企業の就業規則は、従業員の労働条件や職場のルールを明文化し、適正な労務管理を行うために欠かせないものです。
しかし、法改正のたびに見直しを行うのは手間がかかるため、厚生労働省では企業向けに「モデル就業規則」を提供しています。
モデル就業規則は、最新の法改正を反映した標準的なひな形として、多くの企業の参考になりますが、そのまま適用するのではなく、自社の実態に合わせてカスタマイズすることが重要です。
本記事では、モデル就業規則の基本的な概要と活用方法、見直し時の注意点について解説し、企業が適切な就業規則を整備するためのポイントを紹介します。
目次
1. モデル就業規則とは?
企業の就業規則は、労働基準法をはじめとする関連法令を遵守しながら、従業員の労働条件や職場のルールを明文化するものです。
しかし、法改正があるたびに規則を更新するのは手間がかかるため、厚生労働省では企業向けに「モデル就業規則」を作成・公開しています。
モデル就業規則は、最新の法改正を反映した標準的なひな形であり、特に中小企業などが就業規則を整備する際の参考になります。
労働時間、休暇、給与、ハラスメント対策、育児・介護休業といった幅広い項目について、法令に沿ったルールが記載されています。
ただし、このモデル就業規則はそのまま使用するものではなく、企業ごとの実態に合わせてカスタマイズすることが前提です。
例えば、勤務形態が多様な企業では、フレックスタイム制やテレワークに関する規定を追加する必要があるかもしれません。
また、独自の福利厚生制度や、特定の業種ならではのルールを加えるケースも考えられます。
2. モデル就業規則を活用する際のポイント
モデル就業規則は、法改正を反映した標準的なひな形ですが、モデル就業規則をそのまま採用するのではなく自社の実態に合った形でカスタマイズすることが重要です。
以下のポイントを意識しながら見直しを進めると、より実用的な就業規則を整備できます。
自社の実態に合っているか確認する
モデル就業規則を導入する際には、自社の雇用形態や働き方に即しているかを十分に確認する必要があります。
例えば、企業によっては正社員だけでなく、契約社員、パート、アルバイトといった多様な雇用形態の従業員が在籍している場合があります。
それぞれの雇用形態に適した労働条件や待遇が明確に規定されているかをチェックし、必要に応じて修正を加えることが重要です。
また、フレックスタイム制や裁量労働制、テレワークなどの柔軟な働き方を導入している企業では、勤務時間の管理方法や業務遂行のルールを適切に定める必要があります。
例えば、テレワークを実施する場合には、在宅勤務時の労働時間の取り扱いや、通信費・設備費の負担に関するルールを就業規則に明記することが求められます。
さらに、企業独自の制度を反映させることも忘れてはいけません。
福利厚生として特別休暇制度を設けている場合や、独自の評価制度を採用している場合、それらの内容をモデル就業規則に適用することで、実態に即したルールを整備することができます。
住宅手当や資格手当などの手当制度がある場合、それらの支給条件や金額を明文化し、従業員が適切に理解できるようにすることが望ましいでしょう。
法改正に対応しているかチェックする
最新の法改正を反映し、就業規則が適法な内容になっているかを確認しましょう。
特に2025年4月の育児・介護休業法改正に対応することが求められます。
育休関連の改正(対象拡大・柔軟な取得制度など)
- 子どもの年齢制限の拡大(小学校3年生まで)を反映したか
- 育児短時間勤務の適用範囲が広がる点を考慮しているか
- 男性の育休取得促進のため、必要な社内ルールが整備されているか
時短勤務やテレワーク規定の整備も重要
- 育児・介護のための時短勤務制度の条件や対象範囲が適切か
- テレワークを導入している場合、勤務時間・通信費の負担などの規定が適切か
法改正に対応した就業規則の整備は、企業にとって法的リスクを避けるだけでなく、従業員が安心して働ける環境を整える上でも欠かせません。
特に育児・介護に関する規定は、働き方の多様化に伴い、より柔軟な制度設計が求められています。
これを機に、自社の就業規則が最新の法改正に適合しているかを確認し、従業員が安心して長く働ける職場づくりを進めていきましょう。
2025年4月の育児・介護休業法改正を詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご参照ください。
