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【2026年8月1日施行】育児休業等給付の実務手続きはどう変わる?人事労務担当者が押さえるべき「3つの見直しポイント」と準備

ここがポイント!

  • 出生時育児休業給付金の賃金申告が、休業期間を対象とした賃金から支払日基準の判定ルールへ変更される。
  • 出生後休業支援給付金について、配偶者確認手続きで母子健康手帳の写しにより確認書類が緩和される。
  • 育児時短就業給付では同一の子での再提出不要や証明書の記載省略など、要件確認の事務簡素化が行われる。

育児休業等給付をめぐっては、近年の法改正や新給付制度(出生後休業支援給付や育児時短就業給付など)の創設に伴い、実務上の運用や申請作業がより複雑化しています。そうした中、厚生労働省は2026年(令和8年)8月1日より、育児休業等給付の申請手続きをよりスムーズに行えるよう、事務取扱いの一部を見直すこととなりました。

今回の見直しは、「添付書類の削減」や「手続きの早期化」といった利便性向上を目的としています。しかし、実務の現場においては、一部の判定ルールの変更に伴い新たな運用の混乱が生じる懸念もあります。本コラムでは、人事労務担当者が特に注意すべき変更点と実務上の留意点を解説します。

ポイント1:出生時育児休業給付金の賃金申告(「対象期間」から「支払日基準」への変更)

見直し項目の中で、実務担当者が申告書を作成するうえで迷うことが懸念されるのが「出生時育児休業(産後パパ育休)における賃金の申告ルール」です。

1. 変更の概要

これまでは出生時育児休業期間中を対象とした賃金は、「出生時育児休業期間を対象として支払われた賃金(締日ベース)」を申告していました。これが2026年8月1日以降に開始する休業からは、「出生時育児休業期間中に『支払日』のある賃金(支給日基準)」へと変更されます。

申請の早期化を狙った変更ですが、「いつの働きの給料か」ではなく「休業期間中に給与支給日が入っているかどうか」で判断するため、自社の給与締日・支払日のタイミングによって申告対象となる賃金が変わり、判断に迷うケースが増加すると予想されます。

2. ハローワーク資料に見る「賃金支払日」の判定パターン

ハローワークが作成した留意点資料では、休業期間と給与支払日の関係によって、申告に含めるべきか否かが具体的に例示されています。自社で出生時育児休業を取得し、給付金の申請をする対象従業員が、以下のどのパターンに当てはまるか確認する必要があります。

【パターン1】休業期間中に支払日が含まれない場合(図例示1・4)
出生時育児休業期間中(分割取得時の間の就労期間を含む)に給与支払日が含まれていない場合、その休業対象期間に対応する賃金であっても申告する賃金には含めません。

【パターン2】出生時育児休業期間内に支払日がある場合(図例示2)
休業期間内(または分割取得した間の就労期間)に給与の支払日がある場合は、出生時育児休業の賃金として申告します。

【パターン3】本体育休期間中に支払日がある場合(図例示3)
出生時育児休業期間を対象とした賃金であっても、その支払日が「本体育休(通常の育児休業)」の期間中にある場合は、出生時ではなく「本体育休の賃金」として申告します。


出典:厚生労働省 東京労働局「令和8年8月1日から育児休業給付の申請手続きを見直します」

このように、「どの休業の給付金申告に含めるか」が実際の就労期間ではなく「支払日がどの休業期間中にあるか」で決まるため、従来の手続きに慣れた担当者ほど混乱しやすいポイントです。社内での判定フローを事前に整理しておくことが必要です。

ポイント2:出生後休業支援給付金の確認書類の緩和

両親がともに育児休業を取得する場合などに支給される「出生後休業支援給付金」について、配偶者確認の手続きが一部簡素化されます。

1. 変更内容

母親が本給付金を申請する際、配偶者の確認書類として、父親からの申請と同様に「母子健康手帳の写し(出生済証明のページ。配偶者の氏名・生年月日が記載されたもの)」の提出で対応可能となります。

