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【労基法改正 最新動向】年次有給休暇の法改正はどう動く?
押さえておきたい「育休復帰者の按分」「賃金算定の原則一本化」「時間単位年休」の方向性

公開日:2026年6月12日

ここがポイント!

  • 労基法改正に向け、実務で不合理な制約となっていた育休復帰者や退職者の年5日取得義務の按分化を検討。
  • 年休取得時の賃金算定方法を通常の賃金へ原則一本化する議論が進み、労働契約書の明確化が実務のポイント。
  • 柔軟な働き方に活用される時間単位年休は、年5日の上限緩和を巡り使用者側と労働者側の意見が対立。

働き方改革関連法によって「年5日の年次有給休暇(以下、年休)の時季指定義務」が導入されてから数年が経過しました。厚生労働省の調査では、労働者の年休取得率は65.3%と過去最高を記録。現在、労働政策審議会(労政審)では労働基準法改正に向けた具体的な議論が加速しています。

本コラムでは、実務担当者が「次に来る変化」をいち早く見据え、今からどのような準備を進めるべきか、最新の論点とともに解説します。

論点1:現場が悩む「育休復帰者・退職者」の5日義務は緩和されるか?

実務で悩ましいのが、年度の途中で育児休業から復帰した社員や、年度前半に退職していく社員の「年5日取得義務」の扱いです。
現行法では、たとえ付与期間(基準日からの1年間)の残り日数がわずかであっても、一律で「5日」を時季指定して取得させなければならず、企業・労働者双方にとって不合理な制約となるケースが多発しています。

  • 労政審での方向性(按分化の検討)

厚生労働省の検討会(労働基準関係法制研究会)の報告や使用者側からは、「勤務可能日数に応じて按分した日数を義務の対象とすべき」との現実的な提案がなされています。例えば、残り期間が半年の復帰者であれば、義務を2.5日(切り捨て・切り上げは今後の議論)にする、といったイメージです。
一方で労働者側からは、「年休を5日取得させられていない企業がまだ11.6%もある」という現状を根拠に、安易な対象日数の削減には慎重な意見が出ています。しかし現実問題として、次回の年休付与までの期間が極端に短い場合であっても、一律に5日の取得義務が課されることについては、実務上の負担や制度趣旨との整合性が課題として指摘されています。
現状のままでは「実態として不可能なのに労基法違反になってしまう」という矛盾があるため、今後は按分する方向性で検討が進む可能性が高いと考えられます。

論点2:シフト制アルバイト・パートの「賃金算定方法」原則一本化と雇用契約書実務のポイント

運用の見直しが必要になりそうなのが、「年休取得時の賃金算定方法」の原則一本化(通常の賃金への統一)です。現行法では①平均賃金、②通常の賃金、③標準報酬月額の30分の1の3通りから選択できますが、日給・時給制の労働者に①や③を用いると年休手当が不当に低くなる「逆転現象」が起きるため、②の通常の賃金にする議論が進んでいます。
年次有給休暇1日あたりの賃金イメージ。
出典:厚生労働省「第199回労働政策審議会労働条件分科会」資料

ここで特に問題となるのが、パート・アルバイトは時給者が多く、労働契約時点で「1日の所定労働時間」が確定していないシフト制の労働者を多く抱える業種という点です。

現状、シフト制の従業員の年休取得時の手当に「①平均賃金」を設定している企業もいらっしゃることでしょう。しかし、その場合、実務上は給与ソフトだけでは自動計算できず、平均賃金を別途手計算するなどの工数がかかっており、対応に苦慮しているという声も多く聞かれます。

「②通常の賃金(時給)」で算定することになると、従業員ごとに「1日の所定労働時間」を何時間に設定するかを予め決めておく必要があります。

さらに直近では、2026年4月1日から健康保険の被扶養者認定ルールが改正されました。給与収入しかない扶養親族の場合、健康保険の被扶養者認定では、従来以上に労働契約書等による将来収入見込みの確認が重視される方向となっています。

健康保険の扶養認定ルールの改正については、以下の記事もあわせてご参照ください。

つまり、「実態としていくら収入があるか」だけでなく、「労働契約書にどう書かれているか」が、健康保険の被扶養者認定における年間収入の確認において重要になります。
また、短時間労働者本人の社会保険加入判定においても、週所定労働時間や賃金見込みなど、労働契約上の条件整理が重要になります。

年休取得手当の計算を効率化し、かつ2026年4月改正の扶養認定対応を円滑に進めるためのポイントは、「労働契約書の記載を曖昧にしないこと」です。
雇用契約書や労働条件通知書に、単に「シフトによる」とだけ書くのではなく、以下のように基準値を明確に定めておくのが実務上有効です。

記載例:「シフトによる。ただし1日の所定労働時間は●時間、週20時間未満とする」

このように「契約上の1日の所定労働時間」を明記しておくことで、以下の2つのメリットを同時に得ることができます。

1. 年休取得時の賃金算定が明確になる>
年休を取得した日に「通常の賃金(時給×契約上の1日の所定労働時間)」を適切に算定・支給できる。

2. 被扶養者認定の年収判定に対応できる
「週●時間×時給」ベースでの正確な契約上の見込み年収を健保組合等へ証明しやすくなり、被扶養者認定を巡るトラブルを未然に防げる。

有給休暇の法改正と社保の法改正について直接の関連はありませんが、どちらも「労働契約の明確化」が実務でのポイントになります。

論点3:「時間単位年休」の年5日上限は緩和されるか?

「治療と仕事の両立」や「育児・介護をしながらの勤務」において、柔軟な働き方として活用されているのが「時間単位年休」です。現行法では、労使協定を締結することで「年5日」を上限に導入が可能となっています。上限引き上げを巡る議論では、労使の意見が真っ向から対立しています。

・使用者側
政府の両立支援ガイドラインでも時間単位年休の導入が推奨されていることを背景に、「すべての人に1日単位の取得が最適とは限らない。上限日数を延長し、各企業の労使の判断に委ねる選択肢を作るべき」と、上限緩和を求めています。

・労働者側
これに対し労働者側は、「年休の本質は心身の疲労回復であり、1日ないし半日単位での休暇確保が原則である」として、上限の引き上げには強く反対しています。細切れの取得が増えれば、労働力の維持培養という本来の趣旨が形骸化するという懸念です。

・研究会の見解
労働基準関係法制研究会の報告書では「直ちに変更すべき必要性があるとは思われない」とされており、現行の「年5日上限」が維持される可能性が優勢ですが、柔軟な両立支援を求める企業の声がどこまで反映されるか、最終的な制度設計が注目されます。

時間単位の年次有給休暇制度導入率は、令和6年に24.8%となり、上昇傾向にある。
出典:厚生労働省「第199回労働政策審議会労働条件分科会」資料

まとめ:法改正を見据え、自社の制度を検討

次期国会等で本格化する、年休に関する労基法改正の主要な論点は、下記の3点です。

  • 育休復帰者・退職者の年5日取得義務の按分
  • 年休取得時の賃金算定の原則一本化
  • 時間単位年休の年5日の上限の緩和

年休を取得しやすい環境を整備することは、従業員にとって、働きやすい職場環境につながり、採用でのアピールポイントにもなります。

法改正にかかわらず、まずは自社の現状を踏まえ、年休をどう活用すれば従業員や応募者にとって魅力的な制度にしていけるか、この機会にぜひ見直し検討を進めてみてください。

本コラムの著者

北條 孝枝

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス株式会社ブレインコンサルティングオフィス
社会保険労務士 メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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