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第56回
外国人労働者雇用時の重要確認事項と企業の責任

1. 外国人雇用の背景とメリット

日本は少子高齢化に伴い、2025年には労働力不足が深刻化すると予測されています。

特に製造業やサービス業では人手不足が顕著で、多くの企業で外国人労働者の受け入れが進んでいます。
外国人労働者を雇用することで、多様な価値観や異文化の視点が組織に加わり、企業の競争力を強化させることができます。

また、グローバル化に対応した人材確保や特定分野の技能者採用もメリットとして挙げられます。企業が国際市場に進出する際、外国人労働者はその企業の競争力を強化する重要な要素となります。

外国人労働者を雇用することで、言語や文化の違いを超えたビジネス展開が可能になり、企業の国際展開やグローバル市場への対応力が期待されるでしょう。

2. 外国人を雇用する上で企業が確認すべき重要事項

外国人を雇用する際、企業は「就労条件を満たしているか」「不法就労に該当する外国人ではないか」の確認が必須です。

万が一、確認を怠った場合、法律により企業側が罰せられる可能性があるため、確認事項を押さえておきましょう。

就労条件を満たしているか

外国人を雇用する際には、まず出入国管理法に基づき就労の可否を確認することが重要です。
在留資格は27種類に分類されており、次の3つのカテゴリーに大別されます。

1. 就労が認められる資格(18種類)

技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、技能などの資格を持つ外国人は、定められた範囲内で就労が可能です。(表1参照)

表1

就労が認められる在留資格
① 外交 ② 公用 ③ 教授
④ 芸術 ⑤ 宗教 ⑥ 報道
⑦ 投資・経営 ⑧ 法律・会計業務 ⑨ 医療
⑩ 研究 ⑪ 教育 ⑫ 技術
⑬ 人文知識・国際業務 ⑭ 企業内転勤 ⑮ 興行
⑯ 技能 ⑰ 技能実習 ⑱ 特定活動※1

※1:特定活動とはワーキングホリデーやEPA看護師・介護福祉士・ポイント制等を指します。

参照:厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。」

2. 原則就労不可の資格(5種類)

表2

原則就労不可の在留資格
① 文化活動 ② 短期滞在 ③ 家族滞在
④ 留学 ⑤ 研修

参照:厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。」

外国人が「留学」や「家族滞在」の在留資格でアルバイト等を行う場合、資格外活動の許可が必要です。(表2参照)

許可を得た場合、「留学」の在留資格では原則1週28時間まで働くことができ、長期休業期間中は1日8時間まで就労が可能です。同様に、「家族滞在」の在留資格でも1週28時間まで就労が許可されます。雇用時には、旅券の資格外活動許可証印や許可書を確認し、就労時間や業種に注意する必要があります。なお、風俗営業などは禁止されています。

3. 就労制限のない在留資格(4種類)

永住者や日本人の配偶者などは、就労制限がありません。(表3参照)特別な許可を得ることなく日本国内で幅広い職種で働くことが可能です。これにより、雇用主側は特定の業種や時間制限に縛られず、さまざまな雇用の選択肢を提供できます。

一方で、「短期滞在」の在留資格を持つ日系人の場合、就労活動を行うには地方入国管理局で在留資格の変更許可を得る必要があります。在留資格の変更許可なしでは働けないため、企業は採用時にその確認を怠らないよう注意が必要です。

また、短期滞在者の場合、許可を得ても短期間での活動が基本となるため、長期的な雇用契約には適さない点にも留意する必要があります。

表3

就労制限のない資格
① 永住者 ② 永住者の配偶者等
③ 日本人の配偶者 ④ 定住者

参照:厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。」

不法就労に該当する外国人ではないか

雇用主は、外国人の在留資格の確認が必要です。「短期滞在」や「研修」といった就労が認められない在留資格で滞在している外国人や在留期間を超過、上陸の許可を受けずに滞在している外国人は就労ができません。これらの外国人が就労した場合、不法就労となり、退去強制の対象となります

万が一、企業が不法就労外国人を雇用した場合や、集団密航者を運び、その密航者を支配管理下において不法就労させた場合は法律により罰せられることがあるため、必ず確認するようにしてください。(表4参照)

表4

項目 罰則
不法就労外国人を雇用した事業主
不法就労を助長した者
入管法第73条の2
3年以下の懲役または300万円以下の罰金
集団密航者を運び、その密航者を支配管理下において不法就労させた場合
(不法就労助長罪が適用)
入管法第74条の4
5年以下の懲役または300万円以下の罰金

※ 営利目的の場合
1年以上10年以下の懲役および1,000万円以下の罰金
退去強制を免れさせる目的で不法入国者や不法上陸者をかくまった場合 入管法第74条の8
3年以下の懲役または300万円以下の罰金

