ここがポイント!
- 養育期間特例は養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響せず年金額を受け取れるみなし制度
- 時短勤務となり、標準報酬月額が下がらなくても届出を行っておくことを推奨
- 育児休業から復帰した男性も特例対象
- 電子送達で養育期間標準報酬月額特例の明細が受取可能
社会保険労務士法人アールワンの西嶋です。
育児休業が終了し、従業員が職場復帰すると育児休業の終了届などを申請することになりますが、それ以外にも大切な手続きがあります。
今回は育児休業から復帰した後に提出する「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書」についてお伝えします。
目次
1. 厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出とは?
子どもが3歳に達するまでの養育期間中に標準報酬月額が低下した場合、養育期間中の報酬の低下が将来の年金額に影響しないよう、その子どもを養育する前の標準報酬月額に基づいて年金額を受け取ることができるみなし制度(特例措置)です。
特例措置の適用について
- 3歳未満のお子様を養育する被保険者であること
- 被保険者の申し出に基づき、より高い従前の標準報酬月額をその期間の標準報酬月額とみなして年金額を計算されます。
子の養育を開始した日の属する月の前月の標準報酬月額より低下した場合、この養育を開始した日の属する月の前月の標準報酬月額で年金の計算が行われます。 - 申出日よりも前の期間については、申出日の前月までの2年間について特例措置が認められます。
- 養育開始月の前月に厚生年金保険の被保険者でない場合には、その月前1年以内の直近の被保険者であった月の標準報酬月額が従前の報酬月額とみなされます。その月前1年以内に被保険者期間がない場合は、みなし措置は受けられません。
わかりやすいように以下、例を挙げておきます。
例:養育開始日(10月20日)の前月である9月から1年以内に被保険者期間がない場合、特例の対象外となります。
お子様を出産される段階で1年以上、社会保険への加入がなかった場合などが該当します。
特例措置の対象外について
子が3歳に達する日までが特例の対象期間ですが、以下の場合、特例措置の対象外となります。
- 厚生年金の被保険者でなくなった場合
- 他の子についてこの特例措置を受けることになった場合
- 子が死亡した場合
- 養育しなくなった場合 など
標準報酬月額が低下するケースについて
- 育児休業から復帰後、時短勤務となり、育児休業終了時の月額変更届に該当した場合
- 年1回の算定基礎届で標準報酬月額が低下した場合(時間外労働の減少など)
- 給与改定により、給与が下がり、通常の月額変更届に該当した場合
2. 厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出の申請方法
届出様式:
「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」
提出先:
管轄の年金事務所(事務センター)
添付書類:
① 戸籍謄(抄)本または戸籍記載事項証明書
※ 申出者と子の身分関係および子の生年月日を証明できるもの。
② 住民票(原本)
※ 育児休業終了の場合、育児休業終了年月日の翌日の属する月の初日以後に発行された住民票が必要。
※ 提出日からさかのぼって90日以内に発行されたもの。
※ 申出書に申出者と養育する子の個人番号がに記載されている場合は、省略が可能。
③ 養育している子が特別養子縁組の監護期間にある子の場合は、①に代えて家庭裁判所が交付する事件係属証明書および住民票を添付してください。
④ 養育している子が養子縁組里親に委託されている要保護児童の場合は、①および②に代えて児童相談所が交付する措置決定通知書を添付してください。
紙で直接申請する場合、①から④の添付書類は全て原本を添付する必要があります。
ですが、電子申請で申請を行う場合、データ添付で対応可能です。
3. 厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出のメリット・デメリット
デメリットはありません。
メリットは、以下のとおりです。
育児休業から復帰後、養育期間標準報酬月額特例申出を行うことで、時短勤務などによって標準報酬月額が下がっても、従前の標準報酬月額で厚生年金の支給額が計算されますので将来受給する年金額が減少しません。
養育期間標準報酬月額特例申出がされていない場合、下がった標準報酬月額で年金額が計算されてしまいますので申出については行っていただくことを推奨します。
4. こんなとき、どうする?
Q1:男性従業員が育児休業から復帰しました。男性従業員でも特例措置の申出は可能でしょうか?
