ここがポイント!
- 建設事業で請負金額1億8,000万円以上、または概算保険料160万円以上の工事は、一括有期事業に含められず単独有期事業として個別に手続きが必要です。
- 単独有期事業では、保険関係成立届は10日以内、概算保険料申告は20日以内、確定保険料等の申告は事業終了から50日以内に行う必要があります。
- Charlotteを導入した竹中工務店様では、1件約80分かかっていた申請作業が、ご担当者様の体感で約40分とほぼ半分になりました。
建設業の人事・労務担当者にとって、工事の開始や終了に伴う労働保険の手続きは、日常的に発生する重要な業務です。
なかでも「単独有期事業」に該当する工事は、一般的な継続事業や一括有期事業とは申告のタイミングが異なり、短い期限の中で個別に手続きを進めなければなりません。
特に、複数の工事を同時に管理している企業では、工事ごとの情報確認や書類作成、決裁、行政機関への提出などが重なり、担当者の負担が大きくなりやすいでしょう。
本記事では、単独有期事業とは何か、一括有期事業とどのように区別されるのかを整理したうえで、保険関係成立届や概算保険料申告書などの手続きと期限を解説します。
後半では、電子申請によって単独有期事業の手続きがどのように変わるのか、実際の導入事例も紹介します。
1.単独有期事業とは
単独有期事業とは、一括有期事業としてまとめて扱うための要件に該当しない建設事業または立木の伐採事業を指します。
労災保険では、建設事業などの有期事業について、一定の要件を満たす複数の工事を「一括有期事業」としてまとめて扱う仕組みがあります。
一方、その要件に該当しない場合は、工事現場や作業現場ごとに一つの事業として扱うのが基本です。そのため、工事の開始・終了に応じて、それぞれ労災保険の手続きを行う必要があります。
建設事業では、工事ごとの請負金額や概算保険料などが一括有期事業の要件に該当するかを確認することが重要です。要件を満たさず一括して扱えない工事については、単独有期事業として個別に手続きを進めることになります。
人事・労務担当者にとって重要なのは、「単独有期事業に該当するかどうかによって、労災保険の管理方法や手続きのタイミングが変わる」という点です。
単独有期事業では、事業開始時に保険関係を成立させ、概算保険料を申告・納付し、事業終了後には確定保険料を申告・納付する必要があります。そのため、複数の工事を継続的に管理している企業では、工事ごとの開始日・終了日や手続き状況を把握しておくことが重要になります。
2.一括有期事業とは
一括有期事業とは、一定の要件を満たす複数の有期事業をまとめて一つの事業として扱う仕組みです。
建設事業や立木の伐採事業では、工事や作業の規模などが一定の要件を満たす場合、個々の工事ごとではなく、まとめて労災保険の手続きを行えます。
一方、すべての工事を一括できるわけではありません。
一括有期事業の要件に該当しない場合は、工事現場ごとに一つの事業として扱う「単独有期事業」となります。
そのため、単独有期事業を理解するには、まず一括有期事業として扱える条件を確認しておくことが重要です。
(表1) 一括有期事業の主な要件
| 主な要件 | 一括有期事業の要件 |
|---|---|
| 事業主 | 事業主が同一であること |
| 事業の種類 | 建設事業または立木の伐採事業であること |
| 概算保険料 | 一工事の概算保険料が160万円未満であること |
| 建設事業の請負金額 | 請負金額が1億8,000万円未満(消費税額を除く)であること |
これらの要件を満たさない工事については、一括有期事業としてまとめて扱うことができず、単独有期事業として工事ごとに労災保険の手続きを行います。
3.単独有期事業と一括有期事業の違い|基準は請負金額1億8,000万円・概算保険料160万円
工事は目的物が完成すれば終了し、その現場の事業も終わります。
このように終了時期があらかじめ予定されている事業を「有期事業」、工場や商店のように期間が定められていない事業を「継続事業」と呼びます。
建設業の工事現場は、終了時期が予定されているので有期事業です。
有期事業はさらに二つに分かれます。
小規模な工事を法律上当然にまとめて扱う「一括有期事業」と、それに該当しない「単独有期事業」です。
