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第18回
2つ以上の事業所に雇用される際、適用となる二以上勤務被保険者が
増える可能性も。実務上の整理を行っておきましょう。

ここがポイント!

  • 二以上勤務被保険者の適応範囲に変更あり
  • 二以上事業所勤務届の書き方や注意点

社会保険労務士法人アールワンの西嶋です。

働き方改革で企業が副業を取り入れる場合で、従業員が複数の事業所(2か所以上)に雇用され、報酬を受け取る場合、健康保険・厚生年金の二以上勤務被保険者に該当する可能性があります。

従来は会社役員の方が対象になることがほとんどでしたが、来年以降の社会保険の適用拡大により、対象となる方が増加すると言われております。

今回は、社会保険の適用拡大と合わせて二以上勤務被保険者についてお伝えします。

1. 二以上勤務被保険者とは?

社会保険(健康保険・厚生年金)の加入要件を満たし、複数の事業所(2か所以上)に雇用されて報酬を受けている方が対象となります。

社会保険加入要件

① 法人の代表者・役員(役員は定期的な出勤や役員会への出席の有無で判断)
② 1週間の所定労働時間、1ヶ月の所定労働日数が、正社員の3/4以上の方
③ 従業員501人以上の事業所に勤務して一定の条件(週20時間以上 報酬88,000円以上など)を満たす方

二以上勤務被保険者が該当する場合としない場合

<該当する場合>

① A事業所 代表取締役 報酬あり
  B事業所 役員 報酬あり(定期的に勤務し役員会にも出席)
② A事業所 従業員 給与あり(社会保険の加入要件満たしている)
  B事業所 従業員 給与あり(社会保険の加入要件満たしている)

※ 社会保険の適用要件を満たしている方で「既に他社で加入しているから」という理由で二以上被保険者の加入義務が無くなることはありません。

<該当しない場合>

① A事業所 従業員 給与あり
  B事業所 役員 報酬なし
② A事業所 役員 報酬あり
  B事業所 役員 報酬あり(勤務の実態なし)

2. 社会保険適用拡大について

来年の2022年以降、段階的に社会保険の加入要件改正が行われていきます。
新規で加入要件を満たす方が増える一方で、今後は兼業・副業を行っている方が二以上勤務被保険者となるケースも出てきそうです。

表1
社会保険適用拡大に関する表

社会保険の加入要件改正について詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

3. 二以上勤務被保険者となったときとその後の手続き申請

二以上勤務被保険者となったときの手続き申請

例:A事業所で既に社会保険に加入済みで、新たにB事業所で社会保険に加入することになった。

①A事業所、B事業所どちらを主選択事業所(主となった事業所)にするのか被保険者が決める。

  • 主選択事業所:A事業所
  • 非選択事業所:B事業所

② 新たに勤務することになったB事業所にて健康保険 厚生年金保険被保険者資格取得届の申請を行う。

③ 図1の健康保険 厚生年金被保険者 二以上事業所勤務届を被保険者または、主選択事業所(A事業所)が提出する。

提出書類・添付種類等は日本年金機構HPからダウンロードしてください
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20131022.html

図1
健康保険 厚生年金被保険者 二以上事業所勤務届の例

提出先:
協会けんぽの場合  …… 主選択事業所の管轄の年金事務所へ申請する。
健康保険組合の場合 …… 主選択事業所が加入している健康保険組合と管轄の年金事務所へ申請する。

主選択事業所と非選択事業所が加入している社会保険の組み合わせは複数あります。
表2で複数パターンを表しましたのでご確認ください。

表2
主選択事業所と非選択事業所が加入している社会保険の組み合わせ表

④ 勤務届提出後、主選択事業所(A事業所)の管轄年金事業所からA事業所とB事業所へ決定通知書が送付される。
※ 決定通知書には保険料の按分の詳細についても記載があります。

<二以上勤務被保険者となった場合の保険料について>
各事業所の報酬を合算し、標準報酬月額が決定されます。
報酬決定後は、各事業所の報酬月額で保険料の按分計算を行います。

表3:保険料の按分例
二以上勤務被保険者となった場合の保険料の按分例

二以上勤務被保険者となった後の手続き申請(電子申請可能です)

