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離職票のマイナポータル受領で何が変わる?企業の配布業務・問い合わせ対応を解説

ここがポイント!

  • 離職票のマイナポータル受領は、企業側の配布業務や問い合わせ対応といった業務効率化の手段として注目。
  • マイナポータル直接交付は、企業側の電子申請手続きや退職者側のサービス連携など3つの条件が前提。
  • 現場の混乱やトラブルを防ぐため、退職時の案内方法や確認フローを含めた企業側の運用設計が重要。

退職者から「離職票はいつ届きますか?」と問い合わせを受けた経験のある人事担当者は多いのではないでしょうか。

離職票は失業給付の手続きに必要な書類であるため、退職者にとっては退職後すぐに必要になる重要な書類です。そのため、発送の遅れや未着が発生すると、企業側への問い合わせにつながりやすい傾向があります。

近年は電子申請の普及に伴い、一定の条件を満たした場合には離職票をマイナポータルで受け取れるようになりました。従来のように企業が紙の離職票を受け取り、退職者へ郵送する必要がなくなるため、業務効率化の手段として注目されています。

一方で、実際の運用では「退職者が設定を済ませていると思っていたが受領できなかった」「マイナポータルで受け取れるはずなのに問い合わせが来た」といったケースも見られます。

離職票のマイナポータル受領は、単に制度を理解するだけでは十分ではありません。
企業側には、退職時の案内方法や確認フローを含めた運用設計が求められます。

本記事では、離職票のマイナポータル受領の概要とともに、人事・労務担当者が押さえておきたい実務上の対処について解説します。

1.離職票のマイナポータル受領とは

離職票は、雇用保険の被保険者であった従業員が退職した際、失業給付の申請などに使う公的書類です。

離職票の受け取り方法や紙・電子の違いについては、以下の記事もあわせてご参照ください。

従来は企業がハローワークへ申請し、紙の離職票を退職者に郵送・手渡しする方法が一般的でした。

2025年1月20日から、希望する離職者についてはハローワークから退職者のマイナポータルへ離職票が直接送付される仕組みが導入されています。

企業を経由せず、ハローワークから退職者へ直接届くという点が、企業から紙で交付する方法や、企業がPDF等で送付する運用との大きな違いです。

離職票をマイナポータルで受け取るための3つの条件

マイナポータルでの直接交付は「希望すれば誰でもすぐに使える」ものではありません。以下の3条件がすべて整っていることが前提になります。

条件 内容 誰が対応するか
①番号の紐づけ 雇用保険被保険者番号とマイナンバーが事前に紐づいている 退職者がマイナポータルで確認/未紐づけなら企業が「個人番号登録・変更届」を提出
②サービス連携 マイナポータルと「雇用保険WEBサービス」が連携設定済み 退職者が事前に連携操作を行う
③電子申請での手続き 資格喪失届・離職証明書を企業が電子申請で提出 企業(紙提出だと対象外になる)

特に③は企業側の対応に依存する条件です。

離職証明書を紙で提出した場合、退職者がマイナポータル連携を済ませていても直接交付の対象にはなりません。

「退職者は準備していたのに、企業の提出方法のせいで使えなかった」というケースは、制度の仕組みを理解していないと気づきにくい落とし穴です。

2.現場で実際に起きている混乱パターン

制度としては合理的に見えるマイナポータル受領ですが、実際の退職手続きの現場では「言った・言わない」「やったつもり・やれていない」のすれ違いが頻発しています。
代表的なパターンを整理します。

パターン① 退職者は「マイナポータルで受け取る」と言っていたのに、実際は届いていない

最も多い問い合わせです。退職者がマイナポータルでの受領を希望していても、マイナンバーとの紐づけや雇用保険WEBサービスとの連携が完了していないケースが少なくありません。

退職者としては「設定したつもり」でも、実際には連携が反映されていなかったり、紐づけの登録に時間がかかっていたりすることがあります。

退職後にこの状態に気づいても、退職者はすでに企業のメールアドレスを失っており、連絡手段が限られています。
退職前にどこまで確認しておけるかが、トラブルを未然に防ぐ分かれ目になります。