厚生労働省の説明によれば、建設の事業においては一工事の請負金額が1億8,000万円未満、かつ概算保険料額が160万円未満である場合に、複数の現場が一括して申告されることになっています。
立木の伐採の事業では、素材の見込生産量が1,000立方メートル未満かつ概算保険料額が160万円未満であることが基準です。
このほか、同一の事業主であること、それぞれの事業の種類(労災保険率表上の区分)が同じであること、保険料の納付事務を一つの事務所で取り扱うことも要件に含まれます。
つまり、一括有期事業の要件を満たす工事はまとめて扱われ、それらの要件に該当しない有期事業は、単独有期事業として個別に手続きを行うことになります。
ここで実務上のポイントになるのが「未満」という表現です。
請負金額1億8,000万円ちょうどの工事は一括の対象外となり、単独有期事業として扱われます。
一括有期事業の適用を受けている場合は、年度更新の際に「一括有期事業報告書」と「一括有期事業総括表」を追加で提出します。
厚生労働省・労働局の資料でも、一括の対象となる工事の記載漏れや、消費税相当額を含めた請負金額の計上などが申告誤りの例として挙げられています。
参照:厚生労働省リーフレット「一括有期事業を行う事業主の皆様へ」
4.建設業の労災保険は「工事現場ごと」に扱う
一般的な企業では、労働保険は会社や事業所を単位として成立します。
しかし建設業の工事現場に係る労災保険では、一つの工事現場を一つの「事業」として扱うのが原則です。
現場ごとに保険関係が成立するため、建設業では、工事現場に係る労災保険を「現場労災」と呼ぶことがあります。
この仕組みの結果として、建設業の労災保険は元請業者が一括して加入し、下請業者の労働者もその保険関係の対象に含まれます。
一方で雇用保険や社会保険はこの考え方をとらず、それぞれの会社が自社の労働者について加入手続きを行います。
元請が下請の分をまとめて加入するわけではない点に注意してください。
また、労災保険と雇用保険を一体で申告・納付する事業を「一元適用事業」、両者を切り離して別々に申告・納付する事業を「二元適用事業」と呼びます。建設業や農林漁業などは後者の二元適用事業にあたり、労災保険と雇用保険について、それぞれ別に保険関係を成立させ、保険料の申告・納付も別々に行います。
労災保険の手続きだけを見て「雇用保険も済んだ」と考えてしまうと漏れが生じますので、二系統を並行して管理する意識が欠かせません。
5.単独有期事業の手続きは「10日・20日・50日」を押さえる
単独有期事業では、工事の開始時と終了時に手続きが発生します。
特に担当者が覚えておきたいのが「10日・20日・50日」という期限です。
(表2)
| 手続き | 期限 |
|---|---|
| 保険関係成立届 | 事業開始から10日以内 |
| 概算保険料申告書 | 事業開始から20日以内 |
| 確定保険料・一般拠出金申告書(有期事業) | 事業終了から50日以内 |
工事が始まったら、まず10日以内に保険関係成立届を提出します。
その後、20日以内に概算保険料を申告・納付し、工事が終了したら50日以内に確定保険料などを申告して精算します。
このように、単独有期事業では「工事が始まったら手続き」「工事が終わったら手続き」という二段階の管理が必要です。
複数の工事を並行して進める企業では、工事の開始日や終了日を把握するだけでも担当者の負担になり得ます。
概算保険料は一定の条件を満たせば延納できる
単独有期事業では、事業開始時に概算保険料を申告・納付することが原則です。
ただし、一定の要件を満たす場合には、概算保険料を分割して納付する「延納」が認められます。
工事期間や概算保険料の額などによって適用条件が定められているため、該当する可能性がある場合は、申告時に確認しておくことが大切です。
延納は自動的に適用されるものではありません。
対象となる工事であるか、必要な手続きが行われているかを確認したうえで、納付スケジュールを管理しましょう。
参照:e-Gov法令検索_労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則
6.単独有期事業の補償対象者となる条件
労災保険は、労働者を一人でも使用する事業に原則として適用されます。正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトなども労働者に含まれるため、雇用形態だけで対象外と判断することはできません。