  • 健康保険 厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届
  • 健康保険 厚生年金保険被保険者月額変更届
  • 健康保険 厚生年金保険被保険者賞与支払届

※ 月額変更届の場合だけ少し注意が必要です。詳細は、本コラム内「5. 給与と賞与の手続きはどうなるの?」を参照ください。

4. 勤務先の事業所ごとに「算定、月額変更、賞与」の申請方法が異なる

① 健康保険 厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届
② 健康保険 厚生年金保険被保険者月額変更届
③ 健康保険 厚生年金保険被保険者賞与支払届

上記①から③は主選択事業所と非選択事業所それぞれが申請を行いますが、提出先は、各事業所共に、主選択事業所を管轄する年金事務所(健康保険組合)へ提出・申請を行います。

<主選択事業所の場合>
二以上勤務被保険者の「算定、月額変更、賞与」:該当しない被保険者の方達と一緒に申請が可能です。
※ 電子申請の場合、CSVデータに二以上勤務被保険者の方を含めても問題ありません。

<非選択事業所の場合>
二以上勤務被保険者の「算定、月額変更、賞与」:該当しない被保険者の方達と一緒に申請ができません
※ 提出先が異なるため、二以上勤務被保険者の方のみの申請を別途行う必要があります。

5. 給与と賞与の手続きはどうなるの?

どちらかの事業所の給与に変更あった場合

月額変更届の提出を行い、各事業所の保険料徴収額の按分が変更となります。
提出する手続き名:健康保険 厚生年金保険被保険者月額変更届

<毎月の給与計算>
例:B事業所の報酬が240,000円へ変更となり、2等級の変動があった場合。主選択事業所はA事業所

  • A事業所:300,000円(報酬変更なし)
  • B事業所:240,000円(元々200,000円)
事業所作業 主選択事業所管轄の
年金事務所作業
報酬に変動があったB事業所が月額変更届を主選択事業所管轄の年金事務所に提出します。

② 決定通知書が各事業所へ送付されるので、対象となる月分の給与から控除を行います。

① 手続き受理後に保険料の按分が行われ、各事業所へ決定通知書を送付します。(B事業所の徴収額が増加)

※ 複数事業所の合算報酬が2等級以上変動した場合に該当するのではなく、各事業所だけで報酬が2等級以上変動した場合に該当します。

◆POINT◆
各事業所に届く決定通知書を確認の上、被保険者から控除する保険料額の変更を忘れずに行いましょう。

各事業所の賞与が同じ月に支払われる場合

賞与支払届の提出を行い、各事業所の保険料徴収額の按分が行われます。
※ 支給月が異なる場合、按分は行われません。
提出する手続き名:健康保険 厚生年金保険被保険者賞与支払届

<賞与計算>
例:12月にA事業所:300,000円 B事業所:250,000円の賞与が支給された場合。主選択事業所はA事業所

事業所作業 主選択事業所管轄の
年金事務所作業
各事業所共に、賞与支払届を主選択事業所管轄の年金事務所に提出します。

② 決定通知書が各事業所へ送付されるので、対象となる月分の賞与から控除を行います。

① 手続き受理後に保険料の按分が行われ、各事業所へ決定通知書を送付します。

◆POINT◆
賞与の場合、事前に決定通知書はありませんので、賞与支払者側で按分計算を行い、保険料控除を行う必要があります。
グループ会社であれば、他事業所の賞与支給額の把握が可能かもしれませんが、そうでない場合、いったんは通常の保険料控除を行い、後日届く、決定通知書を確認後、被保険者から調整控除を行う必要があります

月額変更届について詳しく知りたい方は以下の記事もご参照ください。

まとめ

近年、副業や兼業を認める会社が増えています。社会保険適用拡大によって、新規加入者や二以上勤務被保険者となる方の発生が予想されますので、自社の誰が対象となるのかの確認と、その後発生する手続きについて整理しておきましょう

2か所で社会保険への加入を希望されない方もいるので、その場合は労働条件(所定就業時間を20時間以下に抑える、出勤日数を減らすなど)の変更を検討する必要がありますのでご注意ください。

本コラムの著者

社会保険労務士法人アールワン

社会保険労務士法人アールワン

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