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第84回
体制を整えただけでは不十分!実効性が問われるハラスメント対策

2025年になり、人権問題への企業の対応が大きく取り上げられました。「ビジネスと人権」に関しては、2011年に国連の指導原則で、すべての企業に対して「人権を尊重する責任」が制定され、日本でも2020年に「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-2025)」、2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定され、国際的にも国内でも人権に配慮していない企業との取引を見直す動きがあるのはご承知のとおりです。ハラスメントは、個人の尊厳や自由を傷つける言動や行動であり、人権問題の一つでもあります。「体制を整えるだけの対策」で終わってしまっているケースも少なくありません。今、求められているのは「実効性のある」ハラスメント対策です。

1. 対策している「つもり」では何も変わらない

多くの企業がハラスメント防止を掲げ、マニュアルを作成し、研修も年に一度は実施していることと思います。問題はその実態です。従業員アンケートでは「相談したけど、何も変わらなかった」、会社としては、周知しているはずなのに、相談窓口があるのか分からない、メールなのか電話なのか、どのように相談したらよいのか分からないという結果になることもよくあります。
また、研修も「年1回受けたら終わり」というスタンスでは、職場の空気は変わりません。2025年3月31日にある企業が自社のカスタマーハラスメントと位置付けられた人権問題について、第三者委員会の報告書を公表しましたが、そこで強調されたのは、「実効性のある対策」でした。

2. 人権に関するリスクとは

人権に関する「リスク」は、企業や組織にとってのリスクではなく、企業活動を通じて人権を侵害または侵害される可能性のある自社の従業員だけでなく、取引先の従業員や顧客・消費者・地域住民の権利が侵害されるリスクを放置することが、結果的に訴訟や人材流出、不買運動、株価の下落や投資の引き上げ等の企業にとってのリスクが生じます。人権に関するリスクは、そのまま経営に関するリスクにもなり得るといえます。

出典:法務省「ビジネスと人権」への対応
※一部省略

3. 実効性を生むための4つの柱

では、「実効性のある対策」になるのでしょうか。ここでは4つのポイントを挙げてみます。

(1)トップの方針によるコミットメント

組織の風土を変えるには、まず経営層・管理職の本気度が問われます。「うちの会社は大丈夫」「現場のことは現場に任せる」という態度では、現場の信頼は得られません。トップが自らハラスメント問題について発信し、「許さない」という方針を明確に示すことで、「やってはいけないことだ」という空気を社内浸透させます。

(2)信頼される相談体制

相談窓口では、個人のプライバシーや情報は守られることを周知すると同時に、相談しやすいよう窓口の担当者を男女ともに揃えておきましょう。場合によっては外部専門機関を活用すると、相談のハードルを大きく下げます。相談者が不利益を被らないよう守られる仕組みとし、相談後の丁寧なフォローとして、必要に応じて産業医や心理職等の専門家が関与できるようにすること、人事部門やコンプライアンス担当部門と連絡を取る等にすることで、「本当に相談できる窓口」となります。事実確認の結果、ハラスメント行為はなかったと確認された際にも、相談者への丁寧な説明をしましょう。

(3)行為者への適切な対応

相談者が一番つらいのは、「相談したのに、何も変わらなかった」という事実です。調査に時間がかかりすぎたり、処分が曖昧だったりすると、会社への不信感が募ります。ハラスメント行為があったかの公正で迅速な調査と、ハラスメント行為が確認できた場合は、就業規則に則った必要な処分を適切に行い、再発防止のための教育も行います。

(4)継続的な教育と風土づくり

研修は、定期的に、継続して実施することが大切です。例えば、定期的な対話の機会や、心理的安全性を高めるチームビルディング、コミュニケーションのための学びなど、職場全体の風通しを良くする工夫が求められます。いつでも受講できるようなWEB研修の仕組みを作って周知しただけでは、従業員にとって認識されないこともあります。受講後に、内容のレポートや確認テスト等を実施する等の工夫により、必ず受講するような仕組みを作っておきましょう。

組織づくりや人材戦略の観点からの取り組みについては、以下の記事もあわせてご参照ください。

4. ハラスメント対策とは「制度」ではなく「姿勢」

実効性のあるハラスメント対策に必要なのは、組織としてどれだけ「人を大切にする姿勢」を持てるかどうかです。
誰もが、気づかぬうちに行為者にも被害者にもなりうるという自覚をもつこと。そして、「うちの職場は大丈夫」と思った瞬間こそが、最もリスクの高い状態だという意識をもつこと。この両方が、真にハラスメントのない職場づくりの第一歩になります。
「ビジネスと人権」に注目が集まっている今、整えた体制を実効性があるものになるよう、自社の対策や実情を再検討する機会にしていきたいものです。

本コラムの著者

北條 孝枝

北條 孝枝(ほうじょう たかえ)

株式会社ブレインコンサルティングオフィス株式会社ブレインコンサルティングオフィス
社会保険労務士 メンタルヘルス法務主任者

会計事務所で長年に渡り、給与計算・年末調整業務に従事。また、社会保険労務士として数多くの企業の労務管理に携わる。情報セキュリティについての造詣も深く、実務担当者の目線で、企業の給与、人事労務担当者へのアドバイスや、業務効率化のコンサル等に取り組むとともに、実務に即した法改正情報、働き方改革などの企業対応に関する講演も多数行っている。

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