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休業と休職の違いをわかりやすく解説|給付制度・電子申請との関係も紹介

ここがポイント!

  • 育児・介護休業は雇用保険の給付、私傷病休職は健康保険の傷病手当金と、根拠となる保険制度が異なります。
  • 2026年1月13日より、協会けんぽの傷病手当金・出産手当金等の申請が電子申請に対応されました。
  • 電子申請は被保険者本人と社会保険労務士が利用でき、事業主による代理申請はできないため、企業の申請支援体制の整理が必要です。

「休職」と「休業」——実務現場では、日常的によく使われる言葉でありながら、その違いを正確に説明できる担当者は意外と多くありません。

しかし、「休業」と「休職」では、制度の根拠や企業に求められる対応、従業員が受けられる給付などが異なります。特に、育児・介護休業などの法定休業と、企業が就業規則等に基づいて設ける私傷病休職では、実務上の取り扱いを明確に区別する必要があります。

従業員から休みの相談を受けた際にこの違いを理解していないと、給与計算の誤りや、本来案内すべき手当の案内漏れといったトラブルにつながりかねません。

本記事では、休業のうち、主に育児休業・介護休業・産前産後休業などの法定休業と、企業が就業規則等に基づいて設ける私傷病休職との違いを整理します。そのうえで、それぞれに関連する給付制度と、2026年1月13日に始まった協会けんぽの電子申請サービスが担当者の実務にどう関わるのかを解説します。

1.休業と休職、何が違う?主な相違点を整理

本記事で取り上げる法定休業と私傷病休職を、代表的な観点で比較すると、次のように整理できます。(表1)

(表1)

項目 育児・介護休業 私傷病休職
制度の位置付け 育児・介護休業法 就業規則・労働協約等
代表例 法律に基づく休業制度 企業が設ける休職制度
主な給付 育児休業給付金・介護休業給付金 健康保険
給付制度 雇用保険 傷病手当金
申請・提出実務 原則として事業主が提出するが、本人による提出も可能 被保険者本人が申請し、事業主が勤務・賃金の状況を証明
企業の対応 法令に基づく管理・手続きが必要 就業規則等に基づく管理・運用が必要

この表からもわかるとおり、育児・介護休業は法律に基づいて労働者に認められる制度であるのに対し、私傷病休職は、主に企業が就業規則等に基づいて設ける制度です。

これは単なる呼び方の違いにとどまらず、企業がどこまでその休みを管理する義務を負うのか、また従業員がどの制度から経済的な支援を受けられるのかという、実務上の対応にも直結する重要なポイントです。

なお、使用者の責に帰すべき事由によって従業員を休業させる場合には、労働基準法第26条に基づき、原則として平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払う必要があります。一方、育児・介護休業法には、育児休業や介護休業の期間中の賃金支払いを企業に義務づける規定はありません。ただし、就業規則や労働協約等で賃金を支給すると定めている場合は、その定めに従う必要があります。

私傷病休職についても、法律上、休職期間中の賃金支払いを企業に一律に義務づける規定はありません。ただし、育児・介護休業と私傷病休職では、制度の根拠や利用できる給付が異なるため、無給となる場合があるという点だけで同じ制度として扱わないよう注意が必要です。

「法定休業」とは-法律に基づいて認められる休業制度

休業とは、雇用契約を継続したまま、一定期間就業しない状態を広く指す言葉です。このうち、育児休業・介護休業や産前産後休業など、法律に基づいて労働者に認められるものを、本記事では「法定休業」として取り上げます。

代表的な例が、育児・介護休業法に基づく育児休業と介護休業です。
同法の正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」であり、法律名そのものに「休業」という言葉が用いられている点からも、これが法定の制度であることがわかります。

このほか、労働基準法第65条に基づく産前産後休業も、法律に基づく休業の一つです。一方、使用者の責に帰すべき事由による休業については、労働基準法第26条により、原則として平均賃金の100分の60以上の休業手当の支払いが必要になります。

育児休業や介護休業などの法定休業では、法律に定められた要件を満たす労働者から適法な申出があった場合、事業主は原則としてその申出を拒むことができません。

育児休業や介護休業は、就業規則に明文の定めがない場合でも、法律上の要件を満たせば取得できます。そのため、企業が法律を下回る独自の取得要件を設けることはできません。

ただし、法令で認められた範囲内で労使協定を締結している場合には、継続して雇用された期間が1年未満の労働者など、一定の労働者からの申出を拒むことができる場合があります。対象者や除外要件は、育児休業と介護休業で異なるため、自社の労使協定と法令を確認する必要があります。