※ 営利目的の場合
5年以下の懲役および500万円以下の罰金

参照:厚生労働省「不法就労に当たる外国人を雇い入れないようにお願いします。」

3. 外国人雇用時は、雇用状況の届出が必要

雇用対策法に基づき、外国人を雇用する事業主は、外国人労働者の雇入れや離職の際に、氏名や在留資格などの情報をハローワークに届け出る義務があります

外国人労働者情報の届出により、ハローワークは雇用環境の改善に向けた助言や指導、離職した外国人の再就職支援を行います。

届出の対象は日本国籍を有しない方かつ、在留資格「外交」や「公用」以外の方となります。なお、「特別永住者」は対象外です

また、外国人労働者の雇用状況は、雇用保険の被保険者であるか否かによって、提出期限や書式、届先が異なるため注意してください。

雇用保険の被保険者となる場合

雇用保険の適用を受けることで、労働者は失業手当や育児休業給付などの福利厚生を享受できます。

表5を参考に届出に必要な事項や方法、届出先、期限を確認しておきましょう。

表5

項目 内容
届出事項 ① 氏名
② 在留資格
③ 在留期間
④ 生年月日
⑤ 性別
⑥ 国籍・地域
⑦ 資格外活動許可の有無
⑧ 雇入れに係る事業所の名称および所在地など
届出方法 雇用保険被保険者資格取得届の「18. 備考欄」に以下を記載することで、外国人雇用状況の届け出が可能
① 在留資格
② 在留期間
③ 国籍・地域
④ 資格外活動許可の有無
届出先 雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)
届出期限 雇入れの場合は翌月10日まで
※ 雇用保険の取得届の提出期限と同様

参考:厚生労働省「外国人を雇用する事業主の方へ」(PDF)

雇用保険の被保険者ではない場合

雇用する外国人が雇用保険の被保険者でない場合も被保険者であるときと同様に雇用状況に関する届出を行う必要があります。

届出に必要な事項や方法、届出先、期限は表6の通りです。

表6

項目 内容
届出事項 ① 氏名
② 在留資格
③ 在留期間
④ 生年月日
⑤ 性別
⑥ 国籍・地域
⑦ 資格外活動許可の有無(雇入れ時のみ)
⑧ 雇入れに又は離職年月日
⑨ 雇入れ又は離職に係る事業所の名称、所在地等
届出方法 外国人雇用状況届出書(様式第3号)に、届出事項①〜⑨の届出事項を記載して届け出る
※ 届出様式はハローワークの窓口配付・厚生労働省ホームページからダウンロードが可能
届出先 雇用する外国人が勤務する事業所施設の住所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)
届出期限 雇入れ、離職の場合ともに翌月の末日

参考:厚生労働省「外国人を雇用する事業主の方へ」(PDF)

国や地方公共団体で雇用する外国人が被保険者でない場合は、「外国人雇用状況通知書」の提出が必須です
専用の通知様式を使用し、氏名や生年月日・在留資格・期間など、必要な情報を記載します。
通知期限は、雇用保険の被保険者と同じく、雇入れの場合は翌月10日まで、離職の場合は10日以内に手続きを完了させなければなりません。

雇用保険の被保険者でない外国人に関しても、これらの手続きを遵守することで、適切な雇用環境を維持し、法令に従った運営が可能となります。

4. 外国人雇用の管理・改善は企業の努力義務

外国人労働者が日本で安心して働ける環境を整えることは、企業にとって重要な責任です。企業は、外国人労働者がその能力を最大限に発揮できるよう、適切な人事管理と就労環境の確保に努める必要があります。このため、以下の指針が設けられています。

    1. 公平な採用選考
      外国人労働者を国籍で差別せず、公平な採用選考を行うことが求められます。日本国籍でないことを理由に採用面接を拒否することは不適切です。
    2. 法令の遵守
      労働基準法や健康保険法など、労働関係法令は国籍を問わず外国人にも適用されます。企業は、労働条件における差別を避け、法令を遵守することが必要です。
    3. 解雇の予防と再就職援助
      事業規模の縮小などの際、外国人労働者に対して安易に解雇を行うのではなく、やむを得ない場合でも再就職希望者に対して適切な援助を行うことが求められます。
    4. 専門的・技術的分野の人材育成
      「専門的・技術的分野」の在留資格を持つ外国人労働者は、企業の国際化や活性化に寄与する重要な人材です。新規学卒者を対象にした留学生向けの募集・採用も効果的です。

企業は、指針を元に、外国人雇用の管理・改善に取り組む努力義務があることを認識し、持続可能な雇用環境を構築していくことが求められています。

まとめ

日本は少子高齢化により、2025年には労働力不足が深刻化します。特に製造業やサービス業では外国人労働者の受け入れが進んでおり、多様な価値観が企業の競争力を向上させるきっかけとなります。

しかし、外国人を雇用する際には、就労条件の確認や不法就労の防止など、日本人の雇用とは異なる確認や届出が必要です。外国人雇用の際、企業は在留資格や雇用状況をハローワークに届け出る義務があり、雇用保険の被保険者となる必要があります。

また、外国人労働者が安心して働ける環境を整えることも企業の責任です。

これらの点を踏まえ、企業は法令遵守や公平な採用選考を行い、外国人雇用環境を築きましょう。

本コラムの著者

山下 うみ

フリーライター

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