確定申告は、毎年多くの個人が取り組む必要がある重要な手続きです。企業では年末調整が行われますが、従業員によっては確定申告が必要となるケースが増えています。
確定申告が初めての従業員や、不慣れな従業員にとっては苦手意識や負担が大きくなる可能性があります。
企業の人事・労務担当者にとって、従業員が確定申告をスムーズに行えるようにサポートすることは、業務効率や従業員満足度の向上にもつながります。
本記事では、確定申告が必要なケースや企業として提供できるサポート方法について解説します。
「確定申告は個人の責任」と考えるだけでなく、企業として適切な情報を提供することで、従業員が安心して手続きを進められる環境を整えていきましょう。
目次
1. 確定申告が必要な従業員の主なケース
確定申告が必要になるケースは従業員ごとに異なります。特に、副業を行っている場合や、医療費や寄付金控除を受けたい場合など、年末調整だけではカバーできない場面で申告が必要です。
それぞれのケースに応じた注意点や準備が必要な書類があるので、従業員へのサポート時は伝え漏れが無いよう注意しましょう。
確定申告が必要なケース | 具体例 | ポイント |
---|---|---|
副業収入がある場合 | 副業収入が年間20万円以上の場合 | 年末調整では副業収入が反映されないため、別途申告が必要 |
医療費控除を利用する場合 | 1年間にかかった医療費が自己負担額を超えた場合 | 通院・入院費、薬代などを集計して申告可能(健康保険の補填分は除外) |
ふるさと納税を行った場合 | 寄付金が年間5自治体を超える、もしくはワンストップ特例制度を利用していない場合 | ワンストップ特例制度が使えない場合は、寄付金受領証明書をもとに申告 |
住宅ローン控除初年度の場合 | マイホーム購入に伴う住宅ローン控除を初めて受ける場合 | 初年度のみ確定申告が必要。2年目以降は年末調整で対応可能 |
給与所得以外の所得がある場合 | 不動産収入、株式の配当金、仮想通貨の売却益など | 各所得に応じた計算や証明書類が必要 |
災害による控除を受ける場合 | 災害で損害を受けた場合の雑損控除 | 被災証明書や修繕費の領収書を添付して申告可能 |
給与所得が2か所以上ある場合 | アルバイトを掛け持ちしている場合 | メインの給与以外の収入も申告が必要 |
高額な寄付を行った場合 | 公共団体や特定公益増進法人への寄付金 | 所得控除として計上可能(寄付金受領証明書が必要) |
退職時に多額の退職金を 受け取った場合 |
退職所得の源泉徴収票に基づいて確定申告する必要があるケース | 退職後に収入が変動する場合は特に確認が必要 |
確定申告の必要性を認識していない従業員も少なくありません。人事・労務担当者がこうしたケースを理解し、適切なアドバイスや情報提供を行うことで、従業員が税務処理をスムーズに進められる環境を整えることができるでしょう。
2. 確定申告における株式配当の注意点
株式配当については、配当の種類によって確定申告の要否が異なります。特に、上場株と非上場株で対応が異なるため、注意が必要です。
- 上場株の配当
一般的には源泉徴収が行われており、多くのケースで確定申告は不要です。ただし、総合課税や申告分離課税を選択して税額調整を希望する場合には申告が必要です。 - 非上場株の配当
非上場株の配当については、所得税は源泉徴収で対応できる場合がありますが、住民税については個別に申告が必要です。もし申告を忘れると、後日追加徴収票が届き、余計な手間が発生します。
非上場株を持っている従業員は少ないと思われがちですが、会社の持ち株制度を利用して非上場株を保有しているケースが比較的多いです。この場合、会社から配当金が支払われますが、住民税は個人で申告しないといけないため、対応を怠らないよう注意が必要です。
3. 企業としてのサポート方法
従業員が確定申告をスムーズに行えるよう支援することは、企業にとって重要な取り組みです。
特に副業や医療費控除を必要とする従業員が増えている中で、適切な情報提供や環境整備は従業員の負担軽減につながり、結果的に会社への信頼度向上や生産性向上に寄与します。
企業として行える具体的なサポート方法の一部を以下で解説するので参考にしてみてください。
1. 確定申告に関する情報提供
従業員が手続きを正しく行えるよう、基本情報を網羅した資料を作成しましょう。
例えば、
- 確定申告が必要なケースの一覧を作成:副業収入、医療費控除、ふるさと納税など。
