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データドリブン人事とは?
データドリブン人事の背景やメリット、実践の流れ、企業の実践事例などをご紹介

ビジネスのあらゆる分野でデータが活用されている中、面接や評価など業務の特性上、属人的な判断の要素が強かった人事部門でもデータを活用した業務効率化が行われるようになってきました。データを利活用することで、より効果的な人事戦略を立てることが可能となるため、データドリブン人事を実践する企業も増えています。
今回は、データに基づいた人事業務を遂行する「データドリブン人事」の背景やメリット、実践の流れ、企業の実践事例などについてご紹介していきます。

1. データドリブン人事とは

データドリブンとは「データを基に行動する」という意味です。企業活動においては、収集したビッグデータ等を分析し、その結果に基づいて意思決定を行うことを指します。
「データドリブン人事」とは、人事部が収集、分析したデータを基に人事戦略を策定・遂行することです。

近年は、ビジネスの様々な場面でデータが活用されるようになっています。人事部門でもデータを活用して、より効率的な業務が可能となる環境が整ってきており、ピープルアナリティクスなどの「データドリブン人事」を実践する企業が増えています。

2. データドリブン人事が求められる背景

以前のように事業環境や労働環境がほとんど変化しない状況であれば、人事の経験や勘に頼った判断で事足りたかもしれませんが、VUCAといわれる時代においては、人事部の組織・社員が持つナレッジ・経験・スキルなどに加えて、データの利活用を積極的に行うことで、より高度な人事戦略を遂行させる必要があります。

いま、データドリブン人事が注目されている主な背景は以下のとおりです。

(1)より公平で、精度の高い意思決定が要求されている

人事における意思決定は、従業員の採用、評価、昇進、異動など多岐にわたります。

特に採用や評価などにおいては、評価者の意思決定プロセスの不透明さや、価値観、経験則による意思決定から、公平性を欠いた判断に至るケースも少なくありません。そのためデータ分析による定量的な判断基準を取り入れ、判断の精度を上げる必要があります。

(2)投資家などの各ステークホルダーから人的資本情報の開示が求められている

人的資本経営(Human Capital Management, HCM)という考え方が広がり、企業の財務情報に加え、「非財務情報(経営戦略における人材利活用の状況など)」についても投資判断の重要な要素となっています。そのため、企業内の人的資本情報を定量的にデータ化・可視化することが必要になります。

3. データドリブン人事を実践するメリット

データドリブン人事を実践するメリットについて、人材(従業員)および、人事部のパフォーマンス向上の2つの視点からご紹介します。

(1)人材のパフォーマンス向上

従業員がパフォーマンスを発揮するためには、採用から配置、育成、健康管理、離職防止に至るまで、効果的にマネジメントされている必要があります。

① 自社が求める人材像と採用基準の明確化

優秀な人材の確保には「候補者が自社で活躍できるのか」、冷静な見極めが必要です。
求める人材像の言語化に加え、既存社員のパフォーマンス分析等のデータを活用した客観的な採用基準を設定し、自社の求める人材の解像度を上げることが、優秀な人材確保の成否につながります。

② 適材適所の人材配置

従業員の状況(過去の評価、スキル、アセスメント・エンゲージメント結果など)をデータ分析・可視化し、現場の管理職と協力して人材配置をすることが必要です。配置後のパフォーマンスや生産性向上の結果をデータで明らかにし、改善策を打つことによって、従業員の更なるパフォーマンスやモチベーションのアップ、組織全体の生産性向上につながるサイクルができます。

③ 従業員のスキルアップ

多様化する従業員のキャリア志向に加え、データによる従業員の強み・弱みのスキル可視化や、エンゲージメント情報、アセスメント結果などから、従業員に対してパーソナラズ化された教育プログラムを施すことによって、個々のスキルアップと、組織全体のパフォーマンス向上につながります。

④ 従業員の残業削減、健康管理、早期離職防止

残業時間などをリアルタイムにデータ化・可視化することができれば、業務負荷の状況や原因を把握できるとともに、事前の残業削減策やメンタルケアを講ずるなど、効果的な対策を打つことができます。また社員エンゲージメント結果・人事評価と、離職率の相関分析など、データ分析結果から離職傾向を明らかにしたうえで効果的な人事施策を施すことも可能となります。

