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第62回
企業担当者必見!
ふるさと納税の制度理解と従業員サポート法

1.ふるさと納税とは何か

ふるさと納税制度は、地方自治体の財政を支援することを目的として2008年に始まった仕組みです。ふるさと納税制度では、自身が応援したい自治体に寄付を行うことで、その金額に応じた税控除を受けることができます。(図1参照)

図1

出典:総務省ふるさと納税ポータルサイト「ふるさと納税のしくみ」

寄付先は、出身地や住民票を置いている市区町村だけでなく、全国どの自治体でも選ぶことが可能です。さらに、寄付を行った自治体からは特産品やサービスがお礼として提供されることも多く、地域の魅力に触れるきっかけにもなります。

法律上、ふるさと納税は「寄付金」として扱われるため、一定の手続きを行えば税金の控除を受けることが可能です。具体的には、寄付金のうち自己負担額2,000円を除いた金額が、所得税や住民税から控除されます。この仕組みを活用することで、納税者は実質的な負担を抑えながら、地方自治体の支援と地域活性化に貢献することができます。

税金が控除されるメカニズム

ふるさと納税では、寄付金の一部が翌年度の住民税や所得税から控除されます。

① 寄付を行う
任意の自治体に寄付を行い、自治体から「寄付金受領証明書」が発行される。

② 税控除の申請
確定申告を行う(主に確定申告対象者向け)
ワンストップ特例制度を利用する(給与所得者向け)

③ 住民税・所得税の控除
翌年度の住民税に反映され、一部は所得税として還付されます。限度額を超えない範囲で自己負担は2,000円のみです。

翌年度の税金の控除を受けるには、②の「税控除の申請」を行う必要があります
企業側で従業員の税控除の申請や手続きを行うのではなく、従業員が税控除の申請をしなければなりません
ふるさと納税をした従業員には、税控除の申請をしているかの声かけを行うと良いでしょう。

ワンストップ特例制度の利用

ワンストップ特例制度は、給与所得者などで確定申告が不要な場合に利用できる簡便な手続きです。この制度を使うと、確定申告をしなくても税控除が適用されます

ワンストップ特例制度は利用条件や申請手続き・期限があるため注意しましょう。

  • 利用条件:寄付先が5自治体以内であること。
  • 申請手続き:寄付後に自治体へ特例申請書を提出する必要があること。
  • 申請期限:翌年1月10日までに自治体が書類を受領する必要がある点を従業員へ案内しておく。

寄付先の自治体にワンストップ特例制度の申請書を提出すると、寄付先の自治体が申告内容を自治体間で共有し、翌年度の住民税から控除されます。

ワンストップ制度の申請書の提出は寄付毎に必要となります。
ただし、複数の自治体に寄付をしたり、年度途中で転居したりした場合などは、ワンストップ特例制度が利用できない場合があるため、注意してください。

2.寄付限度額の計算方法と注意点

ふるさと納税で税控除を受けられる寄付金額には、自己負担額2,000円を除く限度額が設定されています。この限度額は、個人の所得や家族構成(配偶者控除や扶養控除など)によって異なります。

① 給与収入や課税所得を確認
源泉徴収票や給与明細を元に、自身の収入額を把握します。

② 家族構成を考慮
配偶者がいる場合や扶養する子どもの人数によって、控除額が変わります。

③ ふるさと納税シミュレーターを活用
各自治体やポータルサイトが提供する「寄付金限度額シミュレーター」を利用すると、簡単に目安が分かります。

計算には税率や控除額が関係するため、正確な限度額を把握するにはシミュレーションツールの活用が推奨されます。
人事・労務担当者が従業員に説明する際にも、ツールの使い方を案内すると理解がスムーズになります。

限度額を超えた場合の影響

ふるさと納税の寄付金が限度額を超えた場合、その超過分は税控除の対象外となり、自己負担額が増えることになります。具体的には以下のような影響があります。

① 控除額の上限を超えた寄付は自己負担
超過した寄付金は、全額が自己負担となり、住民税や所得税の控除には反映されません。

② 経済的な負担の増加
寄付金が多いほど返礼品は豪華になりますが、控除が受けられないと実質的なコストが高くなる可能性があります。

③ 従業員への説明の重要性
特にワンストップ特例制度を利用している場合、控除限度額が分からず寄付をし過ぎるケースがあります。限度額シミュレーターの利用や、寄付額の確認を従業員に促すことが重要です。

