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高年齢雇用継続給付金の申請実務|
定年再雇用後の継続業務をどう効率化するか

公開日:2026年1月19日

60歳以降の従業員を複数名雇用している企業にとって、高年齢雇用継続給付金は「年に数回発生する定型業務」として定着しています。

しかし、初回申請の期限管理、賃金計算の正確性、電子申請への対応など、実務上の判断ポイントは意外と多く、対象者が増えるほど人事担当者の負担は確実に増えていきます。

本記事では、制度の基本を押さえたうえで、申請業務を「通年の業務フロー」として捉え直し、どう効率化するかという視点で解説します。

1. 高年齢雇用継続給付金とは?

高年齢雇用継続給付金は、60歳以降に賃金が低下した従業員に対して、雇用保険から支給される給付金です。

この給付金は、60歳以上65歳未満の雇用保険被保険者について、60歳到達時点と比較して賃金が一定割合未満に低下した場合に、雇用の継続を支援する目的で支給される給付金です。

なぜ企業が手続きを担うのか

多くの給付金は本人申請が原則とされています。
この給付金は、賃金額や労働日数など企業が管理している情報をもとに支給額が決定されます。

そのため、実務上は人事・労務担当者が申請主体となり、ハローワークへ届け出る運用が前提とされています。

なお、65歳以上は制度の対象外です。
「高齢者雇用継続給付金 65歳以上」という検索が多い点からも分かるように、誤解されやすいポイントのため、社内説明時には明確にしておきましょう。

上記のような観点から、企業を経由して給付金を申請する仕組みとなっています。
企業の担当者にとっては、定年再雇用と同時に始まる、継続的な業務として位置付けられるのです。

2. 支給額の考え方と申請期限

支給額を決めるのは、60歳到達時の賃金と、現在の賃金の比較です。
具体的には、以下のように判定されます。

  • 現在の賃金が、60歳到達時賃金の75%未満に低下している場合に支給対象
  • 低下率に応じて、賃金の一定割合(※2025年度以降は原則最大10%)が支給される

かつては最大15%でしたが、段階的に引き下げられ、現在は最大10%となっています。この引き下げ自体は制度設計上の話ですが、実務上重要なのは「率そのもの」よりも、賃金設計によって支給・不支給が分かれる点です。

初回申請の期限は4か月以内

初回申請には60歳到達月から4か月以内という期限があります。

万が一、初回申請期限を過ぎた場合、遡及して申請することができず、その月分の給付が受けられなくなるリスクがあります。

定年再雇用のタイミングは企業ごとに異なるため、誕生日ベースで到達月を管理し、給与計算と並行して申請準備を進める必要があります。

対象者が多い企業では、「誰がいつ60歳になるか」を一覧化し、申請漏れを防ぐ仕組みが不可欠です。

3. 定年延長・再雇用制度と給付金の関係

定年延長は定年年齢そのものを引き上げる制度、再雇用制度は定年退職後、雇用形態や賃金を見直して再度雇用する制度であるため、定年延長と再雇用は、制度上は似ているものの異なる仕組みです。
どちらの制度でも高年齢雇用継続給付金の対象となり得ますが、賃金設計が大きな分かれ目になります。(表1)

表1

制度 雇用形態の変化 賃金設計 給付金対象の可能性
定年延長 変わらない(継続雇用) 原則として変動なし 対象外になりやすい
再雇用 一度退職し再契約 賃金見直しが一般的 対象になりやすい

定年延長の場合、60歳前後で賃金が大きく下がらないケースが多く、結果として75%基準を満たさず、給付金の対象外となることがあります。

制度設計段階で注意すべきこと
人事制度を設計する際、以下の点を事前に検討しておくと、後の混乱を避けられます。

制度設計段階で給付金を前提にするのか、賃金のみで設計するのかを整理しておかないと、「申請したが支給されなかった」という事態にも繋がるので注意しましょう。

  • 定年延長を選択する場合、給付金が出ない前提で賃金水準を設計する
  • 再雇用制度を採用する場合、賃金低下率と給付金支給の関係を従業員に説明できるようにする
  • 「給付金ありき」で賃金を設計すると、制度改正時に影響を受けやすい

給付金は雇用保険制度に依存するため、将来的な変更リスクも考慮した制度設計が求められます。

4. 高年齢雇用継続給付金の申請フロー

高年齢雇用継続給付金の申請は、誰が・どこまでを担うのかを正確に把握しておくことが重要です。

特に実務では、

  • 企業が担う手続き
  • 従業員本人の確認が必要な場面
  • ハローワーク側で判断される工程

など「どこまでが自社の業務なのか」が見えにくくなりがちです。
表2を参考に誰がどの処理を担うのかを確認しておきましょう。

表2

企業(人事・労務) 従業員本人 ハローワーク
申請前の確認 60歳到達・賃金低下の有無を確認
書類準備 賃金証明書・申請書を作成 内容を確認
同意手続 同意書の取得・保存 署名または同意
申請受付 書類一式を提出 書類を受理
審査 受給資格・支給可否を判断
結果通知 通知書を受領・配布 通知内容を確認 通知書を交付
支給 給付金を受領 指定口座へ振込

