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2026年4月、非課税枠が改正に
非課税通勤費・食事手当、現物給与はどう変わる?

公開日:2026年3月10日

企業のHR部門・給与計算担当者の皆様にとって、2026年(令和8年)4月は年度初めから人事制度にも関わる改正があります。

今回の改正は、「食事手当の非課税枠の大幅拡大」という単なる金額の変更にとどまらず、「通勤手当における駐車場代の非課税化」というこれまでになかった内容が含まれています。さらに、社会保険における現物給与の算定基準も変更されるため、税務と社会保険の両面から同時並行での対応が求められます。

本稿では、最新の改正案に基づき、実務上の注意点とスケジュールを整理します。

1. 所得税の改正:非課税枠の拡大と「遡及精算」の注意点

2026年4月1日以後に支払われる給与から、以下の非課税限度額の引き上げが適用される予定です。

(1)通勤手当(駐車場代・遠距離)の拡充(図1参照)

  1. 駐車場代の非課税化
    従業員が自ら契約した駐車場を利用する場合、「一定の要件」で月額5,000円までを非課税通勤費に加算が可能となる予定です。
    ※「一定の要件」についての詳細は、改正法の成立後に公表されることとなるため、情報を収集していく必要があります。

  2. 遠距離区分の新設: 片道65km以上の区分が細分化され、最高限度額が引き上げられます。

    【図1】

    出典:財務省 「令和8年度税制改正の大綱(1/9)」

(2)食事補助の非課税枠が「月額7,500円」へ

現行の3,500円から7,500円へと一気に引き上げられる予定です。会社が支給した食事の価額から役員や従業員の負担している金額を控除した残額が非課税限度額という要件は維持されますが、物価高騰を受けた実質的な賃上げ施策として改正が予定されています。
なお、使用者が深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭について所得税が非課税とされる1回の支給額についても現行の300円以下から650円以下に引き上げられる予定となります。

(3)【実務ポイント】法案成立と給与計算のタイミング

ここで最大の留意点は、詳細な資料の公表が、4月支給計算前までに間に合うかという点です。
税制改正法案の成立が3月末から4月にずれ込んだり、詳細資料が未公表だったりすると、4月支給給与の計算時点では「新規定が未施行」の状態になる可能性があります。その場合、一旦旧基準で計算し、後日(5月以降)に4月分に遡って精算・還付を行う実務が発生します。システム改修のタイミングを含め、ベンダーとの密な連携が不可欠です。
また、対応が必要な従業員が、遡及計算前に退職してしまった場合、源泉徴収票の再作成の必要が生じます。昨年の非課税通勤費の限度額の改正でも、4月に遡って精算が必要となり、退職した従業員の連絡先が分からない等、多くの企業担当者から対応方法について相談を受けました。精算が必要になりそうな従業員には、あらかじめ、源泉徴収票の再発行の可能性があることを伝え、連絡先を聞いておくようにしましょう。
なお、割増賃金の基礎に含まれるかの基準については、現行とおりです。名称が通勤手当であっても、実態により判断され、通勤距離にかかわらず一定額支給される場合は、割増賃金の基礎に算入しなければなりません。

2. 社会保険・労働保険:現物給与価額の段階的改定

所得税の非課税枠だけでなく、社会保険料の算定基礎となる「現物給与」の価額も改定されます。こちらは4月と10月の2段階で変更されることに注意が必要です。

  1. 食事の価額改定(2026年4月〜)
    厚生労働省が定める「食事の現物給与価額」が改定されます。社食を提供している企業では、従業員からの徴収額がこの基準3分の2未満の場合、その差額が「報酬」として社会保険料の対象になります。4月からの算定基礎・月変・労働保険料の算定に直結します。

    出典:e-GOV パブリック・コメント「厚生労働大臣が定める現物給与の価額の一部を改正する件(案)に関する御意見の募集について」別紙

  2. 住宅の計算方法変更(2026年10月〜)
    住宅の現物給与(社宅等)の評価方法が抜本的に変わります。
    面積基準の変更: 従来の「畳数」ベース(居住室部分1畳当たりの家賃・間代)から、「総床面積(平方メートル)」ベースへ移行します。
    現行の計算方法では、トイレや浴室等の居室ではない部分を除いて畳数を算出することで非常に手間がかかっていたところ、計算方法を簡素化し、企業の負担を軽減するための改正です。
    なお、適用時期は、給与システムの変更を含め、企業側の計算準備に猶予を持たせるため、こちらは2026年10月1日からの適用が予定されています。
    初年度は、10月1日適用となるため、翌年1月の社会保険の月額変更(随時改定)の対象となる可能性があることに留意しましょう。

3. 改正に向けて準備すべきこと

  1. 駐車場代支給の検討、課税通勤費支給者の確認
    • 非課税枠の拡大に伴い、新たに駐車場代を支給するかどうか、社内規定の要否を検討する
    • 現在、課税対象となっている通勤手当で非課税通勤費となる対象者の抽出
  2. 食事補助規定の改定
    非課税枠をフル活用するか検討する

  3. 社宅面積の再計測
    10月の住宅改定に向け、社宅の床面積(平方メートル)データの整備をしておく

今回の改正は、従業員にとってメリットとなる改正ですが、給与担当者にとっては計算ロジックの変更や遡及対応など、ミスが許されない作業が重なります。早めの情報収集とシステム対応を進めていきましょう。

本コラムの著者

北條 孝枝

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス株式会社ブレインコンサルティングオフィス
社会保険労務士 メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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