例:
給与収入500万円の人が、限度額の15万円を超えて20万円寄付した場合、超過した5万円分は控除されず、全額自己負担になります。

3.減税効果の確認方法

ふるさと納税による税控除が適切に反映されているかどうかは、年末調整後に発行される「源泉徴収票」で確認ができます(表1参照)。
表1

控除が反映される項目 詳細
所得控除額の合計額 所得税の控除対象として、給与所得控除や社会保険料控除など他の控除と合わせて記載されている
住民税控除額 翌年度の住民税に反映される金額が、
「寄付金税額控除(基本控除)」
「寄付金税額控除(特例控除)」
住民税控除として記載されている

所得税控除の合計額と住民税控除額の合計が、ふるさと納税による住民税控除の金額となります。

確認するべきポイントとしては、「源泉徴収票の控除額に誤りがないか」「控除が全額反映されているか」の2点です。

特にワンストップ特例制度を利用している場合、自治体への申請が正確でないと控除が反映されない可能性があります。反映されているかの確認は寄付金受領証明書と年末調整後に発行される「源泉徴収票」の控除額が「所得控除の額の合計額」に含まれていることを照らし合わせてもらう、また住民税控除として翌年度の住民税通知書にも反映されていることを従業員に案内していただくとよいでしょう。

また、控除額が自己負担額(2,000円)を超えていない場合、申告漏れや限度額超過の可能性があるため、控除額は必ず目を通し確認をしておくことが大切です。

万が一控除額が反映されていなかったり、減税が適用されていなかったりする場合は、確定申告を行い控除の申請を行いましょう。

4.企業側が知っておくべきこと

限度額を超えた場合の対応
ふるさと納税には税控除が適用される上限額があるため、従業員が限度額を超えて寄付をした場合の影響について説明できるようにしておきましょう。

  • 限度額を超えた寄付は控除対象外となり、実質的な自己負担額が増えること。
  • 限度額は所得や家族構成によって異なるため、事前にシミュレーションを行うことを勧めましょう。

源泉徴収票での確認方法
ふるさと納税の税控除が適切に反映されているか、年末調整後に発行される「源泉徴収票」で確認する方法を説明できるようにしましょう。

  • 控除額が「所得控除の額の合計額」に含まれていること。
  • 住民税控除として翌年度の住民税通知書にも反映されることを従業員に案内し、控除漏れがないようサポートをしましょう。

ワンストップ特例制度の概要と適用条件

  • 従業員が確定申告を行わずにふるさと納税の税控除を受けられる「ワンストップ特例制度」についての知識を持っておきましょう。
  • 制度を利用していても、自治体への書類提出が完了していない場合には、確定申告が必要となるため注意が必要です。

ふるさと納税にむけたサポート体制
人事・労務担当者が特に気をつけるべき点は、従業員が正確に手続きを行えるよう情報提供や相談窓口を設けることです。例えば、以下の取り組みが考えられます。

  • ふるさと納税の利用が最も多い時期である年末調整時にふるさと納税に関するFAQを配布する。
  • 確定申告が必要な場合の手順や必要書類について説明会を実施する。
  • ワンストップ特例申請漏れに気づいた従業員へ確定申告を案内する。

制度の周知による従業員満足度の向上
ふるさと納税の制度を正しく周知することで、従業員が地域貢献や税制優遇を活用しやすくなり、福利厚生の一環としての満足度向上が期待できます。特に、年末調整や確定申告に関する適切なサポートは、企業への信頼感にもつながります。

人事・労務担当者は、ふるさと納税の基本知識から手続きの具体例まで理解し、従業員へ適切なサポートができるよう整えておくと良いでしょう。

まとめ

以上、ふるさと納税制度の概要と税控除の仕組み、寄付限度額の計算方法、ならびに企業側が知っておくべきポイントについて解説しました。

ふるさと納税は、従業員が地域貢献を実感できるだけでなく、税制優遇の恩恵を受けられる仕組みです。ただし、適切な手続きや限度額の把握が重要であり、控除が反映されないリスクを避けるためのサポートが求められます

人事・労務担当者としては、年末調整や確定申告の情報提供を行い、従業員の理解を深めることで、従業員へより高いサポートができます。

ふるさと納税をきっかけに、社員と企業がともに地域社会の活性化に寄与する姿勢を育む取り組みを進めていきましょう。

本コラムの著者

山下 うみ

フリーライター

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