2. 実務上のメリット

これまでは世帯全員の住民票など追加の証明書類を求める場面がありましたが、母子健康手帳の写しで確認可能となるため、従業員の書類準備負担や人事担当者の確認漏れ・再提出リスクを軽減できます。

ただし、母子健康手帳の写しのみで確認が完了しない場合には、従来通り世帯全員が記載された住民票等の提出が求められることがあります。

ポイント3:育児時短就業給付の要件確認・事務簡素化

育児時短就業給付の支給要件確認においても、実務負担を減らす複数の緩和策・計算方法の見直しが行われます。

1. 確認書類および記載事項の省略

・同一の子での再提出不要
すでに同一の子について育児休業給付を受給している場合、改めて母子健康手帳の写し等を提出する必要はありません。

・賃金証明書の一部内容の記載省略
育児休業終了後、同一の子について初回育児時短就業を開始した際、休業開始から時短就業開始までの間に賃金支払いがないことを確認できれば、賃金証明書の「⑨欄・⑩欄・⑪欄(育児休業開始前の賃金支払状況)」の記載を省略できます。

・照合省略対象事業主の拡大
照合省略対象事業主については、時短前後の週所定労働時間の確認書類に関しても、関係書類との照合が省略できるようになります。

2. 各種労働時間制度における「週所定労働時間」の計算方法見直し

各種変形労働時間制等の適用を受ける従業員について、以下の通り週所定労働時間の計算ルールが一部整理・修正されます。

労働時間制度 見直し後の週所定労働時間の計算方法
フレックスタイム制 清算期間における総労働時間の算出基礎となった1日の労働時間 × 週所定勤務日数
変形労働時間制 対象期間における1週間の平均労働時間
シフト制 支給対象月に支払われた賃金の算定対象期間における実際の労働時間を、該当期間の週数(暦日数 ÷ 7日)で除して計算
(短縮前)育児時短就業を開始した日前の3か月間における実際の労働時間
(短縮後)支給対象月に支払われた賃金の算定対象期間における実際の労働時間
※賃金が月末締め、翌月支払いの場合は支給対象月における実際の労働時間

シフト制に関しては、従来の「時短前3か月間の実績」から「支給対象月(月末締め翌月支払いの場合はその支給対象月)の算定対象期間の実績」へと見直されています。また、手続きの円滑化を図るため「育児時短就業期間等に係る証明書(様式例)」が改訂され、開始日や週所定労働時間の確認書類として活用可能になります。

まとめ:人事労務担当者がチェックすべきこと

今回の手続き見直し(2026.8.1~)は、「添付書類の削減」「申請手続きの早期化」「記載負担の軽減」を目指した制度改善です。しかし、出生時育児休業の賃金取扱いのように、実務上のミスや判断の混乱を招きやすい変更点も含まれています。

人事労務担当者としては、以下のポイントを整理しておきましょう。

1. 賃金申告ルールの切り替えチェック
ハローワークの例示資料などを参考に、自社の給与締め日・支払日パターンごとの「申告対象/対象外」の切り分け表をあらかじめ作成しておく。
人事給与システムの設定変更は不要となるケースが多い一方、給与支払日を基準とした申告対象の判定方法については、社内マニュアルやチェックリストの見直しが必要となる場合があります。

2. 申請書類・添付書類のアップデート
様式の改訂(育児時短就業期間等に係る証明書など)を確認し、社内マニュアルや提出用チェックリストを更新する。

3. 従業員への案内見直し
出生後休業支援給付金の申請時に「母子手帳の写し」で手続可能となる旨など、従業員への案内アナウンスを修正する。

制度の利便性が向上する一方で、初期の運用ミスが懸念されます。変更内容を正確に把握し、スムーズな手続きを行えるよう備えていきましょう。

本コラムの著者

塩坂 うみ

フリーライター

社会保険関連や企業の人事・労務向けのコラムを中心に執筆するフリーライター。美容関連やクリニック紹介、マニュアル作成などの執筆経験を活かし、読者が理解しやすい、実務に即した記事づくりを心がけている

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