プロが教える! 電子申請導入のポイント

第13回
7月に入ったら算定基礎届の提出が必要です。
電子申請で申請すれば、大幅な業務効率化につながります!

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公開日:2021年6月28日

ここがポイント!

  • 4月、5月、6月の給与3か月の平均額をもとに「標準報酬月額」が決まり、それを元に保険料率で保険料が決まる
  • 「標準報酬月額」は当年9月から翌年8月までの社会保険料や保険給付の額の基礎となる
  • Charlotteなら、健康保険組合へ義務化対象の算定基礎届が電子申請可能

社会保険労務士法人アールワンの西嶋です。

はじめに、今回のコラムは社会保険に対応している企業向けに記載しています。
国民健康保険組合と全国労働者共済生活協同組合連合会については触れていません。

労働保険の申告手続きの申告が終わられた方、お疲れさまでした。
まだの方も今回のコラムでお伝えする算定基礎届の手続きと平行して対応していることと存じます。
ちょうど手続きの準備を進めている会社も多いかと思います。

算定基礎届は電子申請の義務化対象手続きとなっており、令和3年4月より算定基礎届総括表の提出が不要になるなど変更点もあります。

提出期間が短いため早めの対応が必要な上、被保険者の給与から控除される社会保険料の決定をする手続きのため、届出後は簡単に訂正できないという負担も大きい手続きのひとつです。

今回は「算定基礎届」の基本から電子申請手順をお伝えします。

1. 定時決定(算定基礎届)とは?

社会保険に加入している方は毎月の給与から社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)が控除されています。
この控除される保険料は「標準報酬月額」に基づき控除されています
標準報酬月額は毎年9月に見直します。これを「定時決定」と言います

もっと具体的なお話をすると、例えば、協会けんぽの場合、4月・5月・6月の給与3カ月の平均給与額をもとに「標準報酬月額」が決定され、企業の本社所在地である都道府県によって「各保険の保険料額」が出ます。
※ 図1は令和3年の東京都に本社をもつ企業の健康保険・厚生年金保険の保険料額表です。

図1
令和3年からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

その決定した「保険料額」をもとに書類を作成し、提出します。これを「被保険者報酬月額算定基礎届」、略して「算定基礎届」と言います。

算定基礎届とは健康保険や厚生年金に加入している方が実際に受ける給与(報酬)と現在の標準報酬月額が大きくかけ離れないよう、毎年1回(7月)、社会保険の加入している被保険者の報酬月額を届け出て、標準報酬月額を決定する手続きです。

算定基礎届の対象となる報酬はどこの期間?

図2の「報酬月額(対象)」、毎年4月から6月の3ヶ月間に支払われた給与(通勤費、時間外手当を含む)が対象となります。
4月、5月、6月の給与の3カ月の平均給与額をもとに「標準報酬月額」が決定されます。

標準報酬月額はどこの期間で適応される?

途中で報酬の変更があり、月額変更届の対象とならなければ、図2の「適応期間」、その年の9月から翌年の8月までの社会保険料や保険給付の額の基礎となります

図2
標準報酬月額はどこの期間で適応されるか

2. 算定基礎届の申請の流れ

6月下旬より順次様式等を図3のような封筒で送られてきます
内容物は以下の通りです。

  • 算定基礎届等提出のお願い(案内)
  • 5月19日時点の被保険者数記載の書面
  • 算定基礎届(対象者の氏名などの情報記載済み)
    前年度に電子申請を行っている場合、同封されません
  • 返信用封筒
    ※ 様式は日本年金機構からダウンロード可能です。

図3
算定基礎届提出に関する重要なお知らせ

令和3年度の算定基礎届の提出期限は7月1日から7月12日です
原則として毎年7月1日から7月10日の間に提出します。

「新型コロナウイルス感染症の影響により、上記期限までの提出が難しい場合は、7月12日以降も受付いたしますが、早期のご提出にご協力いただくようお願いいたします」と日本年金機構がお知らせしています。
※ 詳細は、日本年金機構が発行している「算定基礎届について」を参照ください(更新日:2021年5月20日)。

算定基礎届では以下の届出書を使用します。
健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届/厚生年金保険70歳以上被用者算定基礎届
70歳以上方は69歳以下の方とともに算定基礎届の提出が可能です。
ただし、70歳以上の方の場合、算定基礎届に基礎年金番号の記載が必要です
ですが、健康保険の資格を喪失しているため、人事給与システムによっては、CSVファイルを出力できないこともあるかと思います。
その場合、単票形式の70歳以上の算定基礎届で対応するのをオススメします。

提出先

  • 全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)の場合、1か所で健康保険と厚生年金保険の提出が完了
  • 健康保険組合加入の場合、日本年金機構と健康保険組合の2か所へ提出

表1
算定基礎届の申請種別と提出先

また、提出先が異なれば対応している申請種別も異なるので注意が必要です
※ 修正申告に関しての詳細は本コラム内「5. 電子申請で行いましょう!」を参照ください。

3. 対象となる人・ならない人

対象となる人の条件は、以下で該当した場合です。
① その年の5月31日までに資格を取得し、7月1日現在も在職中の被保険者
② その年の7月1日以降に退職する被保険者(資格喪失日7月2日以降)
③ その年休職中(育児・介護休業)、欠勤中の被保険者