- 手続きの流れ:申告書の準備から提出までの具体的なステップ。
- 必要書類リスト:源泉徴収票、医療費の領収書、寄付金受領証明書など。
情報提供の際、紙媒体だけでなく、社内イントラネットやメール、社内SNSを活用すると、より広範囲に情報を共有できます。
労務担当者が知っておくべき「ふるさと納税」については、以下の記事もあわせてご参照ください。
2. 社内相談窓口や専門家の活用
確定申告シーズンに合わせ、期間限定で相談窓口を設置することで、従業員の疑問を迅速に解消できます。
- 社内での対応:人事・労務担当者が中心となり、簡単な質問に答える。
- 外部専門家の活用:税理士や会計士を招いて、オンラインまたはオフィスで個別相談会を実施する。
たとえば、「医療費控除の対象範囲」や「副業の収入計算」など、具体的なケーススタディを取り上げた相談会は、実務的なメリットが大きいでしょう。
3. 個別フォローアップとリマインド
申告期間が近づいたら、従業員に対してリマインドを行いましょう。
例えば、
- 提出期限や注意事項をメールや掲示板で周知。
- 忘れがちな「寄付金受領証明書」や「源泉徴収票」の準備を促す。
また、申告完了を確認する仕組みを設け、未申告者には個別フォローを行うことで、全従業員が手続きを完了できる環境を整えます。
サポートがもたらすメリット
企業が従業員向けに確定申告のサポートを提供することで、従業員のストレスを軽減し、申告手続きを効率的に進めることができます。
特に税務に不安を抱える従業員にとって、サポートは安心感を与え、企業への信頼感や満足度を高めます。
また、税理士への依頼費用やミスによる追加税金を避けられるほか、申告準備にかかる時間を削減することで、従業員が本来の業務に集中できる環境を提供できます。これにより、企業は生産性向上や従業員の定着率アップにもつながります。
4. 人事・労務担当者が知っておくべきポイント
人事・労務担当者は確定申告に関する基本的なスケジュールの把握や確定申告に必要な書類について知っておきましょう。
確定申告の申告期間は、通常、毎年2月16日から3月15日までとなっています。提出期限を過ぎると延滞税が課されるため、従業員への周知が重要です。
また、医療費控除や寄付金控除など、特別な申告が必要な場合は早めに準備を始めるように促すことも大切です。
令和7年度の申告期間(令和6年分)についてはこちらをご確認ください。
出典:令和6年分 確定申告特集
確定申告に必要な書類の例
確定申告に必要な書類として、代表的なものは以下の通りです
- 源泉徴収票:年間の給与所得額と源泉徴収された税額が記載されている書類
- 医療費領収書:医療費控除を申告する際に必要な、支払った医療費の証明書。
- 寄付金受領証明書:寄付金控除を申告する際に必要な、支払った寄付金の証明書。
これらの書類は、確定申告を行う際に必ず必要になります。従業員が確定申告をする際には、自身の状況に応じて他にも必要な書類がある場合があります。
例えば、副収入がある場合や、不動産所得、株式投資の利益がある場合などは、それぞれの証明書類が求められます。
また、医療費控除や寄付金控除を適用する際には、領収書の保管が重要となるため、日々の支払い時にきちんと保管することを従業員にアドバイスすることも大切です。
まとめ
確定申告は、従業員にとって重要な手続きです。企業がサポートすることで負担を軽減し、手続きのスムーズな進行を支援できます。
特に副業や医療費控除など、年末調整では対応できないケースにおいては、企業が事前に適切な情報提供を行うことが従業員にとって大きな助けとなります。
また、相談窓口や専門家の活用を通じて、具体的な問題解決に向けたサポートを行うことで、従業員の不安を解消し、企業への信頼感を高めることができます。これにより、従業員満足度の向上や生産性の向上が期待できるだけでなく、最終的には企業の定着率向上にも寄与するでしょう。
確定申告に必要な書類を事前に整理し、申告期日までに必要書類を準備するよう従業員に促すことも、円滑な手続きにつながります。人事・労務担当者は、確定申告の基本情報を把握し、従業員が安心して申告を行えるよう適切なサポートを行っていきましょう。
労務担当者が年末調整後に行う業務については、以下の記事もあわせてご参照ください。
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