年末調整は、従業員の税額を正確に算出するために重要な手続きですが、調整後に新たな給与の変動や状況の変化があった場合、再調整が必要になることがあります。
年末再調整を適切に行うことで、従業員に誤った税額が課されることを防ぎ、会社としても法令を遵守することができます。
本コラムでは、年末再調整が必要になる主なケースと、手続きの進め方について詳しく解説します。
そもそも、「年末調整って何?」という方は、以下の記事もご参照ください。
目次
1.年末再調整とは?
年末再調整とは、年末調整が完了した後に発生した新たな情報や異動事項を反映し、税額や控除額を修正する作業を指します。
たとえば、年内に追加の給与支給があった場合や扶養親族の変更、保険料の支払状況が更新された場合などが該当します。年末再調整により、最終的な税額が正確に算出され、従業員の税負担や法定書類への記載内容が適正化されるのです。
年末再調整は、翌年1月31日までに「給与所得の源泉徴収票」を交付する前に行うことができます。翌年1月31日以降、または源泉徴収票を発行した後は年末再調整ができません。もし提出期限が遅れ、源泉徴収票を発行した後に修正が必要な場合は、たとえ会社側のミスであったとしても年末再調整は不可能となります。
提出期限が遅れた場合、従業員には翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行ってもらうように案内することが必要です。
企業側は、年末再調整の提出期限の遅れが起こらないようスケジュール管理を行いましょう。
2.再調整が必要になる主なケース
年末調整が完了した後、従業員の給与や状況に新たな変動が生じた場合、年末再調整が必要になることがあります。
年末再調整は、給与の追加支給や扶養親族の変更、保険料の支払い変更など、さまざまな理由で行われます。これにより、最終的な税額や控除額が正確に反映され、従業員にとって不利な税負担を防ぐことができます。
年末再調整が必要なケース | 年末調整のやり直しが必要な場合 | 注意事項 |
---|---|---|
⑴ 年末調整後に給与の追加払があった場合 | 本年中に追加支給が発生した場合、追加分を含めてやり直しを行う。 | 翌年の改定に伴い本年分へ遡及して支給される差額については、翌年分の所得となるため、本年分の年末調整のやり直しは不要。 |
⑵ 年末調整後に扶養親族等の数が異動した場合 | 扶養親族の減少(例: 子の結婚)、障害者認定などが発生した場合、異動後の内容に基づいて再調整を行う。 | 異動事項の申告を受けることが条件。 |
⑶ 配偶者控除又は配偶者特別控除の所得見積額に差額が生じた場合 | 配偶者控除または特別控除額が変動する場合、確定した所得金額を基に再調整を行う。 | 配偶者または受給者本人の所得見積額と確定額との差額が対象。 |
⑷ 保険料を支払った場合 | イ: 生命保険料・地震保険料などを支払った場合、その控除額を再計算してやり直しを行う。 ロ: 証明書類が未提出の場合、控除額を再計算してやり直す。 |
保険料控除申告書を提出する必要がある。 証明書類が期限までに提出されない場合、該当保険料を除外して再調整。不足額を徴収することになる。 |
⑸ 住宅借入金等特別控除申告書の提出があった場合 | 申告書の内容に基づいて控除を再計算し、やり直しを行う。 | 申告書が必要。 |
年末再調整を適切に行うことで、従業員に誤った税額が課されることを防ぎ、会社としても法令遵守を果たすことができます。各ケースにおいて、年末調整の締め切りや再調整ができる期限に留意し、必要な手続きを確実に行うよう心がけましょう。
3.法定調書合計表の作成と注意点
法定調書合計表は、年間の給与や源泉徴収税額の総額を取りまとめ、税務署に報告するための重要な書類です。
提出期限は翌年1月31日までとされており、源泉徴収簿を元に正確に作成する必要があります。
特に年末再調整によって変更された給与総額や税額を適切に反映することが求められているため、追加支給や控除の修正内容が過不足なく反映されているかを確認し、添付書類(支払調書など)を漏れなく準備することが重要です。
また、税務署の最新の指導内容を確認し、ミスを防ぐことも欠かせません。この表を正確に作成し、期限内に提出することで、適切な税務処理を完了できます。
法定調書合計表作成時の注意点
源泉徴収簿との照合
法定調書合計表を作成する際には、源泉徴収簿の内容と照合し、入力ミスや金額のズレを防ぎます。特に年末再調整後の修正内容は、正確に反映することが重要です。
添付書類の確認
提出時には、支払調書など必要な書類を漏れなく準備してください。特に高額な報酬や退職所得に関する支払調書は、法定調書合計表とともに必須の添付資料となります。