対象とならない人の条件は、以下で該当した場合です。
① その年の6月1日以降に資格を取得した被保険者
② その年の6月30日以前に退職した被保険者(資格喪失日が7月1日以前の人)
③ その年の7月から9月に月額変更届(産前産後終了時、育児休業終了時月額変更届も含む)を提出する被保険者

4. 対象となる報酬 ・ならない報酬

報酬の名称(給与、手当など)にかかわらず労務の対償として定期的に事業主から受ける報酬は、標準報酬月額における報酬対象です
通勤手当や通勤定期券もその総額を1月当たりに換算して標準報酬月額に含めます。

対象となる報酬は以下に該当した場合です。

  • 基本給(月給、日給、時給)
  • 毎月固定で支給される手当(残業手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、休業手当など)
    ※ 通勤手当が3ヵ月、6ヶ月まとめて支給されている場合は、1ヶ月分の金額を各月に計上する。
  • 賞与(年4回以上支給されるもの)
  • 現物で支給されるもの(通勤定期、回数券、食事、社宅費など)

対象とならない報酬は以下に該当した場合です。

  • 病気見舞金、災害見舞金、結婚祝金など(事業主が恩恵的に支給するもの)
  • 傷病手当金、休業補償給付(公的な保険給付金)、出張旅費、交際費(経費)
  • 賞与(年3回までの賞与)
  • 社宅(本人からの徴収が現物の価格以上の場合)
  • 食事(本人からの徴収が価格の2/3以上の場合)

5. 電子申請で行いましょう!

提出方法(申請種別)は複数あり、電子申請と言ってもいくつかあります。おさらいしましょう。
電子申請に該当する申請種別は表2内、2~4の3タイプあります。

表2
算定基礎届の申請種別と提出先と証明種別

電子申請の場合

  • 会社の「印鑑」と「印鑑証明書」の代わりになるものとして電子証明書やgBizIDを利用することになります。
  • 算定基礎届は「CSV形式届書総括票」の添付が必須です。
  • 「公文書」で通知書等を受領できます。

公文書は通常、1つのXMLデータ内に申請した該当被保険者情報が入っています。
※「公文書の中身」の詳細は第8回「4. 電子申請で行いましょう!」の図2を参照ください。

令和3年度の算定基礎届から総括表の添付が不要となっており、CSVデータの作成さえできてしまえば、簡単に申請が可能です。

さて、3種類の電子申請方法の違いをお伝えします。
※「各電子申請の必要添付書類、入力値エラー確認・修正方法」の詳細は第8回 「4.電子申請で行いましょう!」を参照ください。

◆e-Govの場合◆
証明種別:電子証明書(算定基礎届はgBizIDで申請可能です)
※ 詳細は厚生労働省「e-Gov電子申請利用マニュアルの紹介」を参照ください。

日本年金機構への提出

対応しています。初めに「CSV形式届書総括票」の入力を行い、算定基礎届の編集画面に遷移します。

健康保険組合への提出

対応していません。そのため、APIソフトの導入をご検討ください。

◆届書作成プログラムの場合◆
証明種別:gBizIDが必要

日本年金機構への提出

対応しています。「CSV形式届書総括票」は自動生成されるため入力や添付が不要です。
第6回でもお伝えした通り、マイナポータルにはe-Govのように申請画面が用意されておりませんが、「届書作成プログラム」を利用すれば電子申請が可能となります。

健康保険組合への提出

対応していません。そのため、APIソフトの導入をご検討ください。

◆Charlotte(シャーロット)の場合◆
証明種別:電子証明書(普段、電子証明書を使用しない運用が可能です。特許出願中の「Charlotteキー」を使用)
第7回の「3. 電子証明書について」で詳しく説明しています。

日本年金機構への提出

対応しています。「CSV形式届書総括票」は自動生成されるため入力や添付が不要です

健康保険組合への提出

対応しています。Charlotte Kenpo Basicを使用すれば無償で算定基礎届が対応可能です

Charlotte Kenpo Basic

詳細は、Charlotte Kenpoのページを参照ください。
Charlotteでは健康保険組合へ提出する総括表の有無が組合によって対応が異なるため、添付欄を残しています。
添付の有無に関しては、所属している健康保険組合にお問い合わせください

+αポイント1
社員とパート・アルバイトを分けて申請することも可能です。
ある企業では社員とパート・アルバイトの給与支払日が異なるため、別で申請を行っているところもあります。
人事給与システムから何度もCSVファイル出力しなくても、Charlotte上で対象者だけ選択することが可能です。
手順:申請時作成した画面を表示させ、被保険者をCharlotte上で選択するだけです。

図2
Charlotte画面(手続登録)

