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第52回
算定基礎届とは?
対象者と書き方、標準報酬月額の算出方法

算定基礎届とは、電子申請の義務化対象手続きであり、労働者の標準報酬月額を決定するための書類です。標準報酬月額は社会保険料を計算するベースとなるため、労働者にとっても事業主にとっても重要な書類といえるでしょう。

算定基礎届の提出期限は、毎年7月10日まで(10日が土曜または日曜の場合は翌営業日まで)に提出を行います。協会けんぽに加入している場合は事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。健康保険組合に加入している場合は事務センターまたは管轄の年金事務所に加えて、健康保険組合にも提出します。

この記事では、算定基礎届の対象者や具体的な書き方、標準報酬月額の算出方法などを解説します

1. 算定基礎届に関する基礎知識

算定基礎届とは、労働者と事業主が支払う社会保険料を決定するための書類です。
まずは、算定基礎届に関する基本的な知識から解説します。

算定基礎届とは?

算定基礎届とは、労働者の標準報酬月額を決めるための書類です。算定基礎届は毎年提出する必要があり、標準報酬月額を見直す手続きを「定時決定」と呼びます。なお、算定基礎届は毎年7月10日までに日本年金機構へ提出する必要があります(健康保険組合に加入している場合は日本年金機構と健康保険組合の両方へ提出)。

2020年(令和2年)4月から電子申請の義務化が始まっており、資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人は電子で提出しなければなりません。(※1)

算定基礎届には、毎年4月・5月・6月に支払われた賃金や1ヶ月あたりの平均額を記載します。決定された標準報酬月額に基づいて、労働者と事業主が負担する健康保険料・厚生年金保険料・介護保険料を計算するという仕組みです。

算定基礎届の提出対象になる人・ならない人

算定基礎届の提出について、対象となる人とならない人がいます。すべての労働者が算定基礎届を作成する対象になるとは限らないため、注意しましょう。

算定基礎届の提出対象になる人

算定基礎届の提出対象になるのは、7月1日時点において社会保険に加入している労働者です。特に、昨今はパートやアルバイトの短時間労働者が社会保険に加入する範囲が拡大しているため、間違えないように気をつけましょう。

ほかに、以下に該当する労働者も算定基礎届の提出対象となります。

  • 70歳以上
  • 育児休業中
  • 介護休業中
  • 病気療養中
  • 2ヶ所以上の事業所に勤務している

休業中・療養中の労働者も算定基礎届の提出対象となるため、注意が必要です。

算定基礎届の提出対象にならない人

以下に該当する労働者は、算定基礎届の提出対象となりません。

  • 6月1日以降に社会保険に加入した
  • 6月30日以前に退職した
  • 7月に月額変更届を提出する予定である
  • 8月または9月に随時改定が予定されている旨の申し出を行った

6月1日以降に社会保険に加入する労働者は、社会保険の資格を取得したときに翌年8月までの標準報酬月額が決まります。また、6月30日以前に退職した人に関しては、事業主が社会保険料を天引きする必要がないため算定基礎届の提出が不要です。

7月・8月・9月の随時改定の要件に該当することが予定されている労働者に関しては、事業主が申し出を行った場合は、算定基礎届の届出を省略できます。

算定基礎届と月額変更届の違い

月額保険料の手続きには、算定基礎届のほかに月額変更届があります。月額変更届とは、労働者の固定的賃金に変動が起き、標準報酬月額を改定するときに提出します。算定基礎届と同様に、資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人(※1)は電子で提出しなければなりません。

なお、月額変更届を提出して臨時的に標準報酬月額を改定する手続きを「随時改定」と呼びます。月額変更届を提出する必要があるのは、以下の条件にすべて該当する労働者がいるときです。

  • 昇給または降給等により固定的賃金に変動があった
  • 変動月からの3ヶ月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた
  • 3ヶ月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である

上記すべての要件を満たした場合、月額変更届を速やかに日本年金機構または健康保険組合へ提出しなければなりません。賃金の実態に合わせて社会保険料を決定する必要があることから、提出期限は「速やかに」と定められています。

提出後、変更後の報酬を初めて受けた月から起算して4ヶ月目より、標準報酬月額が改定されます。

2. 算定基礎届で必要になる標準報酬月額とは?

