令和6年の年末調整では、定額減税という今年度限りの特別な実務が発生します。
その他、様式変更等も行われています。
定額減税事務に関する昨年(令和5年)からの変更点と実務ポイントについて解説します。
目次
1. 令和6年 年末調整の主な改正点
令和6年の年末調整で対応が必要な主な改正点は以下のとおりです。
● 定額減税(年調減税事務)
● 年末調整関係書類の様式変更
- 給与所得者の扶養控除(異動)申告書(令和7年分)
- 給与所得者の保険料控除申告書(令和6年分)
- 給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書(令和6年分)
2. 定額減税(年調減税事務)は年末調整の手順のどこで実施する?
定額減税額は、本人の3万円と、その同一生計配偶者・扶養親族1人につき3万円です(社員本人が定額減税の対象外となった場合は、同一生計配偶者・扶養親族がいたとしても年調減税事務は実施しません)。令和6年の年末調整では、各社員から提出された申告書から年末調整時点の状況を確認、年調減税額を計算して、本人の所得税額を上限として所得税額から控除することになります。
年調減税事務は、住宅借入金等特別控除の計算後に実施します。国税庁が提供している源泉徴収簿を利用した計算方法で確認してみましょう。(図1・図2参照)
計算方法①では、定額減税額を所得税額から全額控除できますが、計算方法②では、所得税額が0円となっているため、定額減税額を控除することができません。
控除しきれない額については、源泉徴収票・給与支払報告書に「源泉徴収時所得税減税控除済額×××円、控除外額×××円」というように記載します。
3. 定額減税(年調減税事務)の対象者は?
定額減税の適用を受けることができるのは、令和6年分所得税の納税者である居住者で、合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみでは2,000万円相当)である人です。すでに月次減税を実施しているか否かにかかわらず、12月31日(年末調整実施時)の現況で年調減税を実施します。
合計所得(給与以外の所得を含む)で1,805万円を超えていても扶養控除等申告書を提出している会社での給与収入が2,000万円以下の方は、年末調整の対象ですが、年調減税の対象にはなりません。年末調整の対象者と年調減税の対象者が異なることがありますので注意が必要です。(図3参照)
4. 同一生計配偶者と扶養親族の確認ポイントは?
次に同一生計配偶者と扶養親族についての注意ポイントを確認しておきましょう。同一生計配偶者と扶養親族のうち非居住者は定額減税の対象外となります。所得税の控除対象扶養親族となる親族でも、定額減税では対象外というケースもあります。下記のフローでしっかり確認しておきましょう。(図4参照)
月次減税は、6月1日の現況で実施しているため、6月2日以降に扶養親族の増減(子が生まれた、月次減税額と年調減税額が異なるケースがあります。特に、扶養親族の減少により、年末調整の結果、徴収しなければならない所得税額が発生した場合、社員からの問い合わせが増えることも考えられます。徴収になった理由をしっかり回答できるようにしておくとよいでしょう。
定額減税は、今年度限りの措置となります。対象者としてよいかなど、対応に迷った場合は、国税庁の定額減税特設サイトのQ&Aや電話相談センターを活用し、確認していくようにしましょう。
5. 年末調整関係書類の様式変更は?
税制改正により、年末調整関係書類の様式を簡易にする変更が実施されます。
給与所得者の基礎控除申告書・給与所得者の配偶者控除等申告書(令和6年分)については、定額減税への対応のため、定額減税についての記載欄が追加となり、令和6年度のみの変更になります。その他の様式について、変更点は以下のとおりです。
① 給与所得者の扶養控除(異動)申告書(令和7年分)
以下の場合に、簡易な申告書で提出が可能になりました。
- その年の前年に給与支払者に提出した扶養控除等申告書等に記載した事項から異動がない場合には、その記載すべき事項の記載に代えて、その異動がない旨の記載をする
② 給与所得者の保険料控除申告書(令和6年分)
以下が削除されました。
- 「生命保険料控除」欄の「保険金等の受取人」欄のうちの「あなたとの続柄」欄
- 「地震保険料控除」欄のうちの「保険等の対象となった家屋等に居住又は家財を利用している者等の氏名」に係る「あなたとの続柄」欄
- 「社会保険料控除」欄の「保険料を負担することになっている人」欄のうちの「あなたとの続柄」欄
6. ミスなく漏れなく年末調整を実施するために
年末調整を効率的に実施するためには、社員からの申告内容をいかに正確に、添付書類がないと確認できないような情報があれば、それを漏れなく回収ができるかによります。
難解な申告内容を簡単な質問に回答することで申告できるようなシステムでの回収であれば、社員の負担も減りますし、年調事務担当者にとっても、控除額に影響する扶養対象や定額減税の対象となるかについては、社員の入力内容をチェックし、給与システムに連携することで、正しく計算することができるというメリットがあります。
毎年のことですが、社員からの情報収集や、社員情報等の変更を毎月の事務にプラスして実施しなければなりません。
年末調整を実施する時期から逆算し、早めにスケジュールを立て取り組んでいきたいですね。
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