育児休業を取得する従業員を支援するうえで欠かせないのが「育児休業給付金」です。
申請の流れや支給要件を正しく理解し、スムーズに手続きを進めることは、人事・労務担当者の重要な役割の一つです。
2022年以降の法改正により、分割取得や電子申請など制度は大きく変化しています。
本記事では、企業側が押さえておくべき最新の申請手続き、延長・分割対応、そして電子申請のポイントをわかりやすく解説します。
目次
1. 育児休業給付金とは何か-企業が押さえておくべき基礎知識
「育児休業給付金」とは、雇用保険の被保険者が、子どもを養育するために育児休業を取得した際に、休業中の収入を補填するため国から支給される給付金です。
企業側にとって把握すべきポイントとしては、以下が挙げられます。
- 対象従業員が「雇用保険の被保険者」であること(自営業・フリーランスは対象外)
- 育児休業制度自体は、企業が就業規則等で制度を整備する必要があり、企業として周知・支援体制を整えておくべきであること
- 休業中は通常の賃金が支払われない、もしくは大幅に減少する可能性があるため、給付金を通じて休業取得を支援する観点も人事・労務の重要な責任となります。
つまり、企業側としては「育児休業給付金があるから安心して休業を支援できる」という理解だけでなく、制度要件・申請手続き・社内整備という3つの側面を押さえておくことが重要です。
2. 支給対象者・支給要件の最新動向
育児休業給付金を支給するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
改正内容も含め、特に企業が押さえておくべき点を整理します。
支給要件の基本
- 育児休業を開始する前日の時点で雇用保険の被保険者であること。
- 休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が“11日以上ある月”が12ヶ月以上あること、または賃金支払基礎日数が11日未満の月に「80時間以上勤務」等の代替要件を満たす月が12ヶ月以上あること。
- 休業中、休業開始前賃金の8割以上の支払いがないこと。
- 育児休業終了後に復職する意思があるとみられること。
制度改正に伴う変更ポイント
- 2022年4月の法改正では、企業に対して「育児休業を取得しやすい雇用環境整備」「妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別周知・意向確認」の義務化が行われました。
- 2022年10月からは、いわゆる「産後パパ育休(出生時育児休業給付金対象となる制度)」や育休の分割取得が制度として整備されました。
- 2025年4月からは、両親がともに一定期間育児休業を取得した場合に、給付金が上乗せ支給される制度「出生後休業支援給付金」が創設されました。
企業としては、従業員からの育児休業・給付金申請の相談に備え、このような制度改正を把握し、自社の就業規則・周知資料・社内フローを更新しておく必要があります。
出生後休業支援給付金の制度内容や申請方法については、以下の記事もあわせてご参照ください。
3. 手続きの流れ:企業側の対応ポイント
従業員が育児休業給付金を申請する際、企業側にも対応すべき実務があります。
以下の流れを押さえておきましょう。
手続きの基本流れ
- 従業員から育児休業の申出を受ける。休業開始日の1ヶ月前(あるいは法令・就業規則で定めた期限)までに申請書類提出を促します。
- 企業は就業規則等に基づいて休業を認め、給与支払状況・保険被保険者等の確認を行います。
- 企業は「育児休業給付金支給申請書」などの所定の書類を作成し、ハローワークなどへ提出します。支給が決定されると、給付金が従業員へ支給される流れです。
- 休業が終了した後、従業員が復職する予定であるか等、フォロー体制を整えておくことが望まれます。
企業側が留意すべきポイント
- 書類作成・提出期限を守ること:給付金申請が遅延すると、従業員の手元に給付金が届かず、企業イメージにも影響します。
- 社内制度・就業規則の整備:育児休業・給付金に関する就業規則を明確にしておくことで、従業員からの申出にもスムーズに対応できます。
- 電子申請・デジタル手続きの導入検討:近年、手続きのオンライン化・電子化が進んでおり、企業側でもシステム対応を検討しておくと効率化につながります。
- 周知・相談体制の整備:常時雇用する労働者数が301人以上の企業では、男性の育児休業取得率などの公表が義務化されています。
このように、企業側は「手続き担当」「制度整備担当」「社内周知担当」という視点で体制を整えることが、給付金申請のトラブルを防ぎ、従業員の安心した育休取得にもつながります。
4. 2回目以降の申請・分割取得・延長の対応
育児休業給付金の申請は「初回だけ」で完結するものではなく、2回目以降の申請、分割取得、延長といったケースも想定されます。
このようなケースに対して「企業側はどう対応するべきなのか」をしっかり整理しておきましょう。
- 分割取得・2回目以降の申請
- 延長の対応
原則、育児休業給付金の支給期間は子どもが1歳になるまでですが、保育所等への入所ができないなどの条件を満たせば、最長で子どもが2歳になる前日まで延長できる制度があります。
また、2025年4月からの改正では、保育所等への利用申し込みを行ったことの証明となる書類(市区町村の申込書の写し)や、延長理由を明らかにする延長事由認定申告書の添付が新たに必要となっており、延長手続きにおける確認事項が追加され、実務上の審査もより厳格化されています。
企業側としては、延長を希望する従業員が出た際に「保育所入所不可証明」など、必要書類や手続き期限をあらかじめ整理しておくことが望ましいです。
法改正により、取得を分割できる制度が整備されました。
たとえば、2022年10月以降、「通常の育児休業」とは別に「産後パパ育休(出生時育児休業)」の分割取得が可能となり、さらに通常の育児休業も2回に分けて取得できるようになっています。
企業としては、従業員が複数回に分けて取得する可能性を想定し、就業規則や申出様式を分割対応可能なものとして準備しておくと良いでしょう。
2025年4月施行の改正内容と企業の対応策については、以下の記事もあわせてご参照ください。
5. 企業の運用体制・対応ポイント
育児休業給付金の申請は、これまで紙の書類を提出して行うのが一般的でしたが、現在は電子申請での手続きにも対応しています。
電子申請を利用する際は、まず雇用保険の適用事業所であること、および電子申請対応の環境(e-Govや電子証明書など)が整っていることが前提となります。
手続きに必要な書類は紙の場合と基本的に同じで、従業員本人の「育児休業開始時賃金月額証明書」や「休業開始日・終了日の確認書類」などを添付して申請します。
電子申請を導入することで、ハローワークへの持参や郵送の手間が省けるほか、申請状況の確認や修正もオンライン上で完結できる点が大きなメリットです。
ただし、データの入力ミスや添付書類の不備があると差し戻しになることもあるため、提出前のチェック体制を整えておくことが重要です。
Charlotte(シャーロット)を利用すれば、育児休業給付金申請などの申請手続きの効率化が図れ、更に担当者の書類回収や決定通知書などの郵送コストを大幅に削減できるようになりました。
このように、電子申請の仕組みをうまく活用すれば、育児休業給付金の申請業務をより効率的に進めることができます。
まとめ
育児休業給付金の制度は、従業員の生活を支えると同時に、企業の育児支援体制を示す大切な仕組みです。
申請手続きや要件を正しく理解し、延長・分割取得にも柔軟に対応できる体制を整えることで、従業員が安心して育児と仕事を両立できる職場づくりにつながります。
また、電子申請の導入は業務効率化にも大きな効果を発揮します。
今後も法改正の動向を注視しながら、自社のルールやフローをアップデートし、持続的に「育休を取りやすい環境」を整えていくことが求められます。
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