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第82回
企業にとっての新しい選択肢:人材派遣型ふるさと納税のメリット

近年、企業版ふるさと納税の新しい形として注目を集めているのが「人材派遣型」の取り組みです。

企業が金銭的な寄附に加え、社員を一定期間地方自治体に派遣することで、地域活性化と企業の成長を同時に実現できる企業版ふるさと納税。地域課題の解決に貢献しながら、企業自身も税制優遇や人材育成、ブランド価値向上のメリットを享受できるため、ますます多くの企業が取り入れています。

本記事では、そんな人材派遣型ふるさと納税の特徴と企業にとってのメリットを詳しく解説します。

1. 人材派遣型の企業版ふるさと納税とは?

企業版ふるさと納税は、企業が地方自治体に寄附を行うことで、法人税などの税額控除を受けられる仕組みです。
地方創生の推進を目的として2016年にスタートし、寄附額の最大約6割が税額控除される制度として多くの企業が活用しています。

企業版ふるさと納税で近年注目を集めているのが「人材派遣型」の企業版ふるさと納税です。

人材派遣型ふるさと納税は、通常の金銭的な寄附に加えて、企業の社員を一定期間、自治体に派遣する取り組み。地域の課題解決に直接貢献する新しいスタイルの地方創生支援です。

2. ふるさと納税人材派遣型の特徴

企業版ふるさと納税には、大きく分けて2つのパターンがあります。(表1)

表1

通常型 人材派遣型
支援内容 寄附のみ(資金支援) 寄附+人材派遣
(資金+人の支援)
税制優遇 最大約6割の税額控除 最大約9割の税額控除
(人件費も対象)
社員の働き方 通常どおり企業内で勤務 一定期間、自治体で勤務
企業の評価 地域貢献・税額控除 地域貢献・税額控除に加え、人的資本投資やSDGsアピールの効果も高い

人材派遣型の企業版ふるさと納税は、寄附に加えて社員の派遣という形で地域貢献を行うため、単なる寄附にとどまらず、企業にとっても大きなメリットがあります。

主な特徴として、税制優遇が通常型よりも大きい点が挙げられます。派遣社員の人件費も税額控除対象となるため、最大で約9割の税負担軽減が可能となり、企業にとって非常に有利な制度です。

さらに、この仕組みを通じて企業はSDGsやESGへの具体的な取り組みを実践することができ、地域創生への貢献姿勢を強調することができます。これにより、投資家や取引先、求職者などさまざまなステークホルダーからの評価を得やすくなり、ブランド力を向上させることができます。

また、社員が地方自治体での勤務を通じて得る実体験は、通常の業務では得られない視野の広がりや課題解決能力の向上をもたらし、社員の成長に大きく寄与します。
この経験は、企業にとっても貴重な財産となり、長期的な人材育成に繋がる点が大きな魅力です。

3. 企業が得られるメリット

人材派遣型は、単なる寄附だけで終わらないところが最大の魅力です。
具体的には、次のようなメリットがあります。

(1)税制優遇以上の付加価値

通常型では寄附金額に対して最大6割の税額控除が適用されますが、人材派遣型では寄附額に加えて、派遣社員の給与や旅費などの費用も税額控除対象となります。
これにより、最大約9割の税負担軽減が可能になり、実質的なコストは大幅に削減されます。

さらに、税制優遇にとどまらず、企業にとっては“地域貢献”と“社会的責任”を果たしながら、財務面でも大きなインパクトを得ることができます。

(2)ブランド価値の向上と社会的評価

地域貢献と社員派遣を通じた社会的責任の実践は、企業の社会的評価を高めます。
特に、SDGsやESGへの具体的な取り組みとしてアピールできる点は大きな強みです。

企業が地域創生に貢献し、社会課題解決に積極的に取り組んでいる姿勢を示すことで、投資家、取引先、求職者からの信頼を得ることができるでしょう。
このような取り組みは、企業のブランド力を一層強化する要因となります。

(3)社員の実体験が企業の財産に

人材派遣型では、社員が地方自治体での実務経験を積むことができるため、普段の業務では得られない貴重な学びと成長を実現します。

特に、地域特有の課題に向き合うことで、社員の視野が広がり、問題解決力や協調性が高まります。
これにより、社員が自己成長を感じると同時に、企業全体のパフォーマンス向上にも繋がり。社員にとっても、貴重なキャリアの一環として位置づけることができます。

(4)採用・定着率の向上

企業の地域貢献活動に積極的に参加することで、特に社会貢献を重視する求職者層からの注目を集めやすくなります。

また、派遣経験者が帰社後にその成果や経験を共有することで、社内の結束力が高まります。
さらに、人的資本への投資として、社員が大切にされていることを実感できるため、従業員の定着率が向上し、企業文化がより強固なものとなるでしょう。

4. 人材派遣型ふるさと納税の対象となる業務例

企業版ふるさと納税(人材派遣型)の特徴の一つは、地域に特化したさまざまな業務で社員が活躍できることです。
これにより、企業は地域貢献と社員の成長を同時に実現できます。具体的な業務内容は、地域のニーズや課題に応じて異なります。(表2)

表2

業務分野 内容例
地域振興・観光支援 地域資源の発掘、観光コンテンツの開発、SNS運用など
教育支援 キャリア教育、プログラミング教室、部活動支援
ICT活用支援 自治体業務のDX化支援、ITインフラ整備
地域課題の調査・分析 アンケート実施、地域データ活用
防災・減災支援 地域の防災訓練企画、防災計画の立案支援