税務署の指導内容の確認
税務署からの最新の指導内容や提出要件を事前に確認することで、手戻りを防ぐことができます。
法定調書合計表は、企業の税務処理の正確性を示す重要な資料です。特に年末再調整後のデータを適切に反映させること、添付書類を漏れなく準備すること、そして期限内提出を徹底しなければなりません。
法定調書合計表の提出時に源泉徴収票の添付が必要となる方については、以下の記事もあわせてご参照ください。
4.給与支払報告書の作成・提出
給与支払報告書は、地方自治体に提出する従業員の給与情報を記載した書類で、住民税の課税根拠となる資料で従業員の住所地の自治体に提出しなければなりません。
企業は従業員の年間給与総額や源泉徴収税額を基に、正確な情報を報告する必要があります。
また、給与支払報告書の提出期限は、法定調書合計表と同様に翌年1月31日までに提出が必要です。年末再調整によって給与額や税額に変更があった場合、その内容を給与支払報告書へ反映が必要となり、再調整後の追加支給や控除の変更が反映されていないと、住民税額に誤りが生じる可能性があります。
適切な処理を行わなかった場合、従業員に過剰な税額が課されることや、不足分の徴収が発生するリスクがあるため必ず給与支払報告書の作成・提出の漏れがないようにしましょう。
作成時には、従業員の住所変更があった場合、その変更内容を正確に反映することが必要です。住所地によって住民税の税率や徴収方法が異なるため、誤った自治体に報告しないように注意が求められます。
また、再調整後に給与や控除に変更があった場合は、関連書類(給与明細書や源泉徴収簿)を更新し、正確な情報を記載するようにしましょう。
給与支払報告書を正確に作成し、提出期限内に提出することで、住民税の計算が適切に行われ、税務上のトラブルを防ぐことができます。
5.年末再調整と提出手続きのスムーズな進め方
年末再調整と提出手続きは、年度末に向けた重要な業務ですが、スムーズに進めるためには計画的なスケジュール管理と適切なツールの活用が欠かせません。
ポイントを抑えることで、手続きミスや提出漏れを防ぎ、効率的に進めることができます。
スケジュール管理
年末再調整から提出手続きまでの流れを事前に明確にスケジュール化することが、業務をスムーズに進めるポイントです。
例えば、年末調整後の再調整作業をいつまでに終わらせ、法定調書合計表や給与支払報告書をいつ提出するかを事前に確認しておきます。スケジュールを管理することで、提出期限を守りつつ、余裕をもって業務に取り組むことができます。また、進捗状況を定期的に確認し、適切なタイミングで次の作業に移れるようにしておきましょう。
ツール活用
給与計算システムや税務ソフトなどのツールを活用することで、手続きの効率化を図ることができます。
これらのツールは、給与計算や源泉徴収税額の自動計算をサポートし、再調整の際の修正作業も迅速に行うことができるものが多く、さらに、法定調書合計表や給与支払報告書などの必要書類の作成を自動化し、誤入力や漏れを減らすことができます。
ソフトウェアの最新バージョンを常に確認し、税制改正に対応したツールを利用することも大切です。
「Charlotte 年末調整」なら、年末の忙しい時期に作業負担が大きい年末調整業務でも、従業員の間違いを減らし、担当者の管理・チェック作業の負担が削減できます。
チェック体制の構築
年末調整や提出手続きには、細かな記載ミスや提出漏れがつきものです。そのため、ダブルチェック体制を構築し、重要な書類を確認する際には複数の担当者によるチェックを行うことが重要です。
記載内容に誤りがないか、提出書類に漏れがないかを慎重に確認しましょう。例えば、法定調書合計表や給与支払報告書を作成後、同僚や上司に確認してもらうことで、ミスを防ぐことができます。再調整後の給与や控除内容が正確に反映されているかも、確認のポイントです。
まとめ
以上、年末再調整について解説しました。
年末再調整は、給与支給後に発生した変更点を反映させ、正確な税額を算出するために重要な手続きです。
企業は再調整の期限を守り、スムーズに手続きを進めるための計画的なスケジュール管理が求められます。
再調整が必要となる主なケースには、追加給与の支給や扶養親族の変更、保険料の支払調整や控除額の変動などがあります。
また、法定調書合計表や給与支払報告書を作成・提出する際は、再調整後の給与や税額の変更が正確に反映されるよう、確認作業を怠らず、提出期限内に確実に対応することが重要です。これにより、税務処理のミスや従業員への不利益を防ぎ、企業の法令遵守を確保できます。
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