一方、雇用関係にない立場の方は原則として対象外です。
事業主や、業務執行権を持つ法人の役員は、下請事業者の役員であっても元請の労災保険の対象になりません。
ただし、中小事業主や一人親方などについては、一定の要件を満たすことで労災保険に特別加入できる制度があります。
建設業では、一人親方などが工事現場で作業するケースもあるため、担当者は現場で働く人が「自社の労働者なのか」「下請事業者の労働者なのか」「一人親方なのか」といった立場を整理しておく必要があります。
なお、労働者派遣法では、建設業務への労働者派遣が禁止されています。
そのため、建設現場の労災保険について確認する際に、一般的な派遣社員を建設業務に従事する労働者として想定することは適切ではありません。
7.単独有期事業の電子申請|義務化との関係を確認
一定の法人には、労働保険の一部手続きについて電子申請が義務付けられています。
ただし、電子申請義務の対象となる手続きには例外があります。
厚生労働省は、継続事業(一括有期事業を含む)の年度更新などを電子申請義務の対象とする一方、単独有期事業を行う場合は電子申請義務の対象外としています。
そのため、電子申請の義務化とは別に、単独有期事業についても業務効率化を目的として電子化を検討できます。
前述のとおり、単独有期事業は期限が短く、工事のたびに手続きが発生します。
紙の運用が残ると、本社と工事現場の所在地が離れている企業では特に工数がかさむケースもあります。
現場を管轄する監督署ごとに書類を作成し、本社で決裁を受け、承認が下りてから郵送する。
この流れを踏むと、10日や20日という期限は決して余裕のあるものではありません。
義務の対象外であることと、電子申請を利用できないことは別です。
労働保険関係手続では電子申請を利用できるため、業務効率化を目的として活用を検討できます。
参照:厚生労働省_労働保険関係手続の電子申請について
厚生労働省_労働保険の電子申請が義務付けられている 事業場は、今年度(令和8年度)の年度更 新から申告書の送付がなくなります!
8.電子化で単独有期事業の業務負担はどう変わる?
単独有期事業では、工事が発生するたびに申請業務が発生します。
たとえば、現場から工事に関する情報を受け取り、本社担当者が申請書を作成し、社内で確認・承認を行ったうえで行政機関へ提出する場合、工事数が増えるほど事務作業も積み重なります。
さらに、本社と工事現場が離れている場合には、書類の郵送や押印、申請状況の確認など、紙を前提としたやり取りが発生することもあります。
こうした業務では、電子申請そのものだけでなく、申請情報や提出状況をどのように管理するかまで含めて業務フローを見直すことがポイントです。
実際の導入事例として、Charlotteでは株式会社竹中工務店様に労働保険手続きの電子化にご活用いただいています。
株式会社竹中工務店様では、約300の作業所(工事現場)の労働保険(労災)申請を各本支店で集約して行っており、大阪本店だけでも単独有期事業が月20件程度発生していたとのことです。
導入前は1件あたり約80分かかっていた申請作業が、導入後は担当者の体感で約40分と、ほぼ半分になったとのことです(2023年6月公開の導入事例より)。
また、工事ごとに申請書の提出状況を一覧で確認できる申請管理シートも活用されています。
まとめ
単独有期事業とは、一括有期事業の要件に該当しない建設事業や立木の伐採事業について、工事・作業現場ごとに一つの事業として労災保険の手続きを行うものです。
建設事業では、請負金額や概算保険料などの要件によって一括有期事業と単独有期事業を区分します。
単独有期事業に該当する場合は、事業開始から10日以内の保険関係成立届、20日以内の概算保険料申告、事業終了から50日以内の確定保険料・一般拠出金の申告が必要です。
工事数が多い企業では、こうした期限管理や書類の作成・提出が担当者の負担になりやすいため、電子申請の活用も含めて業務フローを見直すことが重要です。
一括有期事業と単独有期事業のどちらの電子申請にも対応可能な > Charlotte(シャーロット)の詳細はこちら
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