標準報酬月額とは、社会保険料を決定する基礎となるものです。

社会保険料は労使折半なので、労働者だけでなく事業主にも影響を与えます。以下で、標準報酬月額の意味や算出方法などを解説します。

標準報酬月額の意味

標準報酬月額とは、労働者と事業主が毎月支払う社会保険料を計算する基礎となるものです。毎月の給与に合わせて社会保険料を計算する作業は煩雑になるため、「この人の給与は年間このくらいだろう」と仮定して、1年分(9月から翌年8月まで)の社会保険料を決めておくのです。

標準報酬月額は、4月・5月・6月の給与を平均して計算します。算出した標準報酬月額を「保険料額表」の等級に当てはめて、保険料を決定するという仕組みです。

標準報酬月額の対象となる報酬・ならない報酬

標準報酬月額を算出するにあたり、報酬の中でも対象となるもの、対象外となるものが存在します。対象となる報酬を理解しておかないと、誤った算定基礎届を提出することになってしまうため注意が必要です。

標準報酬月額の対象となる報酬

以下の報酬は、標準報酬月額の算定対象です。

  • 基本給
  • 毎月固定で支給される手当(残業手当、役職手当、職務手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、休業手当など)※通勤手当が3ヶ月や6ヶ月などまとめて支給されている場合は、1ヶ月分の金額を各月に計上する
  • 賞与(年4回以上支給されるもの)
  • 現物で支給されるもの(定期券、回数券、食事、社宅費など)

定期券や食事などを金銭ではなく現物支給している場合、金額に換算する必要があります。

標準報酬月額の対象とならない報酬

以下の報酬は、標準報酬月額の算定対象外です。

  • 事業主が恩恵的に支給するもの(病気見舞金、慶弔見舞金、災害見舞金、結婚祝金など)
  • 傷病手当金、休業補償給付(公的な保険給付金)
  • 出張旅費、交際費(経費)
  • 賞与(年3回までの賞与)
  • 社宅(本人からの徴収が現物の価格以上の場合)
  • 食事(本人からの徴収が価格の2/3以上の場合)
  • 退職手当

労働の対価とは性格が異なる報酬に関しては、標準報酬月額の算定対象外です。

標準報酬月額の算出方法

標準報酬月額を算出する際には、以下のような流れで進めます。

  1. 4月・5月・6月の支払基礎日数をカウントする
  2. 4月・5月・6月に支払った報酬を調べる
  3. 4月・5月・6月に支払った報酬の平均を計算する

4月・5月・6月の支払基礎日数によって、標準報酬月額の算出方法は以下のように異なります。

【一般労働者の場合】

4月・5月・6月の支払基礎日数 標準報酬月額の決定方法
3ヶ月とも17日以上ある場所 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定
1ヶ月または2ヶ月が17日以上で、他は17日未満の場合 17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定
3ヶ月とも17日未満の場合 従前の標準報酬月額で決定

【短時間労働者の場合】

4月・5月・6月の支払基礎日数 標準報酬月額の決定方法
3ヶ月とも17日以上ある場所 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定
1ヶ月または2ヶ月が17日以上で、他は17日未満の場合 17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定
3ヶ月とも15日以上17日未満の場合 3ヶ月の報酬月額の平均額をもとに決定
1ヶ月または2ヶ月が15日以上17日未満で、他は15日未満の場合 15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定
3ヶ月とも17日未満の場合 従前の標準報酬月額で決定