パターン② 退職者が無断でマイナポータル連携を進めていて、企業の紙送付と行き違う

企業側が「紙で送る前提」で離職票を準備していたところ、退職者がすでにマイナポータルの連携設定を済ませていたというケースです。

この場合、企業が電子申請で資格喪失手続きを行っていれば直接交付の対象になり得るため、退職者と企業の間で「どちらの方法で受け取るか」の認識がずれたまま手続きが進んでしまうリスクがあります。

退職手続きの初期段階で受け取り方法の希望を明確に確認し、記録に残しておくことが重要です。口頭での確認だけでは「言った・言わない」のトラブルに発展しやすくなります。

パターン③ お知らせの保存容量の上限制限による送信エラー

マイナポータルの「お知らせ」機能には容量の上限があり、上限を超えていると離職票のデータが届かない場合があります。

退職者のマイナポータルの容量の問題であるため、企業側で把握することは難しいですが、「届いていない」という相談を受けた際の対応知識として持っておくべきポイントです。

この場合は、最寄りのハローワーク窓口で相談いただくよう案内します。

パターン④ マイナポータル直接交付では企業側で確認できる情報が限られる

マイナポータルで直接交付された場合、企業の手元に残るのは離職証明書(事業主控え)です。
離職票そのものは企業を経由せず、ハローワークから退職者本人へ直接交付されます。

そのため、退職者から「離職票が届いていない」「離職票の内容を確認したい」といった問い合わせがあっても、企業側で離職票そのものを確認したり、Charlotteのように交付状況を把握する機能を持つサービスを利用しない限り、通常は交付状況を把握できません。

万が一、退職者から離職票について問い合わせがあった場合は、まず自社で提出した離職証明書の内容を確認したうえで、必要に応じて退職者へマイナポータルの確認やハローワークへの問い合わせを案内することになります。

3.問い合わせ対応の設計

混乱の多くは「退職者が何を理解していて、何を理解していないか」が企業側から見えないことに起因します。
問い合わせが来てから対応するのではなく、事前に渡す情報を整理しておくことで負荷を減らせます。

・受け取り方法の希望はどれか
紙・電子データ・マイナポータルのいずれかを明確に確認し、書面やメールなど記録が残る形でやり取りする。

・マイナポータル受領を希望する場合、事前準備はできているか
マイナンバーカードの保有、マイナポータルの利用登録、雇用保険WEBサービスとの連携状況を退職者に確認してもらう。

・退職後の連絡先はどこになるか
企業のメールアドレスは退職後に使えなくなるため、私用の連絡先を事前に確認しておく。

上記のような項目を退職手続きの際に確認しておくことがポイントです。

退職時の案内資料には、「マイナポータルでの受領を希望される場合、事前の連携設定が完了していないと届きません」という一文を明記しておくことをおすすめします。

設定が完了していない状態で「マイナポータルで受け取る」と申告されるケースが多いため、希望の確認と、設定状況の確認は別物として扱うのがポイントです。

また、直接交付の手続きには電子申請の処理期間を含めて10日程度かかる見込みであることも伝えておくと、「まだ届かない」という早すぎる問い合わせを減らせます。

4.企業はどこまで確認すべきか

離職票のマイナポータル受領で人事担当者が悩みやすいのは、退職者が「マイナポータルで受け取る」と言っていても、それだけでは実際に受け取れる状態かどうかまでは分からないことです。

退職者に受け取りの希望を確認していても、マイナポータルの利用登録や雇用保険WEBサービスとの連携が完了していなければ、離職票はマイナポータルに届きません。

逆に、企業側が紙での交付を想定していたにもかかわらず、退職者がすでに必要な設定を済ませていて、マイナポータルで受け取る前提になっているケースもあります。

実務上は、「退職者がどの方法で受け取りたいか」と「その方法で受け取れる状態にあるか」を別々に確認することが重要です。

例えば退職手続きの中で、受け取り方法の希望だけを聞いて終わるのではなく、あわせて「マイナポータル連携の準備は済んでいるか」「紙交付に切り替える可能性はあるか」といった確認項目を持っておくと、後からの行き違いを減らしやすくなります。

