、次世代育成支援法が改正
施行日に向け、社内制度や就業規則の改定の準備を!
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2024年5月24日、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」が、参議院本会議において可決・成立しました。
改正法は、2023年12月22日に閣議決定された「こども未来戦略」に基づき、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにすることを目的としています。
企業には、残業免除の期間の延長や子の看護休暇の範囲拡大等の法令上の制度として対応すべき事項と、テレワークや短時間勤務等の複数の制度から選択して措置として義務付けられる事項があります。
施行日に応じ、いつまでに、どんな準備が必要か確認しておきましょう。
目次
1. 労働政策審議会で検討された制度の見直しの方向性
2022年度から第4次男女雇用機会均等対策基本方針の改定について審議される中、「こども未来戦略方針」が発表され、両立支援の制度面を拡充することになっていった経緯があります。
論点としては、大きく4つありました。
① 男性育休の取得促進
制度面と給付の両面での対応を抜本的に強化する
② 育児期を通じた柔軟な働き方の推進
多様な働き方を組み合わせることで、育児期の男女が共に、希望に応じてキャリア形成との両立を可能とする仕組みを構築する
③ 次世代育成支援対策推進法の延長
④ 介護離職防止のための両立支援制度の周知の強化
この4つの論点をもとに、育児介護休業法と次世代育成支援法で制度面の強化を図り、給付については、2025年4月1日から雇用保険法での出生後休業給付金と育児時短就業給付金での給付面での強化を図る改正法が成立しました。
施行日順に、改正された概要を整理すると次のようになります。(図1参照)
図1
出典:厚生労働省「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会 報告書 概要」
2. 2025年4月1日から施行される育児・介護休業法、次世代育成支援法の内容
【育児関係】
① 所定外労働の制限(残業の免除)の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子(現行は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大する。
② 子の看護休暇を、子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(現行は小学校就学前)まで拡大するとともに、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する。
③ 3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。
④ 育児休業の取得状況の公表義務の対象を、常時雇用する労働者数が300人超え(現行1,000人超え)の事業主に拡大する。
制度改正となる①・②・④に対応するためには、就業規則等の改定が必要となります。
③については、業種や職種によって対応ができないこともあるため、努力義務となっています。
【介護関係】
① 労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付ける。
② 労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付ける。
③ 介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止する。
④ 家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークを追加する。
制度改正となる③については、就業規則等の改定や労使協定の見直しが必要となります。
①・②の義務については、従業員への周知や意向確認の方法を検討しましょう。
④については、業種や職種によって対応ができないこともあるため、努力義務となっています。
3. 公布の日から起算して1年6月以内において政令で定める日から施行される育児・介護休業法、次世代育成支援法の内容
【育児関係】
① 3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ(※)、労働者が選択して利用できるようにすることを義務付ける。また、当該措置の個別の周知・意向確認を義務付ける。
② 妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付ける。
①については、会社が複数の制度のうち2つを選択し、実施することになります。自社内でも、部署や職種によって選択できる措置が限られてくることもあるでしょう。勤務実態や、従業員のニーズを把握し、施行日までに実施できるよう準備を進めておく必要があります。
②の義務については、従業員への周知や意向確認の方法を検討しましょう。
まとめ
以上、2025年4月以降に施行される育児介護休業法、次世代育成支援法の改正内容をご紹介しました。
改正法で求められる育児・介護と仕事の両立を企業として支援するためには、多様な働き方を可能にする取り組みが必要となります。
法改正への対応というだけではなく、人材確保や、従業員が長期的な視点でキャリアを考えられるようになるという、
プラス面があることに目を向けていきたいものです。(図2参照 )
図2
施行日が未定の内容もありますが、社内での検討に時間のかかる措置内容も含まれています。
改正内容を確認し、早めに準備を進めていきましょう。