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第59回
2025年4月、雇用保険の新たな2つの給付金【前編】
施行日前からの産後パパ育休の取得者や時短勤務者の経過措置は?

異次元の少子化対策のひとつとして、「共働き・共育て」の推進のため、育児介護休業法、雇用保険法、次世代育成対策推進法の三法が改正されました。

そのうち雇用保険では、2025年4月から新たに「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金」の2つが創設されることとなりました。経過措置や支給申請方法について、前編と後編で解説します。

前編では、制度の概要と、施行日後であれば受給資格のある対象者について施行日以前から対象となる出生時育児休業(産後パパ育休)を取得しているケースや、育児時短勤務をしているケースについて解説します。

1. 出生後休業支援給付金とは

出生後休業支援給付金は、子の出生後の一定期間に、両親ともに育児休業の取得促進のために所得減少を補填する給付金として創設されました。「子の出生後の一定期間」は、産後パパ育休の期間となっており、男性の育児休業の取得率向上の壁となっている、所得減少という課題を解決する目的があります。

給付条件は、下記のとおりです。

  • 子の出生直後の一定期間(男性は子の出生後8週間以内、女性は産後休業後8週間以内)に、雇用保険被保険者とその配偶者がともに14日以上の育児休業を取得すること
  • 雇用保険被保険者は、出生後休業を開始した日前2年間にみなし被保険者期間が12か月以上あること

給付条件を満たした場合、休業開始前賃金の13%相当額が、育児休業給付金(出生時育児休業給付金を含む)の67%と合わせて80%の給付が受けられます。雇用保険の給付金のため非課税、つまり所得税・住民税がかからないため、課税給与と比較した場合、手取額が100%になると試算されています。(図1参照)

図1出生後休業支援給付の創設

なお、配偶者がフリーランスや会社の役員等の雇用以外の働き方をしている場合や、ひとり親の場合は「配偶者が育児休業していること」という条件を求めない配慮がされています。

2. 育児時短就業給付金とは

育児時短就業給付金を創設した主な目的は、次の3つです。

  • 「共働き・共育て」の推進や、片方の親に育児の負担が偏る結果として、雇用の継続が困難になるような状況を防ぐ
  • 子の出生・育児休業後の労働者が従前の勤務水準に早期復帰することで、育児とキャリア形成の両立を支援する
  • 柔軟な働き方として、時短勤務制度を選択できるようにすることで雇用の継続を図る

育児時短勤務開始日前2年間にみなし被保険者期間(時短勤務開始日を被保険者でなくなった日とみなして計算される被保険者期間に相当する期間)が12ヶ月以上ある被保険者が、2歳未満の子を養育するための時短勤務中の賃金が、時短勤務開始前の賃金に比べて減少した場合に月単位で受給できます。なお、給付対象となる時短勤務の労働時間または労働する日数については、「制限は設けないこと」とされました。

給付率については、時短勤務中の各月に支払われた賃金額の10%で、高年齢雇用継続給付と同様に、給付額と賃金額の合計が時短勤務開始前の賃金を超えないよう、一定の賃金額を超えた場合には給付率が逓減されます。(図2参照)

図2育児時短就業給付の創設

3. 経過措置はどうなる?

2つの給付金は、施行日が2025年4月1日です。当然、施行日以前から施行日後まで出生時育児休業を取得しているケースや、2歳未満の子を養育するために育児時短勤務をしているケースがあります。その方たちは、新たな給付金を受けられるかが問題になります

両ケースともに、施行日に条件を満たしていれば、給付金を受給できます。詳細な事例についての解説資料等は、今後、厚生労働省から示されますので、情報収集していきましょう。

出生後休業支援給付金も育児時短就業給付金も、育児両立支援制度等に含まれるため、企業には、従業員本人または配偶者が妊娠・出産の申し出があった際には、個別に制度の説明をし、取得等について意向確認する義務があります。制度の内容等を理解し、対象者に説明できるよう、準備を進めておきましょう。2025年4月1日以降の妊娠・出産~育児の両立支援制度等の制度・労基法・育児介護休業法・雇用保険法の給付・健康保険法の保険料免除の全体像は図3のようになります。

図3改正後の妊娠・出産~育児に関する制度の全体像

まとめ

以上、新たに創設される「出生後休業支援給付金」と「育児時短就業給付金制度」の概要と経過措置について解説しました。
後編では、具体的な支給申請方法等について解説します。

本コラムの著者

北條 孝枝

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス株式会社ブレインコンサルティングオフィス
社会保険労務士 メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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