離職票の受け取り方法が多様化した今、企業側に求められるのは、どの方法を選んだかだけを把握することではありません。

希望と準備状況を分けて記録し、必要に応じて紙交付へ切り替えられる状態をつくっておくことが、問い合わせ対応を減らすうえでのポイントになります。

5.保管すべきなのは「離職票そのもの」だけではない

マイナポータルで離職票が直接交付される場合、企業の手元に離職票そのものは残りません。
企業側に残るのは、電子申請の過程で作成・提出した離職証明書の事業主控えです。

この点は、紙で離職票を扱っていたときの感覚のままだと混乱しやすい部分です。
紙交付であれば、送付前の離職票や控えを手元で確認しながら対応できますが、マイナポータル受領では、後日退職者から問い合わせがあったときに企業が参照できる資料は基本的に離職証明書の事業主控えになります。

たとえば退職者から「離職票の記載内容を確認したい」「届いていないので状況を知りたい」といった問い合わせがあった場合、企業側としては、提出した離職証明書の内容や電子申請の履歴、退職時にどの受け取り方法を案内していたかなどを確認しながら対応することになります。

そのため、保管の対象として考えるべきなのは、離職証明書の事業主控えだけではありません。
あわせて、その退職者がどの受け取り方法を希望していたのか、企業としてどのように案内したのか、どの時点で何を確認したのかといった運用記録も残しておく必要があります。

特にマイナポータル受領では、後日の問い合わせに対して「企業はどこまで対応済みだったのか」を説明できるかどうかが重要になります。

離職票そのものが手元にない以上、実務上は書類の保管とあわせて、対応履歴を保管するという発想が欠かせません。

6.給与・労務システムとの相性

離職票の受け取り方法が複線化したことで、給与・労務システム側の機能が実務の負荷を左右する場面が増えています。

システム選定・運用の観点で見ておきたいポイントを整理します。

電子申請対応が前提になる
マイナポータルでの直接交付を利用するには、資格喪失届・離職証明書を電子申請で提出することが条件のひとつです。
紙申請のままではこの選択肢自体が使えません。

社内で使っている人事労務システムが、社会保険・雇用保険の電子申請にどこまで対応しているかを確認しておく必要があります。

「受け取り方法の希望」を記録・管理できるか
退職者ごとに「紙/電子データ/マイナポータル」のどの方法を希望しているかを、システム上の従業員データや退職処理のフローに記録できると、問い合わせ対応の際に履歴をすぐ確認できます。
退職処理を紙の申請書やExcel管理だけで行っている場合、この情報が分散しやすく、担当者の記憶に依存してしまう点は見直しの余地があります。

マイナンバー連携機能の有無
雇用保険被保険者番号とマイナンバーの紐づけ状況を確認・登録する作業は、システム側でマイナンバーの収集・保管・電子申請への連携を一括管理できる機能があると効率化につながります。
「紐づけ済みかどうかをシステム上で一覧確認できる」だけでも、退職手続きの初期段階で退職者への確認事項を絞り込めます。

書類送付・回収機能との組み合わせ
紙や電子データでの離職票送付が必要なケースでは、退職者への書類送付・回収を管理する機能を持つシステムと組み合わせることで、郵送状況や受領確認の漏れを防ぎやすくなります。
マイナポータル対応はあくまで選択肢のひとつであり、紙・電子データでの送付ニーズが完全になくなるわけではない、という前提での運用設計が現実的です。

労務手続き全体の効率化については、以下の記事もあわせてご参照ください。

まとめ

離職票のマイナポータル受領は、郵送業務の削減や退職者の利便性向上につながる仕組みです。

しかし、実際の運用では退職者側の事前設定や受領状況の確認が関係するため、制度を利用するだけで業務負担がなくなるわけではありません。

むしろ重要なのは、退職時にどのような案内を行うのか、受領方法をどのように確認するのかといった運用ルールを整備することです。

離職票の電子化を単独で考えるのではなく、退職手続き全体のデジタル化や従業員との情報共有の仕組みとあわせて検討することがポイントです。

本コラムの著者

塩坂 うみ

フリーライター

社会保険関連や企業の人事・労務向けのコラムを中心に執筆するフリーライター。美容関連やクリニック紹介、マニュアル作成などの執筆経験を活かし、読者が理解しやすい、実務に即した記事づくりを心がけている

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