プロが教える! 電子申請導入のポイント
第42回
賞与支払届の対象は?
賞与以外で支給される一時金に注意
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- #厚生年金
ここがポイント!
- 通常の賞与以外でも賞与支払届の対象となる一時金がある
- 賞与支払届の対象となる一時金の支給が自社であるか確認が必要
- 社会保険適用拡大の時期には年金事務所の調査が行われる
社会保険労務士法人アールワンの西嶋です。
間もなく12月を迎え、多くの会社で賞与の支給があるかと思います。
賞与の支給があった場合、健康保険組合、年金事務所に賞与支払届の申請を行うことになりますが、実は賞与として支払っていなくても賞与支払届の対象となる一時金が存在します。
今回は賞与支払届についてお伝えします。
目次
1. 賞与支払届とは?
賞与を支給すると社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)が発生します。
その保険料を算出・納付するため、会社が賞与を支給してから5日以内に提出しなければならない手続きとなります。
提出がなかった場合、年金事務所から督促状が届きますのでご注意ください。
また、厚生年金の保険料が発生するため、従業員の方が将来受け取る年金額にも影響しますので提出を忘れないようにしないといけません。
賞与を年4回以上決まって支給する会社は賞与支払届の提出は行わず、定時決定(算定基礎届)、随時改定(月額変更届)を提出する際の報酬に含めて届出を行うことになります。
※ 賞与支払届の概要については 第6回のコラム を参照ください。
2. 賞与額の上限、休業中に支給される賞与について
賞与には「標準賞与額」(年3回以下支払われる賞与について、1,000円未満を切り捨てた額)があり、毎月の給与と同率の保険料が発生します。この標準賞与額には、健康保険、厚生年金でそれぞれ上限額があります。
健康保険:累計573万円まで(保険者単位で4月1日から翌年3月31日までの累計)
厚生年金:支給1ヶ月対して150万円まで(同一月内につき2回以上支給されたときは合算)
例:「6月10日 400万円の賞与支払い/12月10日 200万円の賞与支給」 合計600万円の支給があった場合
12月支給の標準賞与額は173万円となり、573万円を超えた金額27万円には健康保険料が発生しません。
※注意※
上限額を超えた金額に対しては保険料は発生しませんが、届出は必要です。
なぜなら、賞与額の累計は保険者(健康保険組合など)ごとに行います。
転職などがあり、別の会社に移っても加入した保険者が同じであれば賞与額が累計されます。
同じ保険者に加入している期間(4月から3月)のみを累計します。
また、私傷病休職、育児休業、介護休業などで休業する際には、賞与が支給された場合でも賞与支払届の提出が必要です。
育児休業者の場合、健康保険 厚生年金保険料が免除となるか確認の上、賞与計算を行いましょう。
※ 現状、保険料の免除対象となるのは産前産後休業と育児休業のみです。
3. 通常の賞与以外で賞与支払届の対象となる一時金とは?
例として以下を挙げておきましょう。
① 資格取得報奨金
② リファラル採用(社員紹介制度)によって生じる報奨金
③ 通常の給与とは別に支給される特別勤務手当
例:年末年始やお盆の時期に勤務した人に1日あたり、5,000円通常の給与とは別で支給するなど
④ 実費以上支給される転勤支度金など(実費で支給の場合は該当せず)
⑤ 社内表彰制度における報奨金(金券なども含む)
⑥ 永年勤続表彰金(おおむね5年以上支給間隔が空かないもの)
⑦ 臨時で支給されるインセンティブ手当
通常の賞与として支給されていなくても、上記の一時金が支給されている場合、賞与支払届の対象となります。
4. 通常の賞与以外で賞与支払届の対象とならない一時金とは?
例として以下を挙げておきましょう。
① 事業主が恩恵的に支給する一時金
例:結婚祝金、傷病見舞金、慶弔見舞金など
② 大入袋(満員御礼などで従業員、来客者など全員に支給されるもの)
③ 実費で支給される転勤支度金など
④ 永年勤続表彰金
会社ごとに様々な形態で支給されるため、賞与支払届の対象となるかについては、内容に基づいて判断されます。
下記の内容に該当している場合は恩恵的に支給されるものとして、賞与支払届の対象としないとされています。
<判断要件>
- 企業の福利厚生施策、長期勤続の奨励策として実施している。支給に併せてリフレッシュ休暇等が付与されていて福利厚生としての側面が強いもの。
- 勤続年数のみを要件として一律で支給されるもの。
- 社会通念上お祝い金の範囲を超えず、表彰の間隔が概ね5年以上のもの。
5. 年金事務所の定期調査について
年金事務所では、定期的に被保険者の資格や報酬等の調査を実施しています。
従来は加入義務のある従業員が加入しているかや算定手続きや月額変更届が正しく届出されているかの確認でしたが、最近は一時金の支給に対しての指摘や対応が多くなってきていると感じています。
年金事務所の調査は、社会保険の適用拡大が適用される時期に該当している会社に対して必ず実施されています。
来年の2024年10月から被保険者51名以上で週20時間以上かつ88,000円以上の報酬が生じる方は社会保険への加入が義務となります。
年金事務所の調査も来年の10月前後で増加することが見込まれます。
労務担当者の方は、通常の賞与以外で支給されている一時金の有無などについて確認しておくのがよいでしょう。
まとめ
通常の賞与以外でも賞与支払届の提出が必要ということを認識されている労務担当者の方は多くはないと思います。
年金事務所の調査で指摘を受ける前にあらかじめ確認しておき、賞与支払届の提出を行っておきましょう。
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