プロが教える! 電子申請導入のポイント

第51回
2025年4月1日に改正「育児・介護休業法」が施行。
介護休業に向けた企業の対応策とは?

  • #介護休業
  • #育児介護休業法
  • #介護問題

公開日:2024年9月20日

社会の急速な高齢化に伴い、企業の人事・労務担当者に新たな課題が突きつけられています。介護問題は、個人だけでなく、企業全体で解決すべき重要なテーマでしょう。

また、2024年に改正された「育児・介護休業法」が2025年4月1日より施行されます。
介護問題を適切に対応することは、社員の働きやすい環境を整えるだけでなく、企業の持続可能な成長にも直結します。

本記事では、企業がどのように育児・介護休業法に取り組むべきか、その具体的な方策について解説します。

1. 改正「育児・介護休業法」の背景

育児・介護休業法とは、日本における労働者が仕事と家庭生活の両立ができるよう支援するための法律です。育児や介護を必要とする家族を持つ労働者が介護休業を取得できるよう、企業に対して一定の義務を課しています。

しかし、仕事と介護の両立支援制度を活用できないまま、離職に至るという状況もあります。介護離職を防止するためには、個別に制度を知らせて意向を確認し、利用しやすい職場環境を整備することが重要と考え、今回の法改正が行われました。

2. 介護問題の現状とその影響

日本は急速に高齢化が進行しており、2025年には65歳以上の高齢者人口が35,000人を超えると予測されています。

高齢者人口の増加に伴い、介護を必要とする高齢者の数も増加の一途をたどっています。
これにより、介護を支える人手不足が深刻化し、家族介護の必要性が急激に高まることが予想されます。

参照:厚生労働省「今後の高齢者人口の見通しについて」(PDF)

要介護高齢者の増加に伴い、家族を介護するために仕事を辞めざるを得ない社員が増えることが懸念されています。
家族の介護(看護を含む)と仕事の両立が厳しいという理由で退職をした離職者数は減少傾向にあります。

しかし、60歳以上での離職者は増加しており、総務省の調査によると直近では約106,000人が家族の介護(看護を含む)を理由に離職をしています。(図1参照)

図1
家族の介護・看護を理由とする離職者数の推移

出典:厚生労働省「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実に関する参考資料集」(PDF)

介護離職は企業にとって、貴重な人材を失うリスクとなりかねません。特に中高年層の社員が多くのスキルや経験を持っている場合、その損失は企業の競争力に大きな影響を与えます。

3. 仕事と介護の両立支援が今求められる理由

少子高齢化の進展に伴い、介護が必要となる家族を抱える社員が増加しています。これに対応するため、企業は社員が仕事と介護を両立できる環境を整えることが重要です。両立支援は企業の持続的な成長、社員の介護離職を防ぐために必要な対応と言えます。

介護による離職者が増加する背景とその深刻さ

介護による離職者の増加は、社会全体における高齢化の進行と密接に関連しています。社員が介護のために仕事を辞めざるを得ない状況は、本人の人生設計に深刻な影響を与えるだけでなく、企業にとっても貴重な人材を失うことになります。

介護離職の増加は企業の生産性低下やチームワークの崩壊を引き起こし、長期的には企業の競争力にまで影響を及ぼしかねません。

両立支援が企業の持続的成長に不可欠な理由

介護を抱える社員にとって、仕事と介護の両立は大きな精神的負担となり得ます。

介護による精神的負担を軽減し、社員が安心して働ける環境を構築することは、企業が長期的に成長するためにも欠かせないことです。社員の心身の健康が保たれることで、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。

また、社員の精神的負担の軽減は業務に集中できる環境を作ることにも繋がります。

相談できない現状とその原因

多くの社員が介護の問題について職場で相談することに躊躇しているのが現状です。(図2参照)

図2
介護についての相談先

出典:厚生労働省「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査」結果概要(PDF)

職場への相談を躊躇する原因には、職場におけるサポート体制の不十分さや、相談したことがキャリアに悪影響を及ぼすのではないかという不安があります。

また、上司や同僚の理解が得られないという懸念も、相談をためらわせる要因の一つです。これにより、社員は孤立し、結果として介護による離職へと繋がってしまうのです。

4. 法改正により企業に課される措置義務と対応

仕事と介護の両立を支援するために、企業は柔軟な働き方の導入や定期的なフォロー面談の実施、長期的な視点での支援策を講じることが重要です。

また、社内教育と意識改革を進めることで、持続可能な支援体制を構築することが求められます。

2025年4月1日より施行の「育児・介護休業法」では企業に以下の措置義務が課されます。

  • 労働者が介護申請をした場合に、仕事と介護の両立支援制度等に関する情報を個別周知・意向確認
  • 介護に直面する前(40歳等)の早い段階で仕事と介護の両立支援制度等に関する情報を提供する
    ※ 介護保険制度についての周知も望ましい
  • 相談窓口の設置や社内研修等、雇用環境を整備する
    ※ 介護休業制度の目的の理解促進を図る観点から、事業主による個別周知等を行う際には、制度の目的を踏まえることが望ましい