(2)人事部のパフォーマンス向上

① 意思決定の精度向上

実効的な人事制度の設計・運用のためには、人事部と現場の管理職や社員が、制度に対する共通認識・理解を持ちつつ、より客観的、かつ具体的な判断基準の存在が必要となります。
例えば人事評価では、全社・部門別・部署別などに従業員のスキル・評価を可視化・数値化した定量的な分析データを評価プロセスに取り入れることよって、組織全体の意思決定の精度が向上するとともに、人事評価の公平性を担保することにつながります。

② 属人化防止・業務効率化

人事情報の秘匿性の高さや業務の特性から、他部署と比較して少人数での業務運営、ならびに属人化などが課題となります。
例えば採用においては、応募者の履歴書の読み込みから始まり、志望動機・性格診断・能力検査なども含めて複合的に確認のうえ合否を判断するため、膨大な時間と労力を費やすとともに、業務の属人化が生じます。データ活用や、明確な判断基準の設定によって、業務効率化と判断の精度向上につながります。

4. データドリブン人事を実践する流れ

データドリブン人事を実行の流れは以下のとおりです。

(1)目的に適うデータの収集

データ収集、一元化が目的となり、データ利活用の目的を明確にすることが後回しになっている企業は少なくありません。
効果的なデータドリブン人事の実践にあたっては、何を目的として、どのようなデータを集めれば(作れば)よいのか、を事前に明確にしておくことがデータ収集の第一歩です。

(2)データ分析体制の構築

データドリブン人事の実践にあたっては、ヒトに関する情報・データを、いつでも、誰もが、的確に取り出し、活用できる環境を整備しておくことが前提となります。
秘匿性の高い人事情報を取り扱うため、人事部独自でデータを分析し、戦略や施策に落とし込めるデータサイエンティストやアナリストといったデジタル人材の採用・育成が必要です。

(3)データアセスメントの実行

目的が決まったとしても、どのデータを使用すればよいのかわからないという人事担当者も少なくありません。例えばSaaSサービスなども活用し、社内に、今あるデータをアセスメントすることで、どのようなデータが不足しているのかを把握し、効率的なデータ補完や、データ整備のアクションにつなげることができます。

(4)統合的な人事データベースの構築

多くの企業が、各種人事システムを導入し、人材データベースの整備を進めていますが、社員の保有資格、経年評価、スキル可視化などのデータの収集に留まっている、といった声も聞かれます。
人材戦略の遂行においては、企業内に散在する人事データを包括的に管理・把握を行う必要があり、いつでも、誰でも、目的に適ったデータを利活用できる「人事データベース」の構築が必要となります。

(5)データを活用した従業員の現状可視化

データベースに蓄積された各データから現状を把握します。従業員のスキルやパフォーマンス、業績評価、採用時の面接・適性検査の結果、従業員満足度、ストレスチェックなどのデータを収集・統合し、従業員の現状を可視化することで、課題を設定することができます。

(6)データを比較・分析した人事施策の立案・実行

収集したデータをもとに、具体的な人事施策を実行します。例えば、採用施策の一つとして「過去のハイパフォーマーと似た経歴や適性検査の結果を出した候補者をAIが選別する」を行うことなど、効率的かつ客観的に、自社にマッチする優秀な人材を採用することにもつながります。

(7)人事施策の効果検証・改善

施策の実施後は効果検証が必要です。データを活用・分析して、継続的に改善し続けることによって、人事、経営の意思決定の精度を向上していくことにつながります。

5. データドリブン人事の主な課題と解決策

データドリブン人事の活用はメリットがある一方、課題も存在します。
主な課題と解決策をご紹介します。

(1)データ利活用における組織的な障壁の存在

規模が大きい、あるいは様々な雇用形態の従業員が働いている企業などでは、データを一元管理することは簡単ではありませんが、データドリブン人事の実践は、全社的に行うべき取り組みであり、経営層や各部署のキーマンから、十分な理解を得ることが重要です。そのためにも、経営層に働きかけ、理解を得たうえで、全社的にデータ利活用を推進していく体制構築が必要です。人事部(CHRO、部長など)が、経営層や各部署のマネージャーに、データ活用がもたらすメリットを丁寧に説明していくことが重要です。

