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第48回
社会保険適用拡大で二以上勤務者が増加
実務への影響を確認しておきましょう

2024年10月の社会保険適用拡大により、二以上勤務者が増加することが予想されます。また、男性の育児休業の取得促進をはじめとする育児期の支援策により、二以上勤務者の社会保険の届出や、育児休業の保険料免除の要件等の判断も複雑になります。

すでに特定事業所として適用拡大の対象になっている事業所でも、増加する二以上勤務者の実務について、理解し、従業員への説明や届出ができるよう確認しておきましょう。

1. 社会保険の適用拡大

2024年10月1日より短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件が、被保険者数100人超(101人以上)から50人超(51人以上)に拡大されます。

社会保険の適用事業所単位で月末の被保険者数が、過去1年間で6か月以上50人を超えている場合が拡大の対象となり、対象となった場合、下記の4つの条件すべてに該当する従業員が新たに社会保険の被保険者となります。(図1参照)

新しく社会保険の被保険者になる条件

① 労働時間が週20時間以上であること
② 賃金が月8.8万円以上であること(残業代、臨時の賃金を除く)
③ 2か月を超える雇用見込みがあること
④ 学生ではないこと

図1
短時間労働者を被用者保険の適用対象とすべき事業所の企業規模要件

出典:厚労省社会保険適用拡大特設サイト

2. 適用拡大が二以上勤務者の実務に与える影響

適用拡大の法令改正により、二以上勤務者が増加することが予想されます。

社会保険で短時間労働者となる従業員は、週20時間以上の勤務の方です。その方は、複数事業所で勤務し、他社でも社会保険に加入している可能性があります。その場合、二以上勤務者として、それぞれの事業所で被保険者となりますが、保険料については、被保険者が選択した事業所の管轄の保険者(年金事務所・健康保険組合または協会けんぽ、以下、保険者とします)に納付することになります。二以上勤務者に該当した際の具体的な手続きについては、下記をご参照ください。

日本年金機構:複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き

二以上勤務の社会保険の手続きの実務について考えてみましょう。
二以上勤務者の社会保険での手続きについて、どうすべきか迷ってしまうシーンがあります。

① 保険者間で、選択事業所・非選択事業所の情報は共有される?

選択した保険者と非選択の保険者間で共有される情報は、被保険者資格の取得・喪失、選択・非選択の情報のみです。

② 月変、算定、賞与の手続きの際、他の事業所の情報と合算する?

事業所単位で要件に該当するかを判断します。他の事業所での報酬額を合算したり、賞与支払回数を合算したりする必要はありません。
ただし、年間・同月の賞与合計額での合算は、保険者が判断し、標準賞与額を決定します。他の事業所の状況が分からないため、いったん計算した賞与の保険料と異なる場合もあり、被保険者からの徴収額を精算しなければならないケースもあります。

③ 育児休業をしている被保険者の保険料免除は被保険者単位、事業所単位のどちらで判断する?

被保険者単位ではなく、事業所単位で判断します。休業の発生・終了の届出とともに、事由発生日の保険者に選択・非選択の事業所がそれぞれ届け出ます。他の事業所で育児休業をしている情報は、保険者からそれぞれの事業所に情報を共有はしません。
そのため、被保険者単位では、選択事業所と非選択事業所での育児休業の日数を合わせれば、月末以外の日に取得している短期の育児休業で、保険料免除の条件に該当しても、事業所単位では保険料が免除にならないということもあり得ます。(図2参照)

図2
育児休業:月中14日休業した場合の保険料免除期間

図2のように、ケース1では、被保険者単位では、月の途中から、月末前までに14日以上の育児休業をしていますが、事業所単位でみると、A・Bのいずれの事業所でも14日以上の育児休業をしていないため、給与の保険料免除の要件に該当しません。
ケース2では、A事業所では、給与の保険料免除の要件に該当し、A事業所分の保険料のみが免除となります。

また、賞与の保険料免除も事業所単位で判断するため、それぞれの事業所で1か月を超える育児休業を取得している場合に、賞与の保険料が免除となります。(図3参照)
(賞与支給時点で1か月を超える育児休業を取得予定であれば、保険料免除で賞与計算をしますが、実際に1か月を超える育児休業をしなかった場合には、保険料を徴収する必要があります)

図3
育児休業中の保険料免除要件期間

3. 実務担当者としておさえておくべきポイント

2022年4月の法令改正により、会社は、妊娠・出産の申出をした従業員に、個別に育児休業の制度を周知し、育児休業を取得する意向を確認することが義務付けられています。その際、育児休業の制度だけでなく、雇用保険の給付金や社会保険料免除についても説明が必要です。

2章の③で説明したように、短期間の育児休業では、取得のしかたにより、社会保険料が免除にならないケースがあります。自社での育児休業の取得日数が14日以上であることが、給与の保険料免除の要件になることを伝えておかなければなりません。

二以上勤務者の実務では、社会保険の届出だけでなく、従業員への適切な説明も必要となります。関連する制度内容を理解し、従業員への説明や届出ができるようにしておきましょう。

本コラムの著者

北條 孝枝

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス株式会社ブレインコンサルティングオフィス
社会保険労務士 メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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