柔軟な働き方の導入と企業側の努力義務

テレワークや時短勤務、フレックス制度など、柔軟な働き方を導入することで、社員が仕事と介護を両立しやすい環境を整えられます。

法改正により、介護中の社員に対してテレワークを可能とすることが努力義務として追加されました。
テレワークの措置は努力義務であるため、罰則はありませんが柔軟な働き方の導入により、社員は仕事を続けながらも、家族の介護に必要な時間を確保できるようになります。

介護休業が全労働者に適用:勤続6カ月未満も対象に

法改正以前は、企業の判断により勤続6カ月未満の労働者は介護休業の対象外となり得る状況でした。

しかし、法改正により、勤続6カ月未満の労働者を介護休業の対象外にできる制度が撤廃されます。制度が撤廃されることで、勤続年数に関わらず全労働者が介護休業の対象となります。

以前のように企業側で介護休業の対象・対象外の判断は不可となるため、注意しましょう

参照:厚生労働省「令和6年改正法の概要」(PDF)

5. 社内教育と意識改革の推進による持続可能な支援体制の周知

企業は、社内研修を活用して介護休業の重要性や支援方法を全社員への周知が大切です。研修を通じて、両立支援制度の周知を進めましょう。

「育児・介護休業法」とはどのような法律なのか、法改正により企業にどのような義務が課されているのかなど、介護休業に関する内容を共有し、社員全体が理解を深めることが大切です。

まとめ

以上、2025年4月1日より施行される「育児・介護休業法」の改正について解説しました。

法改正により、企業は仕事と介護の両立を支援するための措置を強化する必要があります。具体的には、介護申請時の情報周知、早期の支援制度案内、相談窓口の設置などが求められます。また、テレワークやフレックスタイム制度の導入が推奨され、介護休業の対象も勤続6カ月未満の労働者を含むように変更されます。

企業は法改正に基づき、社内教育や意識改革を行い、支援体制の整備を図ることが重要です。企業は法の理解と対応策の周知、準備を進め、仕事と介護を両立する労働者が働きやすい環境を整えましょう。

本コラムの著者

山下 うみ

フリーライター

導入などに関するご相談を
無料でお受けしています。

お問い合わせはこちら

お電話でのお問い合わせ

受付時間:平日 9:00〜17:00
株式会社ユー・エス・イー Charlotte(シャーロット)推進室

総務省推進のASPIC「ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定制度」を取得しています。
認定年月日:2021年2月10日  認定番号:第0245-2102号

デジタル庁 e-Gov最終確認試験合格
デジタル庁の最終確認試験は、民間事業者が開発したソフトウェアを使用してe-Gov電子申請サービスが正常動作確認することを目的としております。民間事業者が開発したソフトウェアの正常動作の確認を目的とするものではありません。

「Charlotte」の開発会社である株式会社ユー・エス・イーは社会保険システム連絡協議会の幹事会社です。
「社会保険システム連絡協議会」とは、総務省行政管理局及び厚生労働省等と、社会保険・労働保険関係手続きの電子申請が可能なソフトウェアを開発・販売・サポートする社会保険システム業界との窓口として、相互の事務連絡、情報交換及び協議等の円滑化を図り、社会保険行政の円滑な執行に資することを目的とした団体です。

「Charlotte」の開発会社である株式会社ユー・エス・イーは税務システム連絡協議会の加盟会社です。
「税務システム連絡協議会」は、税務・会計に関するシステム・ソフトウェアに携わる企業を対象として作られた、税務行政の効率化・省力化とともに納税者の利便性の向上を図り、税務行政のICT化に寄与し、適正な申告納税制度の確立に努めることを目的とした集まりです。1994年に設立され、2022年3月末時点において、税務及び財務関連システムを開発・販売・サポートとする企業33社が加盟しています。

※「Charlotte」は株式会社ユー・エス・イーの登録商標です。(登録商標第5980282号)
※ 本ウェブサイトに掲載されている各社名あるいは各製品名は、各社の登録商標または商標です。

お問い合わせお問い合わせ
資料ダウンロ資料ダウンロ

動画を見る 閉じる
×