⇒ 申出可能です。必要書類を準備してもらい、提出を行ってください。
Q2:育児休業から復帰し、3歳未満の子を養育する従業員が、グループ会社に転籍することになりました。
復帰後に養育期間標準報酬月額特例申出書を提出していますが、転籍後はどのような扱いになるのでしょうか。
⇒ 転籍となった場合、厚生年金の資格を喪失する為、特例措置の適用がなくなります。
新たな就業先での厚生年金の資格取得完了後、改めて養育期間標準報酬月額特例申出書の提出を行う必要があります。
Q3:養育期間標準報酬月額特例申出書はどのタイミングで申請するのが良いでしょうか?
⇒ 育児休業から復帰後が申請のタイミングとなります。
申出日の前月までの2年間について特例措置が認められます。
急ぎで行う手続きではありませんが、なるべく早く提出を行っていただくことを推奨します。
Q4:3歳未満の子を養育している従業員が第二子の産休に入ることになりました。この場合、特例措置はどうなるのでしょうか?
⇒ 第二子の産休に入った時点で特例措置の適用対象外となりますので、別途、終了届を提出する必要があります。
Q5:育児休業から復帰後、時短勤務もなく、給与報酬も変更ない為、申出書の提出はしなくてもよいか?
⇒ 申出書の提出はしなくても問題ありません(提出するしないは被保険者の判断になるため)。
お子様が3歳までの間に標準報酬月額が低下する可能性もありますので、なるべく提出される事を推奨します。
5. 電子申請の活用がおすすめです
紙の申請の場合、添付書類の全てを原本で用意する必要があり、資料の回収など手間となります。
電子申請の場合、従業員から添付書類をデータを送付してもらい原本の回収は不要です。
紙申請と電子申請様式の違い
紙の申出書には「申出者欄」がありますが、電子申請では「申出者欄」がありません。
紙で申請を行う場合、「申出者欄」に被保険者の署名が必要となりますが、電子申請の場合、届書の備考欄に「届出意思確認済み」と記載することで委任状を省略して申請することが可能です。(記載がない場合、委任状が必要となります)
電子申請への移行を検討されている方は以下の記事もご参照ください。
6. 従業員から電子データを簡単に回収し、申請書に添付する方法
Charlotteというサービスを利用すると、「厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届」を作成時、従業員へ提出してもらう書類一覧が自動で表示されるので「提出依頼」ボタンを押すだけで従業員へ簡単に依頼できます。
メール文を考える手間や提出物の依頼漏れがなくなるので申請業務の負担がかなり軽減できます。
さらに、従業員から回収した書類は、一度内容を労務担当者が確認して問題がなければ自動で申請書に添付されるため、従業員から提出されたデータをダウンロードし、保管し、申請データにアップロードという手間がなくなります。
添付漏れのリスクもなくなるので申請業務の負担がかなり減ります。
申請に必要な従業員とのやり取りは、申請業務以外のタスクや管理が増えるのでかなり大変なところかと思います。
従業員とのやりとりを効率化したい方はこちらもご覧ください。
7. 電子送達への対応サービスを開始しています
電子送達に関して、令和6年1月4日から養育期間標準報酬月額特例申出受理通知書(明細)・終了確認通知書(明細)を受け取れるようになったと株式会社ユー・エス・イーより以下コメントをいただきました。
電子送達(オンライン事業所年金情報サービス)を利用することで、行政機関から発行される社会保険料額情報等の通知文書決定通知書を、Charlotteで受け取ることが可能となっています。
申込にはGビズIDの、gBizIDプライム、またはgBizIDメンバーのアカウントが必要となります。
詳しくは下記リンクを参照ください。
https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/online_jigyousho/online_jigyousho.html
日本年金機構「オンライン事業所年金情報サービス(事業主の方)」令和6年1月4日
まとめ
育児休業関連の手続きは、給付金や保険料免除など手続きの件数が多い為、管理するのが大変です。
どのタイミングで何の申請が必要なのか予め整理し、電子申請を積極的に活用していきましょう。
「Charlotte(シャーロット)」とは?
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「社会保険システム連絡協議会」とは、総務省行政管理局及び厚生労働省等と、社会保険・労働保険関係手続きの電子申請が可能なソフトウェアを開発・販売・サポートする社会保険システム業界との窓口として、相互の事務連絡、情報交換及び協議等の円滑化を図り、社会保険行政の円滑な執行に資することを目的とした団体です。
「Charlotte」の開発会社である株式会社ユー・エス・イーは税務システム連絡協議会の加盟会社です。
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※「Charlotte」は株式会社ユー・エス・イーの登録商標です。(登録商標第5980282号)
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