初回申請の流れ

初回は、受給資格の確認と支給申請を同時に行います。
60歳到達時賃金の証明や、賃金台帳・出勤簿など、準備書類が多いのが特徴です。

初回申請では、以下の書類を準備します。

  • 高年齢雇用継続給付支給申請書
  • 60歳到達時等賃金証明書
  • 雇用保険被保険者証(写し)
  • 賃金台帳、出勤簿など

初回は60歳到達時の賃金を証明する作業が加わるため、給与データの整理が必要です。
特に、手当の取り扱いや勤務形態の変化がある場合、賃金の範囲を正確に把握しておかないと、後で修正が発生します。

2回目以降の申請

2回目以降は、原則として2ヶ月に1回申請が発生します。
ここで重要なのは、この給付金申請業務が一過性ではなく65歳到達まで継続する反復業務である点です。

対象者が1名なら年6回程度ですが、10名いれば年60回、30名なら年180回の申請が発生するため、業務担当者の実務負担は一気に増加します。

電子申請と紙運用の限界

2020年4月以降、資本金1億円超の企業は、雇用保険関係の手続きが電子申請義務化の対象となりました。
高年齢雇用継続給付金も例外ではありません。

申請書をハローワークに持参・郵送する運用は、対象企業では原則として使えなくなっています。電子申請への移行が済んでいない場合や手続きが初めての場合は、どのように申請手続きを行うのかを確認しておきましょう。

5. 給付金が不支給となる代表的なケース

給付金を申請したにもかかわらず、給付金が支給されないケースがあります。
トラブルを回避するために、実務上以下のパターンに注意しましょう。

1. 60歳到達時賃金を下回らなかった場合
最も多いのは、現在の賃金が60歳到達時賃金の75%以上であるケースです。
制度要件を満たしていなければ、申請しても支給されません。

  • 再雇用後に業績手当が支給され、想定より賃金が上がった
  • 定年延長により、賃金がほぼ据え置かれた
  • 賞与を月割り計算すると、実質的に75%を上回った

特に、賞与や変動手当の取り扱いを誤ると、本来対象外であるにもかかわらず申請してしまい、後で返還を求められるリスクがあります。

2. 賃金計算・手当按分ミス
60歳到達時の賃金を証明する際、以下のような計算ミスが発生することがあります。

  • 通勤手当や家族手当など、賃金に含めるべき項目を漏らした
  • 月ごとの賃金変動を正確に反映していなかった
  • 勤務日数の変動を考慮せず、額面だけで比較した

通勤手当などをまとめて支給している場合、対象月への按分を誤ると、賃金額の判定が変わり不支給となることがあります。

これらは初回申請時に発生しやすく、ハローワークから指摘を受けて修正対応に追われるケースも少なくありません。

「申請したが支給されなかった」を防ぐために、60歳到達時の賃金データを正確に記録したり、手当の内訳を明確にしたりするなどの申請前の準備をしておくとよいでしょう。

対象者が多い企業では、このチェック作業自体が負担になるため、システムで自動判定できる仕組みが望ましいといえます。

6. 大量申請をどう捌くか|電子申請サービスの活用

高年齢雇用継続給付金は、

  • 通年で発生する
  • 原則2か月ごとに繰り返す
  • 対象者が増えるほど業務量が増大する

という特徴を持つ業務です。

こうした業務を人の記憶やExcel管理に依存していると、ミスや属人化は避けられません。
電子申請サービスを取り入れることで、一括管理や申請量が増えた際でも効率的に業務を処理できます。
Charlotteでも、高年齢雇用継続給付金の申請を効率化するためのクラウドサービスを備えています。

こういったサービスを導入することで、

  • 複数名分の申請を一元管理、一括申請
  • 電子申請対応による転記作業の削減
  • 申請漏れ・期限超過の防止対策
  • 過去申請情報を使った申請書の生成による作業効率化

といった効果が期待できます。

Charlotteについて、詳しくはこちらをご覧ください。
Charlotte(シャーロット) – 労務領域の電子申請・業務効率化を支援

「制度は分かっているが、回すのが大変」と感じ始めたタイミングこそ、仕組み化を検討すべき段階といえるでしょう。

まとめ

高年齢雇用継続給付金は、定年再雇用と同時に始まり、65歳まで続く通年業務です。

初回申請だけでなく、2か月ごとの定期申請、賃金計算の正確性、電子申請への対応など、実務上の判断ポイントは多岐にわたります。

対象者が少ないうちは手作業でも対応できますが、10名、20名と増えていくと、工数は確実に増加し、ミスのリスクも高まります。

「この給付金は一度きりではなく、ずっと続く業務だ」という認識を持ち、件数が増える前に、仕組みで回す準備をしておくことが、人事担当者の負担軽減と業務品質の維持につながります。

電子申請の義務化も進むなか、給付金申請を「属人的な手続き」から「標準化された業務フロー」へと転換することが、今後ますます重要になっていくでしょう。

本コラムの著者

塩坂 うみ

フリーライター

社会保険関連や企業の人事・労務向けのコラムを中心に執筆するフリーライター。美容関連やクリニック紹介、マニュアル作成などの執筆経験を活かし、読者が理解しやすい、実務に即した記事づくりを心がけている

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