育児休業や介護休業は、対象者、申出期限、取得可能期間などが法令で定められているため、企業は法令に沿った社内規程と管理手順を整備する必要があります。

「休職」とは-会社が就業規則等に基づいて設ける制度

一方、民間企業における私傷病休職については、制度の内容や休職期間などを一律に定めた法律上の規定はありません。

私傷病休職は、病気やけが、メンタル不調などによって一定期間就業することが難しい従業員について、雇用契約を維持したまま就労を免除する制度です。制度の有無、適用条件、休職期間、休職中の賃金などは、主に就業規則、労働協約、個別の労働契約等に基づいて定められます。

そのため、休職制度そのものを設けていない企業も存在しますし、同じ私傷病休職であっても、期間の上限や休職中の賃金支給の有無は企業によって大きく異なります。

原則として企業が私傷病休職制度を設けるかどうかや、その基本的な制度内容を定めます。ただし、就業規則等に休職制度を定めている場合には、その規定に従って公平かつ適切に運用する必要があり、個別の従業員について企業が理由なく恣意的に適用を拒むことは適切ではありません。休職中の賃金についても、就業規則や労働協約等の定めに従います。

休職の事由には、私傷病による休職のほか、起訴された従業員を対象とする起訴休職、留学や公職への就任にともなう休職など、企業によってさまざまな類型が設けられています。

中でも実務上、多くみられるのは、うつ病などのメンタル不調を含む私傷病休職であり、休職期間中の待遇や復職の可否をめぐって従業員との認識のずれが生じやすい領域でもあります。

ただし、休職制度を設ける場合には、休職事由、休職期間、休職中の賃金・社会保険料の取り扱い、休職中の連絡方法、復職の判断基準、休職期間満了時の取り扱いなどを就業規則等に明記し、公平かつ一貫して運用することが重要です。

2.休業中・休職中の経済的支援-雇用保険と社会保険の違い

休業・休職中に利用できる給付は、その休業・休職の理由や加入している保険制度、賃金の支給状況などによって異なります。

雇用保険の被保険者が育児休業を取得し、所定の支給要件を満たした場合には、育児休業給付金が支給されます。介護休業についても、雇用保険の被保険者が所定の要件を満たした場合には、介護休業給付金が支給されます。

これらの給付はハローワークへの申請が必要で、支給申請書等の提出者は原則として被保険者を雇用する事業主です。ただし、本人が希望する場合には、被保険者が直接提出することもできます。

これに対して、私傷病などを理由とする休職の場合、代表的な経済的支援は健康保険(協会けんぽや健康保険組合)から支給される傷病手当金です。

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがの療養のために働くことができず、連続する3日間の待期を経たうえで、給与の支払いを受けられない日などについて支給される制度です。給与が一部支給される場合でも、その額が傷病手当金の額より少ないときは、差額が支給されることがあります。

なお産前産後休業については、労働基準法第65条に基づく休業ですが、休業中の所得保障として一定の要件を満たした場合に支給されるのは、雇用保険の給付ではなく、健康保険の出産手当金です。
このように、休業中に利用できる給付制度は、休業の種類によって異なります。

私傷病休職中の従業員が傷病手当金の支給要件を満たす場合には、健康保険の傷病手当金が生活保障の一つとなります。ただし、留学休職や起訴休職など、私傷病以外の休職が傷病手当金の対象になるわけではありません。この点は、担当者として押さえておきたいポイントです。

参照:厚生労働省「育児休業等給付について」
参照:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」
参照:全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき(出産手当金)」
参照:厚生労働省「介護休業」

3.協会けんぽの電子申請サービスとは

社会保険の給付申請の実務は、これまで長らく紙の申請書を用いた運用が続いてきましたが、2026年1月13日より、協会けんぽの傷病手当金や出産手当金、出産育児一時金、高額療養費など各種給付に関する申請が電子申請に対応しました。

従業員である加入者は、マイナンバーカードと「マイナアプリ」を利用して本人認証を行うことで、パソコンやスマートフォンなどから直接オンラインで申請できます。これにより、申請書を郵送する手間や費用の削減が期待されます。

ただし、この電子申請サービスは、協会けんぽの被保険者本人と社会保険労務士が利用できるほか、一部の申請については被扶養者も利用できます。ただし、事業主が従業員に代わって電子申請を行うことはできません。

これまでの紙による申請では、従業員が作成した申請書に事業主が必要事項を証明し、企業が従業員に代わって協会けんぽへ郵送する運用も行われてきました。電子申請サービスの開始により、従業員本人が事業主証明等の必要書類を画像データとして添付し、オンラインで提出できる選択肢が加わりました。

なお、従業員から健康保険給付の申請に必要な証明を求められた場合、事業主は、健康保険法施行規則第33条に基づき、正当な理由なく証明を拒むことができません。電子申請の場合も、傷病手当金や出産手当金などの申請に必要な事業主証明への対応は引き続き必要です。

