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産前産後休業取得者申出書とは?
提出先や電子申請、記入例を人事・労務担当者向けに解説

従業員が産休を取得する際、社会保険料免除の手続きとして必要となる「産前産後休業取得者申出書」。

育児休業に関する申請や手続きは把握していても、産休に特化した申出書の提出方法や記入内容については、改めて確認が必要な部分も多いでしょう。

この記事では、産前産後休業取得者申出書の基礎知識、提出先、電子申請可否、記入例、産休期間変更時の対応を解説します。

1. 産前産後休業取得者申出書とは

「産前産後休業取得者申出書」とは、産前産後休業を取得する従業員がいる場合に、事業主が年金事務所へ提出する書類です。

産前産後休業(産休)とは、労働基準法第65条で定められた制度で、従業員が出産のために取得する休業を指します。

  • 産前休業:出産予定日の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から取得可能
  • 産後休業:出産翌日から8週間は就業禁止

産休期間中は、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)の免除が適用されます。

参考:日本年金機構_従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が産前産後休業を取得したときの手続き

この申出書を提出することで、産休期間中の厚生年金保険料および健康保険料が免除されます。

提出する理由

産前産後休業取得者申出書を提出する理由は、産休期間中の社会保険料免除を適用するためです。

この手続きは、事業主が年金事務所へ提出することで初めて適用される仕組みになっています。

万が一提出を怠った場合、産休中であっても保険料の免除が適用されないため、企業は従業員負担分だけでなく事業主負担分についても引き続き支払わなければなりません。

その結果、従業員から「産休中なのに社会保険料が引かれている」と問い合わせを受けるなど、トラブルにつながる可能性があります。

そもそもこの社会保険料免除制度は、出産によって収入が減少する従業員の経済的負担を軽くすることを目的としたものですが、企業側にとっても保険料負担が免除されるというメリットがあります。

適切に手続きを行うことで、従業員が安心して産休を取得できるだけでなく、企業にとっても負担を防ぐことができます。

2. 産前産後休業取得者申出書の提出先

産前産後休業取得者申出書の提出先は、従業員が所属する事業所の所在地を管轄する年金事務所です。具体的には、日本年金機構の事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出することになります。

提出方法は複数あり、電子申請を利用する場合にはe-Govを通じて手続きを行うことが可能です。
その他、紙での申請を選択する場合には、書類を郵送する方法、あるいは年金事務所の窓口へ直接持参する方法があります。

電子申請を活用することで提出の効率化や控えの電子保存が可能になるため、今後の業務効率化を検討している企業には有効な手段といえるでしょう。

提出時期については、産前産後休業期間中、または産休終了日から1ヶ月以内に提出することが求められています。

提出が遅れると社会保険料免除の適用開始が遅れる可能性があるため、出産予定者のスケジュールを踏まえて余裕をもって準備を進めることが重要です。

ただし、注意点として、従業員が加入している健康保険が協会けんぽの場合は、日本年金機構へ手続きを行えば健康保険料と厚生年金保険料の両方が免除されます。

一方で、企業独自の健康保険組合に加入している場合は、健康保険組合側にも別途手続きが必要となることがあるため、あらかじめ確認しておきましょう。

また、産前産後休業取得者申出書はあくまで社会保険料免除のための書類であり、出産手当金を受給する際には、別途健康保険組合へ出産手当金の申請が必要となります。
同じ産休に関する手続きでも目的が異なるため、混同しないよう注意してください。

3. 産前産後休業取得者申出書の記入例

この産前産後休業取得者申出書は、提出する時期が産前休業期間中か、それとも産後休業期間中かによって、記入内容が一部異なります。また、出産が予定より早まった場合や、残念ながら死産となった場合であっても、この申出書の提出手続き自体は必要となるため注意が必要です。

 

 

記入内容 記入ポイント
届書提出日 提出日を記入する
事業所整理記号 必ず記入する
事業所情報 事業所名や所在地などを記入する
被保険者整理番号 必ず記入する
基礎年金番号 マイナンバーカードや基礎年金番号通知書等で確認し、必ず記入する
被保険者氏名 氏名を記入する
被保険者生年月日 生年月日を記入する
出産予定年月日 必ず記入する
出産種別 該当する種別(単胎・双胎など)を〇で囲む
産前産後休業開始年月日 休業開始日を記入する
産前産後休業終了予定年月日 終了予定日を記入する
出産年月日 実際の出産日を記入する

産前:出産予定日の42日前(多胎妊娠の場合は98日前)から出産日まで
産後:出産日の翌日から56日目まで

※記入例サンプルは、日本年金機構の公式サイト「産前産後休業取得者申出書の書き方(PDF)」から確認可能です。

引用:日本年金機構の公式サイト_産前産後休業取得者申出書の書き方(PDF)

産休期間を変更する場合の手続き

出産予定日と実際の出産日にズレがあった場合は、産前産後休業期間も変わります。
この場合、産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届の提出が必要です。

ケース 対応書類
出産日が予定日より前後した 変更(終了)届を提出して期間を訂正する

提出期限
出産日確定後、速やかに提出しましょう。
健康保険料・厚生年金保険料の免除は正しい期間で適用される必要があります。

産前産後休業取得者申出書の提出期限
原則、産休開始日の前日までに提出します。
ただし、期限を過ぎても提出は可能ですが、免除適用の開始が遅れる場合があるため注意しましょう。

4. 産前産後休業取得者申出書の電子申請について

産前産後休業取得者申出書の提出方法として電子申請を選択することは可能ですが、提出先によって対応状況が異なります。

まず、厚生年金保険と協会けんぽが管轄する健康保険の場合、年金局への提出はe-Govを通じて電子申請が可能です。

電子申請を活用することで、郵送や窓口持参の手間を省略でき、控えも電子データとして保存できるため、業務効率化や書類管理の負担軽減につながります。

一方で、企業独自の健康保険組合に加入している場合は注意が必要です。
健康保険組合への申請の場合、e-Govでの申請は対応しておらず、紙やCDを使った申請か、電子申請の場合は、何らかのシステムやソリューションの導入が必要となります。

業務効率化を進めたい企業にとっては、こうしたサービスを導入することで、産前産後休業取得者申出書を含む各種社会保険手続きの運用負担を大きく軽減することが可能です。

まとめ

産前産後休業取得者申出書は、産休中の社会保険料免除を受けるために欠かせない重要書類です。

提出先や提出方法、そして記入内容を正確に理解しておくことで、従業員が安心して出産に臨める環境を整えることができます。

また、電子申請を活用すれば業務効率化にもつながるため、自社の運用状況を見直し、確実かつスムーズな手続きを進めていきましょう。

また、育児休業給付金の電子申請を導入することによる業務効率化の実例については、以下の記事もあわせてご参照ください。

本コラムの著者

山下 うみ

フリーライター

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