ここがポイント!
- 様々なケースが考えられる育児休業給付金制度だからこそ、事前確認が重要
- Charlotteなら、支給決定通知など、郵送しなくても従業員へ楽々共有
- 育児休業給付金制度は従業員だけではなく、企業にもメリットが
社会保険労務士法人アールワンの西嶋です。
前回(第9回)のコラムで妊娠・出産・育児に関する手続き全体像についてお伝えしました。
今回は、育児に関する会社が行う手続きのひとつ、育児休業給付金(雇用保険)についてお伝えします。
かなり奥が深い手続きの内のひとつであり、手続きが開始して30年ほどですが、7度も法改正があり、給付を受ける側としては非常に融通の利く制度に進化しました。
ただし、企業が行う手続きは複雑化し、申請が難しくなったのが現状です。
さらに、出産した従業員だけではなく、配偶者の出産を機に男性が「育児休業」や「パパ・ママ育休プラス」を取得するケースも多くなってきています。
「パパ・ママ育休プラス」制度ですが、国から助成支援を受けることもできるため、企業としても積極的に活用していきたいところですが、複雑な取得形態や休業期間中の取り扱いについて悩まれている人事担当者も多いはずです。
このような「手続きの複雑化」や「手続きの多さ」という課題を解決するために、電子申請はひとつの有効な手段だと考えます。
目次
- 1. 育児休業給付金について
- 2. 育児休業給付金手続きに関する電子申請の対応と注意事項
- 3. こんな時どうする? 育児休業給付金申請
- (1)2か月に1回の給付金受給では生活することが難しいと従業員から申し出があった場合
- (2)休業中に従業員が臨時的に業務を行った場合の給付金
- (3)配偶者の出産を期に男性従業員が育児休業と給付金を取得する場合の手続き
- (4)パパ・ママ育休プラス制度
- (5)お子様が保育園に入園できなかった場合の育児休業と給付金の延長手続き
- (6)新卒入社1年未満の従業員が受けられる育児休業と給付金について
- (7)出産前に時短勤務をした場合、受給できる給付金が少なくなる
- (8)途中で紙申請から電子申請に切り替える場合の必要な手続きや書類
- (9)出生時両立支援助成金(出生時両立支援コース 子育てパパ支援助成金)という企業への支援制度
- まとめ
1. 育児休業給付金について
該当従業員が「育児」の際に受けられる給付金についておさらいをしていきましょう。
<給付支援制度>
育児休業給付金の申請は、2カ月に1回が基本となりますが、1ヶ月に1回の申請も可能です。
1ヶ月に1回の申請の場合、申請のタイミングが2か月に1回の時と異なりますので注意が必要です。
※ 1ヶ月に1回の申請の詳細は、本コラム内「3. こんな時どうする? 育児休業給付金申請」を参照ください。
<受給要件>
- 雇用保険の被保険者である
- 育児休業開始日前2年間に賃金支払い基礎日数が11日以上ある完全月が12ヶ月以上ある
受給要件について詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。
<受給開始期間>
母と父では受給開始時期の差が発生します。図1をご覧ください。
※ 男性従業員(父)の育児休業と給付金に関しての詳細は、本コラム内「3. こんな時どうする? 育児休業給付金申請」を参照ください。
<受給終了期間>
基本はお子様が1歳に達する日の前日までの期間ですが、延長により、最大でお子様が2歳に達する日の前日まで受給が可能です。
パパ・ママ育休プラス制度に該当する場合、父は1歳2ヶ月に達する前日まで受給が可能です。
※ パパ・ママ育休プラス制度の詳細は、本コラム内「3. こんな時どうする? 育児休業給付金申請」を参照ください。
<給付額>
休業開始から6ヶ月間(給付日額×日数×給付率67%)
休業開始から6ヶ月以後(給付日額×日数×給付率50%)
<手続き申請>
必要な手続きは2点です。
- 雇用保険被保険者 休業開始時賃金月額証明書
※ 受給資格の確認と同時に給付日額(直近6ヶ月の賃金にて)が決まります。 - 育児休業給付金支給申請書
※ 第9回「1.妊娠・出産・育児に関する手続きの全体像」図1の一部抜粋