 

(1)地域復興、観光・産業支援

地域資源の発掘、観光コンテンツの開発、観光プロモーションの戦略立案、SNS運用や地域イベントの企画運営など、地域の魅力を発信する活動が中心です。
地域資源を最大限に活用し、観光業を活性化するための支援を行います。

地元の観光業の活性化や地域ブランドの向上を目指した支援活動は、特に観光業が盛んな地域で効果的です。

例えば、観光地のPR活動としてSNS運用を担当し、観光客の誘致を図る施策を実施します。
また、観光コンテンツの開発には地域の特産品や風景、文化を活用し、新たな観光プログラムを創出することで、地域経済の活性化に繋がります。

(2)教育支援

地元の学校や自治体と連携したキャリア教育、プログラミング教室の開設、部活動支援、職業訓練の実施が中心です。

特に、地域の子どもたちに対する教育支援は、未来の地域発展に直結するため、重要な活動となります。

子どもたちのキャリア教育やスキル習得の支援は、地域の将来を担う人材の育成に直結します。

たとえば、プログラミング教育を通じてITスキルを向上させる授業を開催し、地域の子どもたちに新しい未来を切り開く力を育てます。
地域に根ざした教育支援活動は、地元の学校や教育機関との連携により、持続的な効果を発揮します。

(3)ICT活用支援

自治体業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するため、ITインフラの整備や、データ分析基盤の構築、電子申請システムの導入などをサポートします。

特に、情報技術を駆使して業務効率化や市民サービス向上に寄与します。
多くの自治体が抱える課題のひとつが、業務の効率化と市民サービスの向上です。

ICTを活用した業務改革支援では、オンラインでの行政手続きの整備や、地域住民向けのデジタルサービスの開発が求められます。
企業はこれらの業務をサポートすることで、地域社会に貢献しつつ、社員にとってもITスキルを活用した新たな経験を得ることができます。

(4)地域課題の調査・分析

地域の課題を把握するためのアンケート調査や、地域データを活用した課題分析を行います。

自治体や地域団体と連携して、人口減少、経済の活性化、環境保護など、地域特有の問題に対する解決策を見出すための情報収集やデータ分析が行われます。

地域ごとに異なる課題を明確化し、解決に向けたデータを提供する調査活動は非常に重要です。具体的には、人口減少や高齢化問題に関する調査や、地域経済の分析、環境保護に関するデータ収集などを実施し、その結果を地域振興策に生かすことができます。
地域の現状をデータで把握し、それに基づく対策を提案することは、地域の未来を切り開くカギとなるでしょう。

(5)防災・減災支援

地域の防災訓練の企画、災害時の対応マニュアルの作成、防災計画の立案支援、また、防災意識向上のための啓発活動を行います。

特に災害が頻発する地域では、住民や地域団体に対して防災教育を行い、地域全体で危機管理能力を高める取り組みが求められます。

防災対策は、特に災害リスクの高い地域にとっては欠かせない支援分野です。派遣社員が地域の防災計画を作成したり、防災訓練を企画・実施したりすることで、地域住民の防災意識を高め、災害時に迅速に対応できる体制を築くことができます。

企業としても、地域社会の安全・安心に貢献する取り組みを行うことで、社会的責任を果たしつつ、企業のブランド価値を向上させることができるでしょう。

5. 人事・労務担当が押さえるべきポイント

人材派遣型ふるさと納税を活用する際、いくつかの実務面で確認すべきポイントがあります。

  • 派遣社員の人選・社内調整
  • 派遣期間や業務内容に合わせた適性・スキルの確認
  • 本人のキャリアや希望を考慮したマッチング
  • 派遣中の給与・待遇の整備
  • 出張手当や住居手配などの検討
  • 派遣先自治体との連携
  • 業務内容や目標設定のすり合わせ
  • 受け入れ体制やフォロー体制の確認
  • 派遣後のフォローアップ
  • 経験の社内共有やキャリア支援の活用
  • 派遣体験者の声を人材育成や採用活動に活かす

まず、派遣社員の人選と社内調整が必要です。
派遣期間や業務内容に適したスキルや適性を確認し、社員のキャリアや希望に合った人材をマッチングすることが重要です。
また、派遣中の給与や待遇の整備も重要です。給与は企業が負担するため、出張手当や住居手配の検討を行いましょう。

さらに、派遣先自治体との連携も欠かせません。業務内容や目標設定を事前にすり合わせ、受け入れ体制を確認しておきます。

最後に、派遣後のフォローアップも重要です。派遣経験を社内で共有し、キャリア支援や人材育成に活かすことが求められます。また、派遣体験者の意見を採用活動に活用することも有益です。

実務上の対応ポイントについては、以下の記事も参考になります。

まとめ

人材派遣型の企業版ふるさと納税は、単なる寄附を超えた“攻め”の地域貢献策といえます。

人材派遣型の企業版ふるさと納税を取り入れることで、税制優遇という経済的メリットはもちろん、企業ブランディングや人材育成、SDGs・ESGへの具体的な取り組みとしても高い効果を発揮します。

企業としては、今後の人的資本投資や人材戦略の一環として、ぜひ検討したい制度のひとつといえるでしょう。

本コラムの著者

山下 うみ

フリーライター

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