算定基礎届は電子申請義務化対象の手続きであり、健康保険組合に所属している企業にとってはより頭を抱える問題のひとつです。

最近では、社内の効率化やDX推進を目指して電子申請を進める企業も多いと聞きました。

e-Govや届出作成プログラム(マイナポータル経由)では健康保険組合の対応をしていないため、上記でもお伝えした通り、Charlotte(シャーロット)のようなAPIソフトの導入を検討する必要があります。

6. こんな時どうする? 算定基礎届

① 通勤費が3ヶ月、6ヶ月の定期代としてまとめて支給されている場合

通勤定期代がまとめて支給されている場合は1ヶ月あたりの金額を算出して、4月、5月、6月の報酬額に加算して算定基礎届の提出を行います。

(例)6ヶ月の定期代:66,000円÷6ヶ月=11,000円/月

② 給与対象期間の途中から入社した場合

給与の支払い対象期間の途中から入社した場合、入社月分の給与が日割りで計算され満額支給されない場合があります。
入社月の給与が1ヶ月分支給されなかった場合、支払基礎日数が17日以上あってもその月は算定対象月から除きます。

(例)4月14日入社の正社員 給与締日:月末 支給日:翌月15日
4月 支払基礎日数:なし  給与支給:なし
5月 支払基礎日数:17日 給与支給:165,000円(1ヶ月分支給されていないため、算定対象月から外す)
6月 支払基礎日数:31日 給与支給:300,000円
※ 6月のみが算定対象月となる。

③ 賞与が年4回以上支給される場合

賞与を通常の報酬に含めて算定基礎届を提出します。

賞与額を算定時に含めて提出するかは、賞与が給与規定などで年4回以上支給されることが定められているものになります。
通常は年2回(夏、冬)のみだが、臨時で賞与が支給され、たまたま4回になった場合、給与に含める必要はありません

(例)年4回の賞与
7月:200,000円 9月:100,000円 12月:200,000円 3月:100,000円 合計600,000円
※ 7月1日を基準にして4回以上の賞与の支給実績がある場合は、賞与の合計額を12で割り、1ヶ月分を計算。
この算出した1か月分を4月から6月の報酬額に加算する。

4月 支払基礎日数:31日 給与支給:300,000円 賞与分:50,000円 合計350,000円
5月 支払基礎日数:30日 給与支給:300,000円 賞与分:50,000円 合計350,000円
6月 支払基礎日数:31日 給与支給:300,000円 賞与分:50,000円 合計350,000円

④ 在宅勤務時の通勤費の扱いについて

コロナウイルスの影響で在宅勤務・テレワークが増加しています。
一時的に会社に出勤した場合の通勤費の扱いはどうなるのでしょうか。

算定基礎届の際、報酬に含めるかは労働契約上の労務提供場所によって判断されます
対象の方がどのような労働契約になっているのか確認してから判断する必要があります。

労働契約上の労務の提供場所が自宅の場合 → 実費精算の経費扱い(算定基礎届の報酬に含めない
労働契約上の労務の提供場所が会社の場合 → 通勤手当扱い(算定基礎届の報酬に含める

⑤ 4、5、6月が休職の場合

従前の標準報酬月額での算定となります。

⑥ 育休明けの算定について

育児休業明けの算定については、4月~6月に報酬が支給されていれば通常の算定となります。
4月~6月のいずれかで復帰の場合、支払基礎日数が対象月となるのかなどの確認が必要です

今までの経験上、4月~6月に復帰された方は育児休業明けの月額変更(7月~9月)に該当される方が多いです。
理由は、時短勤務となる方が多いためです。

まとめ

健康保険組合への申請は紙の届を提出するか、データ化したものをCDで提出するしか選択肢がありませんでした。

その度に手書きで届出や総括表を作成し、CDなどで提出する場合は電子媒体総括票を作成してから提出していたため、多くの時間を費やしていました(電子媒体の総括票は会社の押印が必要なため、印依頼をしていました)。

しかし、今年は違います。

Charlotte Kenpoのおかげで、CSVデータさえ作成できれば、即申請が可能となるため、従来よりも30%以上業務効率化が可能です
毎年、算定の時期を迎える度に時間を費やして申請を行っていましたが、今年は算定の申請をするのが非常に楽しみです。

給与支払日が月末の企業は算定基礎届の作成から提出期間が短く、雇用形態によっては給与支払日が異なる場合、先に給与支払いしている従業員のみ申請が行えれば労務担当者様の心身的負担も軽減されることと思います
会社の運用に合った電子申請が行えれば業務効率化に繋がります。

この時期は労働保険の年度更新とも重なるため、従業員数の多い企業では事前準備をしていないと期限内に届出することのプレッシャーは大きいと思います。
この時期の負担を軽減させるためにCharlotte(シャーロット)では「労働保険年度更新」と併せて時間の有効活用が可能です

Charlotte(シャーロット)電子申請「労働保険年度更新」のメリットは別のコラムでご紹介しています。興味のある方は是非ご一読ください。
第11回第12回コラムを参照ください。

労務担当者様の負担を軽減させるためには、自社の業務運用に合った電子申請の手段を選びましょう。

社会保険労務士法人アールワン 様
東京都千代田区麹町1-3 ニッセイ半蔵門ビル3F
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