月給制の場合、支払基礎日数は暦日となります(欠勤がない場合)。日給制や時給制の場合は出勤日数が支払基礎日数となるため、勤怠簿やタイムカードで確認しましょう。

4月・5月・6月の平均給与を計算したら、保険料額表を用いて標準報酬月額を決定します。保険者が協会けんぽの場合は都道府県ごとに保険料額表が異なります。事業所が所在する都道府県の保険料額表を確認しましょう。

3. 算定基礎届の書き方

初めて人事労務の事務を行う方の中には、算定基礎届の書き方がわからないという人もいるのではないでしょうか。

以下で、算定基礎届の書き方を解説します。

図1被保険者報酬月額算定基礎届

出典:日本年金機構「被保険者報酬月額算定基礎届」

算定基礎届を記入する流れ

算定基礎届を記入する際、以下の流れで行えば、記入を間違えるリスクを軽減できます。

STEP1:支払基礎日数を記入する

支払基礎日数は「⑩日数」の欄に記入しましょう。月給制か日給制・時給制かによって日数のカウント方法が異なるため、注意してください。

STEP2:通貨と現物支給額、合計額を記入する

続いて、4月・5月・6月に支払った報酬(通貨と現物支給額)を調べて「⑪通貨」「⑫現物」「⑬合計」の欄に記入します。「⑮平均額」に1ヶ月あたりの平均額を記入すれば、報酬月額を算出できます。

STEP3:総計額を記入する

対象月の報酬を総計し、「⑭総計」の欄に記入します。支払基礎日数が17日未満の月に関しては、総計に含めない点に注意しましょう。

STEP4:平均額を記入する

総計を計算出来たら「⑮平均額」の欄に、総計を対象月数で割った数値を記入しましょう(小数点以下は切り捨て)。求めた数値を「保険料額表」の等級に当てはめて、標準報酬月額を決定します。

パートやアルバイトなどの短時間労働者に関しては、実際に勤務した日数が支払基礎日数に該当します。4月・5月・6月の支払基礎日数が全て15日未満の場合は備考欄の「6.短時間労働者」を○で囲み、それ以外の短時間労働者に関しては「7.パート」を○で囲みましょう。

算定基礎届の記入で注意すべき主なケース

算定基礎届を記入する際に間違えやすいケースがあるため、注意が必要です。

4月・5月・6月が繁忙期で残業が集中している場合

4月・5月・6月が繁忙期の場合、例外的に4月・5月・6月の3ヶ月ではなく「年間平均」で報酬月額を算出するケースがあります。残業手当の兼ね合いから標準報酬月額の等級が高くなりやすい傾向にあるため、この場合、「本来の方法で算出した標準報酬月額」と「年間平均で算出した標準報酬月額」を比較します。2等級以上の差が生じる場合、年間平均から算出した標準報酬月額を用いることが可能です。
その後は通常と同じ流れで算定基礎届を作成し、「修正平均額欄」に前年7月から6月までの平均額を記入しましょう。さらに、備考欄の「年間平均」を○で囲みます。

なお、年間平均で算定基礎届を提出する際には、事業主の申立書と労働者本人の同意が確認できる書類を添付しなければなりません。

8月・9月に月額変更届(随時改定)を予定している場合

8月・9月に随時改定を予定している労働者に関しては、備考欄の「月額変更予定」を○で囲み、報酬月額欄を空欄にして問題ありません。随時改定に該当する月に、忘れずに月額変更届を提出しましょう。

休業などで4月・5月・6月に報酬の支払いがない場合

休業などの事情で4月・5月・6月に報酬の支払いがない場合は、従前の標準報酬月額と同じ方法で算出します。算定基礎届の総計額と平均額は空欄にして備考欄の「病休・育休・休業」のいずれかを○で囲みましょう。「その他」の欄には「○月○日より休業」など、理由を記入します。