(2)人事部門のデジタル人材不足

秘匿性の高い情報を取り扱う人事部門では、他部門と比較して、専門のデジタル人材採用や育成が難しいという声が聞かれます。
最近は人事担当者でも簡単に操作できるシステムサービスも充実してきており、課題を解決するためSaaSサービスなどを使って安価に導入することも検討の一つです。
人事でデジタル人材の採用・育成が難しい場合でも、Saasサービスを活用しながら、人事の分析スキルを上げていくことが可能となる環境は整ってきています。

(3)ツールやシステムの導入までハードルの存在

データドリブン人事の実践には、専門のツールやシステムの利活用は不可欠です。しかし、コストや業務プロセスの変更など様々な改革を伴うため、導入のハードルが高くなっているようです。
導入にあたっては、データドリブン人事の実践において必要な業務内容を把握のうえ、最適なツールを選定し、既存の社内システムとの連携などによって最適化を図ることや、費用対効果を算出し、導入の必要性を訴えていくことが求められます。

6. データドリブン人事の主な実践事例

データドリブン人事を実践している企業事例についてご紹介します。

(1)株式会社サイバーエージェント

サイバーエージェントは、AIと動画データを活用したデータドリブン人事に取り組んでいます。従来の採用では新卒採用のグループディスカッションにおいて選考官のアサインが難航し、希望者全員に選考機会を提供することが困難でした。また、評価基準の精緻化も課題とされていました。
この課題を解決するためにAIと動画データを活用するシステムを導入。選考プロセスを録画し、音声データと発話解析を活用することで、選考官の業務負担を軽減し、より公平で精度の高い評価を可能にしました。これにより、1次選考枠の拡大を実現しながらも、選考時の見極めが適切に行われるようになり、2次選考以降の合格率を向上させる効果も得られました。

参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000080.000040516.html
参考:https://www.ailead.app/case/cyberagent

(2)株式会社日立製作所

日立製作所は、早くからデータドリブン人事に取り組んでいる企業です。2018年から、グローバルで活用可能な「人財マネジメント統合プラットフォーム」を構築し、約5万人の社員を対象にしたデータドリブン人事を行っています。人財情報やプロセスを一元管理し、従業員のスキル・キャリア志向などを可視化することで、適切な人材配置の実現や、育成計画の迅速な立案が可能になりました。
また、従業員間で情報共有を行うことでグローバル企業ならではの「国や地域での分断」という課題も解決しました。

参考:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2022/10/1012pre.pdf
参考:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2017/11/1128.html

(3)PayPay株式会社

PayPayは、リモートワークの導入によって、対面コミュニケーションの機会が減少し、社員のモチベーションや健康状態の把握が難しくなりました。そこで、社員のコンディションを可視化し、健康維持・向上を支援するためにデータドリブン人事を実践しています。
具体的には、月2回のオンライン「パルスサーベイ」を実施し、直感的に短時間で社員の置かれている状況を回答できる仕組みを構築。これにより、従業員の体調変化をリアルタイムで把握し、早期対応できるようになりました。また、人事データと連携したシナリオ分析を活用し、生産性向上やエンゲージメント強化につなげることにも成功しています。

参考:https://insideout.paypay.ne.jp/2021/08/24/close-up_vol1-jp/

7. データドリブン人事の実践を!

労働人口の減少による人材獲得競争の激化や社員の生産性向上など、人事の課題が経営課題と直結するようになった昨今、データを活用した業務効率化の重要性はますます高まっています。
データドリブン人事は、人材配置の最適化や従業員エンゲージメントの向上、採用業務の効率化などに寄与するため、メリットは大きいといえます。

一方で、業務内容の決定やデータの収集・分析など様々なプロセスを経る必要があるため、データドリブン人事の実践にあたっては目的の設定、データの利活用方法などについて十分な検討を行ってください。

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