<添付書類>
- 出勤簿
- 賃金台帳
- 母子手帳の写し(市区町村の出生済み証明あるページ)
- 通帳の写し(給付金の入金先確認のため)
※ 照合省略の認可を受ければ、出勤簿・賃金台帳の省略が可能です。
2. 育児休業給付金手続きに関する電子申請の対応と注意事項
育児休業給付金は電子申請義務化対象手続きです。
※ 詳細は、第8回「3. 注意点」の図1を参照ください。
※ 社会保険電子申請義務化についてもっと知りたい方は、「いまさら聞いた 社会保険電子申請利用の義務化」をご覧ください。
Charlotte(シャーロット)の企画部女性2名がわかりやすく説明しています。
育児休業給付金の申請は2か月に1回定期的行う必要があるため対象人数が多くなればなるほど、申請管理等が難しくなります。
電子申請の場合
- スマホで撮った母子手帳や通帳の写しでも添付・申請が可能です。
- 照合省略の認可を受ければ、出勤簿・賃金台帳の省略が可能です。
- 会社の「印鑑」と「印鑑証明書」の代わりになるものとして電子証明書を利用することになります。
◆e-Govの場合◆
①対象の従業員によって異なる定期的に訪れる申請を来る時期に合わせて申請書作成し、提出する必要があります。
②対象の従業員によって異なる定期的に訪れる申請が漏れないようにエクセル等で申請管理し、次回申請を把握する必要があります。
③公文書が行政から届いたら、該当従業員宛に郵送する必要があります。そのためには封入作業や住所の管理が発生します。
ほとんど紙申請の時の運用と変わりません。
◆Charlotte(シャーロット)の場合◆
①対象の従業員によって異なる定期的に訪れる申請を来る時期に合わせて申請書作成し、提出する必要はありません。
予約申請機能を利用すれば、事前に申請書類を作成し、設定した日時にハローワークへ申請することができます。(Charlotte画面1)
“長期休暇中に出社しないといけない……”等がなくなり、時間に縛られない運用が可能です。
②対象の従業員によって異なる定期的に訪れる申請が漏れないようにエクセル等で申請管理し、次回申請を把握する必要がありません。
申請進捗管理機能を利用すれば、該当従業員申請時期等を一覧で管理ができ、次回申請のタイミング管理や給付金延長(1歳以降)のタイミングをお知らせしてくれます。(Charlotte画面2)
※1歳以降の延長の詳細は本コラム内「3.こんな時どうする? 育児休業給付金申請」を参照ください。
+αポイント1
1歳以降の延長のアラートは申請タイミングだけではなく、新規で必要な添付書類もお知らせしてくれるので添付漏れの心配がありません。(Charlotte画面3、4)
申請直前に慌てるなどがなくなり、余裕をもって従業員から書類を回収できるので申請がスムーズにできます。
③公文書が行政から届いたら、該当社員宛に郵送する必要はありません。封入作業や住所の管理も不要です。
Charlotte POSTを利用すれば、支給決定通知など、郵送しなくても従業員へ楽に共有ができます。
受給対象者が多くなると時間的な手間や郵送コストがかかる等、規模の大きい会社にとっては絶大な業務効率化につながると思います。
※ 詳細は、Charlotte POSTのページを参照ください。
特に予約申請は、事前に給付対象期間に復帰しないことが判明している場合、事前に申請をしておくことができるので実際に私もたくさん利用しています。
電子申請であれば、紙申請の時に比べて大幅な業務効率化の実現できます。
さらに、e-gov電子申請をしていた時と比べて申請書類作成時間だけでも50~60%の作業時間短縮ができました。
3. こんな時どうする? 育児休業給付金申請
(1)2か月に1回の給付金受給では生活することが難しいと従業員から申し出があった場合
1か月に1回の受給が可能です。申請方法について下記となります。
例)次回の支給期間が2/15~4/14の方の場合
1. 2/15~3/14
2. 3/15~4/14
1.の期間終了日の3/15~5/31までに申請が必要です。
※ 原則、支給対象期間の初日から4ヶ月を経過する日の属する月の月末までの申請ですが、1ヶ月申請の場合、期限が前倒しになります。