参照:e-Gov法令検索 健康保険法施行規則

4.電子申請の開始後も残る企業の実務対応と制度上の課題

育児休業や介護休業では、休業期間の管理に加え、雇用保険給付の申請や社会保険料免除の手続きなど、企業が関与する業務が複数あります。そのため、人事・労務担当者には、申出日、休業期間、分割取得の状況、給付申請の進捗などを正確に管理することが求められます。

一方、傷病手当金をはじめとする健康保険給付については、電子申請サービスの開始により、従業員本人が事業主を経由せずにオンラインで提出できるようになりました。

ただし、この協会けんぽの電子申請サービスでは、事業主が従業員に代わって電子申請を行うことはできません。

傷病手当金を申請する従業員は、病気やけがによって働くことができない状態にあり、本人が申請書類の準備やオンラインでの操作を行うことが難しいケースも少なくありません。そのため実務上は、企業が従業員から必要な情報を確認し、事業主証明を行ったうえで、申請書類の作成や提出を支援しているケースがあります。

傷病手当金の電子申請を利用できる者が被保険者本人または社会保険労務士に限定され、事業主が利用できない現在の仕組みは、こうした企業の実務に十分対応しているとはいえません。本人がオンラインで申請できる選択肢が増えたこと自体には一定の意義がありますが、企業による申請支援や実質的な代行が必要となるケースを考えると、事業主が利用できる申請方法についても、今後検討されることが望まれます。

また、今回の電子申請サービスは、申請窓口としては、社会保険・雇用保険関係の手続きで広く利用されているe-Govや、国民向けの行政手続きの窓口として利用されているマイナポータルとは別に設けられた仕組みです。マイナンバーカードとマイナアプリを利用して本人認証を行うものの、申請先は協会けんぽ独自の電子申請サービスとなっています。

このため、加入者が電子申請サービスの存在や利用方法を認識しにくく、申請方法が分からない従業員から企業への問い合わせが増える可能性もあります。電子化に当たっては、単にオンラインの申請経路を増やすだけでなく、既存の行政手続き基盤との関係を分かりやすくし、加入者が迷わず利用できる導線を整えることも重要です。

人事・労務担当者としては、休業と休職それぞれの制度上の違いを正しく理解したうえで、従業員への案内や社内フローの見直しを進めていくことが求められます。

まとめ

「休業」は、雇用契約を継続したまま一定期間就業しない状態を広く指す言葉です。そのうち、育児休業・介護休業や産前産後休業などは法律に基づく制度であり、所定の要件を満たす労働者から適法な申出があった場合、企業は原則として取得を認める必要があります。

一方、民間企業における私傷病休職は、主に企業が就業規則等に基づいて設ける制度です。ただし、休職制度を設けている場合には、就業規則等に定めた要件に従い、公平かつ適切に運用する必要があります。

また、育児休業・介護休業には雇用保険の給付、産前産後休業には健康保険の出産手当金、私傷病休職には一定の要件のもとで健康保険の傷病手当金が関連します。休業・休職の名称だけで判断せず、その理由と支給要件に応じて利用できる給付を確認することが重要です。

2026年1月13日に始まった協会けんぽの電子申請サービスにより、加入者本人がオンラインで申請できる選択肢が加わりました。しかし、傷病手当金を申請する従業員は、病状によって自ら申請手続きを行うことが難しい場合があり、企業が書類の作成や提出を支援しているケースもあります。事業主が電子申請を利用できない現在の仕組みは、こうした企業実務との間に課題を残しています。

さらに、協会けんぽの電子申請サービスは、e-Govやマイナポータルとは別に設けられた申請経路であるため、加入者にとってサービスの存在や利用方法が分かりにくいという課題もあります。健康保険給付のデジタル化に当たっては、加入者本人の利便性だけでなく、企業による申請支援の実態や、既存の行政手続き基盤との関係まで含めて検討することが求められます。

人事・労務担当者は、電子申請サービスを単に従業員へ案内するだけでなく、本人による手続きが難しい場合の支援方法や、事業主証明の受け渡し方法をあらかじめ整理しておく必要があります。あわせて、今後、事業主による電子申請や企業向けシステムとの連携、既存の行政手続き基盤との統合などが行われるか、制度とサービスの動向を確認していくことが重要です。

ちなみに、Charlotteでは、健康保険組合の11手続きを電子申請できるサービスを提供しています。


健康保険組合の11手続きを電子申請
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本コラムの著者

塩坂 うみ

フリーライター

社会保険関連や企業の人事・労務向けのコラムを中心に執筆するフリーライター。美容関連やクリニック紹介、マニュアル作成などの執筆経験を活かし、読者が理解しやすい、実務に即した記事づくりを心がけている

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●社会保険、雇用保険、労働保険の電子申請
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