2025年10月から、新たに「教育訓練休暇給付金」が開始予定となっています。
これは、従業員がリスキリングや資格取得などの教育訓練を目的として会社を休む際に休暇中の所得減少を補うために雇用保険から支給される給付制度です。
これまでの「教育訓練給付金(本人申請型)」と異なり、事業主が関与する点が大きな特徴であり、人事・労務担当者にとっても休暇取得の確認や申請に関与する対応が求められます。
本記事では、制度の概要から注意点までをわかりやすく解説します。
目次
1. 教育訓練休暇給付金とは
教育訓練休暇給付金は、労働者が教育訓練を受けるために休暇を取得した際、休暇中の所得減少を補うために雇用保険(国の制度)から支給される給付金です。
従来の教育訓練給付金は本人が費用の一部を補助される仕組みでしたが、新設される教育訓練休暇給付金は「休暇を取ること」そのものを支援する点に特徴があります。
企業としても、従業員のスキルアップを後押しする仕組みとして注目されています。
企業の担当者は、休暇取得の実態確認や申請手続きを担うことになるため、制度理解と準備が欠かせません。
2. 教育訓練休暇給付金を受給する流れ
教育訓練休暇給付金は、ハローワークでの認定手続きを経て受給します。
雇用保険の各種給付と同様に、管轄ハローワークでの認定を経て支給されます。事業主による確認書類の提出が必要となります。
受給希望者である従業員はまず、教育訓練休暇給付金を受けたい意思を事業主に伝え、事業主は休暇期間や賃金支払状況を確認した上で、管轄ハローワークに届け出を行います。
ハローワークは内容を確認し、その結果を事業主に通知、事業主は従業員にも知らせた後、従業員は受給条件や注意点を理解した上で支給申請を行い、ハローワークが受給資格を確認・決定します。
受給資格が確定した後は、30日ごとに教育訓練休暇の取得状況を申告し、ハローワークの認定を受けたうえで給付金が支給されることが想定されます。
3. 教育訓練休暇給付金の給付額と給付期間
教育訓練休暇給付金は、休暇開始日から起算して 1年間の受給期間内で支給されます。
この期間内に取得した教育訓練休暇については、複数回に分けて取得した場合でも、それぞれの日について給付を受けることが可能です。
また、給付日数は、従業員が雇用保険に加入していた期間に応じて決まります。特に、休暇開始前に過去5年以上の雇用保険加入期間がある場合は、過去の給付歴に応じて給付日数が決定されます。(詳細は厚労省のQ&A参照)

給付日額は、原則として休暇開始前の直近6か月間の賃金日額を基準に算定されます。これにより、休暇中の給付額がおおよそ通常の賃金水準に応じて決まる仕組みとなっています。

4. 教育訓練休暇給付金の受給要件・対象者
対象となるのは、雇用保険に加入している従業員のうち、一定の勤続要件や休暇の取得目的(教育訓練)が認められる方です。
人事・労務担当者としては、
- 産休・育休など他の法定休暇と重複していないか
- 申請者が給付対象の被保険者であるか
- 取得する教育訓練が制度対象に含まれるか
といった点を事前に確認する責任があります。要件を満たさない場合は不支給となるため、従業員への説明も含めて丁寧に対応する必要があります。
| 区分 | 内容 | チェックポイント |
| 雇用保険 | 雇用保険の被保険者であること | 被保険者資格喪失者は対象外 |
| 勤続期間 | 一定の勤続要件あり(詳細は厚労省通知参照) | 入社直後の休暇は対象外の可能性 |
| 休暇の内容 | 教育訓練に該当するもの | 私的な旅行や余暇は不可 |
| 他休暇との重複 | 産休・育休などとの重複は不可 | 併給不可(育児休業給付金が優先) |
5. 教育訓練休暇給付金を受給する際の注意点
教育訓練休暇給付金の受給にあたっては、休暇の重複管理や申請対象者の確認、書類の正確性が重要です。
産休・育休など他の法定休暇と重複していないかを確認し、雇用保険加入状況や勤続期間に応じた給付日数を正確に把握します。
休暇を分割取得する場合も日数や給与計算を調整し、添付書類に誤りがないか確認することが必要です。
さらに、社内規程への明文化や従業員への周知、厚生労働省通知の定期確認も徹底し、制度を安心して利用できる環境を整えることが求められます。
まとめ
教育訓練休暇給付金は、従業員の資格取得やスキルアップを支援する新しい制度であり、企業としてもリスキリング推進の後押しとなります。
一方で、受給手続きや管理は事業主の責任に委ねられるため、人事・労務担当者は正確な休暇管理、対象者の確認、書類の整備、分割取得時の給与調整など、実務面での対応をしっかり押さえることが不可欠です。
また、社内規程への明文化や従業員への周知、厚生労働省の通知確認を徹底することで、制度を安心して活用できる環境を整えることができます。
これらを意識して運用することで、従業員の学びの機会を支えつつ、企業としての法令遵守や透明性も確保することが可能です。
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