(2)休業中に従業員が臨時的に業務を行った場合の給付金
育児休業中でも仕事の事情により、臨時的に業務を行わなければならない場合もあるかと思います。
しかし、就業した時間や支給された報酬によって、育児休業給付金が不支給、減額される場合があります。
<不支給となる場合>
下記のどちらかを満たす場合、不支給となります。
- 支給対象期間中に10日以上かつ80時間以上就業した場合
- 支給された報酬が、賃金月額の80%以上の場合
<減額調整される場合>
- 支給された報酬が、賃金月額の13%を超え、80%未満の場合
※ 13%を超えない場合は調整されません。
例)賃金月額300,000円の方の場合
- 支給対象期間中に5日間(18時間)就業し、報酬が36,000円(12%の場合)→満額支給となります。
- 支給対象期間中に250,000円(約83%の支給)が支給された場合→不支給となります。
- 支給対象期間中に60,000円(20%の支給)が支給された場合→減額調整となります。
賃金月額300,000円×80%-60,000円=180,000円の支給
(3)配偶者の出産を期に男性従業員が育児休業と給付金を取得する場合の手続き
受給要件を満たせば育児休業給付金の申請が可能です。
<受給開始期間>
出産日から
<申請時に必要なもの>
- 通常の添付書類に追加して
- 育児休業開始日が確認できる書類(社内で申請した育児休業申出書の写しなど)
<豆知識>
母の体調不良や様々なサポートが必要になった場合(お子様の養育が困難になる状況)、父の育児休業の再取得が可能です。
※ 配偶者(母)の診断書等の状況確認ができる書面が必要です。
<育休取得可能最大期間>
お子様が1歳に達する前日まで
※ 産後8週間以内に育児休業を取得している場合、再取得の際、特別な事情がなくても取得可能です。(産休特例期間内)
(4)パパ・ママ育休プラス制度
父母共に育児休業を取得する場合、育児休業取得期間の延長「パパ・ママ育休プラス制度」の利用が可能です。
<育休取得可能最大日数>
産後休業を含め、1年間
<育休取得可能最大期間>
お子様が1歳2か月に達する前日まで
父:お子様が1歳2か月に達する前日まで
母:お子様が1歳に達する前日まで
<条件>
①育児休業開始日が、お子様が1歳に達する日の翌日以前であること
②育児休業開始日が、配偶者の育児休業期間の初日以後であること
③育児休業を取得しようとしている本人の配偶者が子の1歳に達する前日以前において育児休業をしていること
※ 詳細は厚生労働省が発行している「制度のリーフレット」を参照ください。
<申請方法>
育児休業給付金の支給申請書に配偶者の育児休業取得状況、雇用保険番号を記載する。
添付書類:
- 世帯全員の住民票の写し(被保険者に配偶者であることの証明)
- 配偶者の育児休業の取得が確認できる書類
※ 育児休業給付金の取得状況が雇用保険番号から確認できる場合、不要。
(5)お子様が保育園に入園できなかった場合の育児休業と給付金の延長手続き
お子様が保育園に入園できなかった場合、夫婦共に最大2年間給付延長手続きが可能です。
1歳→1歳6ヶ月、1歳6ヶ月→2歳と延長が可能です。
母父それぞれの手続きタイミングは下記です。
母:お子様が1歳到達時、1歳6ヶ月到達時
父:お子様が1歳到達時、1歳2ヶ月到達時、1歳6ヶ月到達時
<申請時に必要なもの>
市区町村が発行した保育園に入園できなかった証明の写し(保留通知、不承諾通知書)
<注意点>
- 保育園(認可保育園)の入園申込みを市区町村に行うこと。
- お子様が1歳、1歳6ヶ月を誕生月に入園申込みを行うこと。
例)1歳→1歳6ヶ月の延長申請の場合(お子様の誕生日が8月15日の場合)
入園希望日を8月1日から8月15日として各市区町村に申請を行う必要があります。
※ お子様の誕生日の翌日以降に入園の申込みを行った場合、延長対象外です。
※ 入園申込みの時期は各市区町村により異なりますので前もって確認が必要です。
(6)新卒入社1年未満の従業員が受けられる育児休業と給付金について
