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第49回
高年齢雇用継続給付金が段階的に縮小。
60歳以降の賃金制度を含め処遇の確認を

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公開日:2024年8月9日

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律により、高年齢者雇用確保措置が進展してきたことを踏まえ、「高年齢雇用継続給付」の給付率が見直されることとなりました。

高年齢雇用継続給付金は、「雇用保険の被保険者期間が5年以上ある60歳以上65歳未満の労働者」に対し、「60歳以後の各月に支払われる賃金が、60歳時点の賃金額と比較して一定程度減少した場合」に、65歳に達するまでの期間に支給されます。2025年4月から、給付率が縮小されることになります。

改正後に新たに60歳になる方について、高年齢雇用継続給付金の受給額を見込んで、60歳以降の賃金額を決定している場合、給付率の縮小により減少が見込まれる額について、処遇をどうするのかについて会社としての方針を決定しておく必要があります。

1. 改正の内容

2025年3月31日までは、60歳以上65歳未満の雇用保険の被保険者が、原則として60歳に達した時と比べて賃金が75%未満に低下した場合に、高年齢雇用継続給付金が支給されます。最も給付金が支給されるケースは、各月に支払われる賃金額が60歳時点と比べて61%未満に低下した時で、各月の賃金額の15%相当額が高年齢雇用継続給付金として支給されます。

2025年4月1日の改正により、2025年度から新たに60歳になる方(1965年4月2日以降に生まれた方)について、給付率が10%に縮小されます。(図1参照)

なお、激減緩和措置として、高年齢労働者の処遇改善に先行して取り組む事業主への支援策として、「高年齢労働者処遇改善促進助成金」が利用できます

図1

2. 制度の変遷

高年齢雇用継続給付は、65歳までの雇用の継続を援助、促進することを目的に1995(平成7)年に創設されました。
給付率は、雇用確保措置の義務年齢の引上げ等も含め、段階的に縮小されてきました。(図2参照)

図2

出典:厚生労働省 「高年齢雇用継続給付の見直し」

2003(平成15)年以前は25%、その後、15%に縮小され、高年齢者雇用安定法に基づく高年齢者雇用確保措置の義務年齢が2003(平成25)年度に65歳まで引き上げられたことに伴い、高年齢雇用継続給付は、実態として労使間で広く定着してきたとされ、年金支給開始までの雇用との接続を考慮し、高年齢雇用継続給付は当面の間は存置するものの、その在り方について改めて再検証すべということとされ、2025年(令和7年)の制度改正に繋がり、その後については、廃止も含め、更に検討がされていくことになっています。

3. あわせて確認、高年齢雇用安定法

2021(令和3)年4月に改正された高年齢雇用安定法の内容も確認しておきましょう。義務とされる事項、努力義務とされる事項は図3のとおりです。

努力義務については、高年齢者雇用安定法Q&A(高年齢者就業確保措置関係)で、「高年齢者就業確保措置を講ずることによる70歳までの就業機会の確保を努力義務としているため、措置を講じていない場合は努力義務を満たしていることにはなりません」とされており、何かしらの制度を検討し、導入しなければならないことになっています

60歳以降の人事制度を検討するうえで、高年齢雇用安定法の内容も確認しておきましょう。

図3

4. 実務への影響

高年齢雇用継続給付金の縮小は、段階的に施行されます。対象となる方がすべて2025年度から新たに60歳になる方(1965年4月2日以降に生まれた方)になるまでは、給付率が15%と10%の方が混在することになります。

60歳以降の賃金額の決定にあたり60歳到達時と比較し、高年齢雇用継続給付金の受給を加味して縮小されている場合、縮小分の5%をどうすべきかについて検討し、施行までに決定しておかなければなりません

労働人口が減少していくことが続いていく状況の中、今後ますます60歳以降の方の経験や活躍がなくてはならないものになっていくことでしょう。

高年齢者就業確保措置も含め、人事制度そのものを見直していきたいですね。

本コラムの著者

北條 孝枝

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス
社会保険労務士 メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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