異次元の少子化対策の一つとして、「共働き・共育て」の推進のため、育児介護休業法、雇用保険法、次世代育成対策推進法の三法が改正されました。
そのうち雇用保険では、2025年4月から新たに「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」の2つが創設されることとなりました。経過措置や支給申請方法について、前後編で解説しています。
後編では、それぞれの給付金の申請方法等について解説します。(2024年12月23日の情報にもとづきます)
前編については、以下からご覧ください。
1. 出生後休業支援給付金の申請
出生後休業支援給付金は、原則として育児休業給付金または出生時育児休業(産後パパ育休)給付金と併せて申請しなければならないことになっています。
例外としては、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の支給申請後に、配偶者が14日以上の育児休業(出生時育児休業)をしたことで、給付条件を満たし、出生後休業支援給付金を受給できるようになったケースです。その場合は、出生後休業支援給付金を単独で申請できることになっています。
給付条件を確認しておきましょう。
- 子の出生直後の一定期間(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、雇用保険被保険者とその配偶者がともに通算して14日以上の育児休業を取得すること
- 雇用保険被保険者は、出生後休業を開始した日前2年間にみなし被保険者期間が12か月以上あること
出生後休業支援給付金は、図1のように、育児休業給付金の初回の申請または出生時育児休業給付金の申請の時期にしている育児休業または出生時育児休業について給付額を上乗せするものです。そのため、育児休業給付金または出生時育児休業給付金の申請をすれば、出生後休業支援給付金の申請を別にしなくても良いということで、「原則として」「併せて」申請することになっています。
申請書は、現行の「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金」と「育児休業給付受給資格確認票・出生時育児休業給付金支給申請書」に出生後休業支援給付金の申請に必要な項目を追加する様式に変更されます。なお、初回申請の場合は、「休業開始時賃金月額証明書」も併せて提出します。(図1参照)
(1)追加される項目
給付条件のひとつに「雇用保険被保険者とその配偶者がともに通算して14日以上の育児休業を取得すること」があります。現行の配偶者の被保険者番号と併せて、以下の項目の確認が追加されます。
- 配偶者の育児休業開始年月日
また、配偶者がいない場合や、配偶者が雇用以外の働き方をしている場合等には、配偶者が育児休業をしているという条件は問わないことになっているため、該当する場合には、配偶者の状態についても届出の必要があります。
具体的には、以下の項目から選択することになります。(文言については、変更される可能性があります)
- 配偶者がいない
- 配偶者が被保険者の子と法律上の親子関係がない
- 被保険者が配偶者から暴力を受け別居中
- 配偶者が無業者
- 配偶者が自営業者やフリーランスなど雇用される労働者でない
- 配偶者が産後休業中
- 上記以外の理由で配偶者が育児休業をすることができない※
※ 有期労働者で育児休業ができない、労使協定で育児休業ができない者となっているケース等
(2)申請期限
2025年4月1日の改正により、出生時育児休業給付金について、休業終了日の翌日以後に申請できるようになり、出生後休業給付金も、該当する休業の翌日以後から、子の出生日(出産予定日前に出生した場合は出産予定日)から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までとなります。
例1)
出産予定日3/28、出生日4/1、出生時育児休業を3/28~4/24まで(28日間)取得
→ 4/25から7/31までが支給申請が受け付けられる
例2)
出生日3/28、出産予定日4/1、出生時育児休業を3/28~4/7と4/18~4/27まで(21日間)取得
→ 4/28から7/31までが支給申請が受け付けられる
(3)添付書類
添付書類については、今後、ケース別に示される予定ですが、厚労省令では、以下のように定められています。
- 配偶者が給付対象となる出生後休業をしたことを証明する書類
- 配偶者が給付対象となる出生後休業の取得を要件としない場合に該当することを証明できる書類
2. 育児時短就業給付金の申請
育児時短就業給付金は、これまでにない新たな手続きとなります。高年齢雇用継続給付金の手続きをイメージすると分かりやすいです。
給付条件等を確認しておきましょう。
- 育児時短勤務開始日前2年間にみなし被保険者期間(時短勤務開始日を被保険者でなくなった日とみなして計算される被保険者期間に相当する期間)が12か月以上あること、または、育児休業給付に該当する育児休業終了後に引き続き、育児時短就業を開始したこと
- 育児時短就業をする期間(初日と終了日)を明らかにして事業主に申し出た時短就業であること
- 2歳未満の子を養育するための時短勤務中の賃金が、時短勤務開始前の賃金に比べて減少した場合にその月に支払われた賃金の10%が受給できる
(支払われた賃金が90%以上の場合は、逓減し、時短勤務開始前の賃金額は超えないようにする)
(1)申請書類
申請に必要な書類は、以下のとおりです。
- 初回申請
「育児時短就業給付受給資格確認票・(初回)育児時短就業給付金申請書」
「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」(「休業開始時賃金月額証明書」と兼用様式) - 2回目以降
「育児時短就業給付金支給申請書」
育児休業から復帰し、育児時短就業をするケースも考えられます。育児休業終了日と育児時短就業開始日の間が14日以内であれば、「所定労働時間短縮開始時賃金証明書」の提出を省略することが可能です。育児休業給付金の申請のために、「休業開始時賃金月額証明書」を既に提出しており、基準となる賃金額が確定しているからです。
同一の子についての育児時短就業であれば、育児時短就業を終了しない限り、2歳までは、支給・不支給になる月があっても、賃金証明書を含む初回申請は1度のみになります。
(2)申請期限
初回申請は、支給対象月の初日から起算して4か月以内です。2回目以降は、ハローワークから定められた期間内に2か月に1度の申請になります。
(3)添付書類
賃金台帳(休業開始前のみなし被保険者期間に12か月以上・支給対象月に支払われた賃金額が分かるもの)、母子手帳等、労働者名簿等、1週間の所定労働時間が短縮されている事実を証明する書類
以上、新たな雇用保険の給付金の申請手続きについて解説しました。
今後も厚労省からケース別のFAQ等の資料が公表される予定になっています。情報収集し、対象となる従業員に案内できるように準備をしておきましょう。
育児介護休業法については以下の記事もあわせてご参照ください。
「Charlotte(シャーロット)」とは?
「Charlotte」は、人事給与システムのデータを活かし、幅広い電子申請(146手続き)に対応。26の人事給与系システムとの連携実績があり、複数のソフトを介さず1つのシステムで行えるSaaS型クラウドサービスです。
●社会保険、雇用保険、労働保険の電子申請 ●36協定や就業規則変更などの労使手続き ●健康保険組合に向けた手続き ●労務担当者が対応する税申告「e-Tax」「eLTAX」に関する申告
さらにオプションとの組み合わせで公文書や離職票、支払い決定通知書を従業員に自動で届けるサービスなど、労務DXの実現により労務ご担当者様の業務負担を軽減します。