現在の法律で定められている育児休業と給付金支援制度が適応する条件は会社での賃金支払い基礎日数(雇用保険者期間)が11日以上ある完全月が12ヶ月以上ない場合、発生しません。
そのため、育児休業と給付金支援制度が適応する条件に当てはまらない場合、会社のルールによっては育休休業のみ受けられる場合があります。
<豆知識>
従業員が中途採用で転職して入社1年未満の場合
従前の会社の期間も確認対象となりますので、直近2年間に雇用保険者期間が12ヶ月以上ある場合、育児休業と給付金が受けられます。
※ 前職退職後、失業給付や再就職手当を受給している場合、期間の通算ができません。
育児休業と給付金支援制度が適応する条件に当てはまらない場合、会社のルールによっては育休休業のみ受けられる場合があります。
<申請時に必要なもの>
前職の離職票2の写し(期間証明も可)
※ 育児休業開始から直近2年間の雇用保険者期間が確認できるもの
(7)出産前に時短勤務をした場合、受給できる給付金が少なくなる
休業開始前に時短勤務を行うと、育児休業給付金の受給額が少なくなります。
育児休業給付の支給額は、休業開始前の直近6ヶ月間の賃金総額を180日で割って給付日額を算出します。
時短勤務を行うということは、所定労働時間が短くなりますので、報酬も下がります。
<時短勤務しない場合>
月給200,000円×6ヶ月÷180日=6,666円/日
育児休業開始~6ヶ月間の日額:6,666円×67%=4,466円/日
6ヶ月以後の日額:6,666円×50%=3,333円/日
<時短勤務した場合>(直前の休業開始の2カ月間のみ月給が175,000円となった場合)
(月給200,000円×4ヶ月+月給175,000円×2カ月)÷180日=6,388円/日
育児休業開始~6ヶ月間の日額:6,388円×67%=4,279円/日
6ヶ月以後の日額:6,388円×50%=3,194円/日
<単月での比較>育児休業開始~6ヶ月
4,466円×30日間=133,980円
4,279円×30日間=128,370円 5,610円/月の差額が発生します。
上記事例では給付の日額自体の差額は少ないですが、長い期間給付金の受給となると差額は大きくなります。
しかし、時短勤務を行う場合、妊婦の方の体調不良(悪阻など)が理由となります。
時短勤務を行うと給付金の受給額は下がりますが、何より大切なのは母子の安全です。
給付金も生活に欠かせない重要なものですが、母子の安全を考え、労働者も会社も時短勤務を行うかの判断を行ってください。
(8)途中で紙申請から電子申請に切り替える場合の必要な手続きや書類
育児休業給付金を申請するにあたり、紙申請から切り替える際の別途必要な手続きや書類はありません。
(9)出生時両立支援助成金(出生時両立支援コース 子育てパパ支援助成金)という企業への支援制度
男性の従業員が育児休業を14日以上(中小企業は5日以上)取得した場合に支給されます。
事前に男性が育児休業を取得しやすい職場環境の整備、一般事業主行動計画の作成・提出などが必要です。
男性の育児休業取得率は少ないですが、助成金などを活用することで、休業時の欠員の補充などに活用が可能ですし、会社として仕事と育児の両立支援に取り組んでいることは、会社のイメージアップにも繋がります。
※ 支給額は28.5万円(中小企業は57万円)。2人目以降は減額されます。
まとめ
以前は、給付金の申請の度に直接ハローワークに行っていたことを思い出しました。
電子申請を導入した今と比べると、大幅な業務効率化(時間、コストなど)が実現できました。
それだけではなく、スマホで写真を撮り、そのまま添付書類として添付ができるようになりましたが、以前は考えられないことでした。
電子申請の利便性を痛感させられています。
これから電子申請の導入を検討されている方がいましたら是非この達成感を味わって欲しいです。
電子申請は「手続きの複雑化」や「業務の効率化」という課題を解決するためのひとつの手段だと考えています。
今後も、様々な手続きについてのお話と電子申請のお話を社労士コラムにてお伝えできればと思っています。
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