4月・5月・6月のいずれも支払基礎日数が17日未満の場合

4月・5月・6月のいずれも支払基礎日数が17日未満の場合、直近の標準報酬月額をそのまま適用します。

休業手当の支給があった場合

7月1日時点で休業が解消されている場合、休業手当を含まない月のみ算定基礎届を記入します。なお、4月・5月・6月のすべてで休業手当を支払っている場合は、従前の標準報酬月額を用います。

7月1日時点で休業が解消されていない場合は、休業手当を支払った月と通常の給与を支払った月を含めて算出します。
休業が解消された後に標準報酬月額に2等級以上の差が生じる場合は、月額変更届を提出しましょう。

給与が翌月払いの場合

給与が翌月払いの場合、支払基礎日数は報酬の支払い対象となった日数をカウントします。例えば「末日締め、翌10日払い」の場合、4月の支払基礎日数は31日となります(4月10日分給与の算定対象期間は3月1日から3月31日のため)。給与が支払われた月の歴日数ではなく、報酬の支払い対象となった日数をカウントする点に注意しましょう。

4月・5月・6月の期間に入社した場合

4月・5月・6月の期間に入社した労働者に関しては、1ヶ月分の給与が全額支払われていない月を除外します。例えば、4月15日に入社した場合、4月は空欄にして5月と6月の欄に給与を記入しましょう。あわせて、備考欄の「途中入社」を○で囲み入社日を記入します。

6月30日以前に退職した場合

6月30日以前に退職した労働者に関しては、該当する被保険者(労働者名)欄に斜線を引き、備考欄に「○月○日退職」と記入します。

4. 算定基礎届に関するよくある質問

最後に、算定基礎届に関するよくある質問を紹介します。

●算定基礎届の提出先はどこですか?
保険者が全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合、日本年金機構に提出します。
保険者が健康保険組合加入の場合、日本年金機構と健康保険組合の両方へ提出します。

●算定基礎届を提出しなかったらどうなりますか?
年金事務所から催告状が届き、提出するように催告を受けます。催告に応じない場合は6ヶ月以下の懲役または50万円の罰金を科される可能性があるため、放置すべきではありません。

●算定基礎届と月額変更届ではどちらが優先されますか?
月額変更届が優先されます。算定基礎届を提出した後に給与の変動があり月額変更届を提出した場合、月額変更届の内容が優先されます。

●算定基礎届は電子申請義務化ですか?
算定基礎届は電子申請義務化対象の手続きに該当します。ただし、義務化の対象となっているのは資本金等の額が1億円を超える等の特定の法人です。(※1)

年金事務所や健康保険組合へ算定基礎届を提出する際には「Charlotte」の活用がおすすめです。簡単な操作で、算定基礎届や月額変更届をはじめとした社会保険関係の手続きを行えます。

図2算定基礎届提出方法比較表

図2の通り、健康保険組合に所属している企業の場合、e-Govや届出作成プログラムでは健康保険組合の電子申請に対応をしていないため、「APIソフト」の導入を検討する必要があります。

「Charlotte Kenpo Basic」では、義務化対象企業様(※1)のみ健康保険組合への算定基礎届の電子申請が無償で利用可能です。Charlotteの導入有無に関わらずご利用可能なサービスとなっておりますので、ご利用を検討される方は以下よりお問い合わせください。

5. 算定基礎届とは社会保険料を決めるための大切な書類!必ず提出しよう

算定基礎届は毎年7月10日までに提出する必要があります。算定基礎届を提出することで支払う社会保険料が決定するため、重要な書類といえるでしょう。

算定基礎届についてさらに詳しく知りたい方は以下の記事も参照ください。

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Point2:e-Gov、マイナポータル、e-Tax、eLTAXのシステムの画面を利用せずCharlotte1つで申請可能
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※1:厚生労働省より、2020年4月から特定法人についての「社会保険」の電子申請利用の義務化が報じられました。詳しくはリーフレットをご確認ください。
出典:厚生労働省「2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。」

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