退職金・休暇制度などの細かいルールも見直す
退職金・休暇制度などの細かいルールも見直しておくことが重要です。
これらの制度は従業員の働きやすさや企業の信頼性に直結するため、最新の法改正やモデル就業規則の改訂内容を踏まえ、適切に整備する必要があります。
モデル就業規則の改訂(例:退職金不支給条項の削除)
- 2023年版のモデル就業規則では、従来の「退職金不支給条項」が削除されている
→ 企業独自の退職金制度を運用している場合、改訂内容を踏まえて適切な記述に修正する必要がある。
有給休暇や時間外労働に関する取り決めの確認
- 有給休暇の取得ルール(5日取得義務など)が適切に反映されているか(図1参照)
出典:厚生労働省「モデル就業規則(令和5年7月)」(PDF)
- 36協定に基づく時間外労働の上限が遵守されているか
退職金や休暇制度、時間外労働に関する規定は、従業員の働きやすさに直結する部分でもあります。
モデル就業規則の改訂内容を正しく把握し、自社の制度と照らし合わせながら、最新の法規制に沿った適切な運用ができるよう整備していくことが重要です。
3. 見直し時の注意点
就業規則を見直す際には、単にモデル就業規則をそのまま採用するのではなく、自社の実態に合わせた運用を意識することが大切です。
まず、厚生労働省が提供するモデル就業規則は、標準的なひな形であり、すべての企業にそのまま適用できるわけではありません。
企業ごとの雇用形態や働き方の違いを考慮し、必要に応じて内容をカスタマイズすることが求められます。
特に、給与体系、休暇制度、評価制度など、企業独自のルールを適切に反映することが重要です。
就業規則の変更については、原則として労働者と企業側の合意が必要です。
企業側が一方的に就業規則を変更し、労働者の労働条件を不利益に変更することはできません。
ただし、変更が合理的であり、かつ労働者に周知されている場合には、就業規則の変更により労働条件を変更することが認められることがあります。(図2参照)
出典:厚生労働省「合意による労働条件の変更/就業規則による労働条件の変更」(PDF)
さらに、改定した就業規則は、労働基準監督署への届出が必要となる場合があります。
常時10人以上の労働者を雇用している企業は、就業規則の変更後に速やかに届出を行うことを忘れないようにしましょう。
適切な手続きを行うことで、法的リスクを回避し、健全な労務管理を実現できます。
まとめ
以上、モデル就業規則の活用と見直しのポイントについて解説しました。
モデル就業規則は企業の就業規則作成の参考となる標準的なひな形ですが、そのまま採用するのではなく、自社の実態に合わせたカスタマイズが必要です。
特に、雇用形態や勤務制度の違いを踏まえ、柔軟な働き方や企業独自の制度を反映させることが重要です。
また、法改正に対応した適正な就業規則の整備は、企業のコンプライアンス強化と従業員の働きやすさ向上につながります。
特に育児・介護休業法改正などの最新の法改正を踏まえ、必要な規定を適切に反映しましょう。
就業規則の適切な見直しと整備により、企業の信頼性を高め、従業員が安心して働ける環境を構築していくことが求められます。
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「Charlotte」の開発会社である株式会社ユー・エス・イーは社会保険システム連絡協議会の幹事会社です。
「社会保険システム連絡協議会」とは、総務省行政管理局及び厚生労働省等と、社会保険・労働保険関係手続きの電子申請が可能なソフトウェアを開発・販売・サポートする社会保険システム業界との窓口として、相互の事務連絡、情報交換及び協議等の円滑化を図り、社会保険行政の円滑な執行に資することを目的とした団体です。
「Charlotte」の開発会社である株式会社ユー・エス・イーは税務システム連絡協議会の加盟会社です。
「税務システム連絡協議会」は、税務・会計に関するシステム・ソフトウェアに携わる企業を対象として作られた、税務行政の効率化・省力化とともに納税者の利便性の向上を図り、税務行政のICT化に寄与し、適正な申告納税制度の確立に努めることを目的とした集まりです。1994年に設立され、2022年3月末時点において、税務及び財務関連システムを開発・販売・サポートとする企業33社が加盟しています。
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