令和7年(2025年)1月1日より、労働安全衛生法に関する一部の手続きについて、常時50人以上の労働者を雇用する事業所を対象に電子申請の利用が義務化されました。
義務化対象のひとつである「定期健康診断結果報告書」については、対応が必要な企業の労務担当者に、電子申請の準備や提出方法の見直しが求められています。
本記事では、定期健康診断結果報告書の概要、記入方法、提出手順について解説するとともに、電子申請義務化に対応するためのポイントをご紹介します。
電子申請義務化に関する他の対象書類や実務対応については、以下の記事もあわせてご参照ください。
目次
1. 定期健康診断結果報告書とは
定期健康診断結果報告書とは、企業が実施した定期健康診断の結果をまとめ、所轄の労働基準監督署に報告するための書類です。
労働安全衛生法第66条および労働安全衛生規則第52条の4に基づき、労働者の健康状況の把握・管理を目的として提出が義務付けられています。
令和7年(2025年)1月1日からは、この定期健康診断結果報告書の電子申請が義務化されました。
これにより、原則として紙での提出は認められず、所定の電子システムを通じた報告が求められます。
特に定期健康診断結果報告書は義務化の対象となっており、企業は電子申請への対応が必須となります。
2. 定期健康診断結果報告書の記入方法
報告書には、厚生労働省が定める「様式第6号」を使用します。
記入にあたっては、以下の項目に沿って正確な情報を記載する必要があります。
- 健診実施日:定期健康診断を実施した日付を記載
- 対象人数:健診を受けた労働者の人数を記入します。対象は常時使用する労働者(パート・アルバイト含む)
- 有所見者数:健康診断の結果、所見が認められた人数を記載
- 有所見者への措置状況:医師の意見に基づき講じた就業上の措置(就業制限、配置転換など)について記載
その他、健康診断を実施した医療機関名や担当産業医の情報、会社情報(企業名、所在地、担当者連絡先など)も忘れずに記載する必要があります。
書式は労働基準監督署や厚生労働省のウェブサイトから入手でき、電子申請の場合はe-Govの画面上で直接入力・提出が可能です。
事前に必要な情報を整理し、スムーズに入力できるよう準備しておきましょう。
3. 定期健康診断結果報告書の提出方法と提出期限
定期健康診断結果報告書は、提出方法や期限を正しく把握しておくことが重要です。
ここでは、提出時に必要な対応や注意点について詳しく解説します。
提出期限
提出期限は、毎年6月30日までです。
前年4月1日から当年3月31日までに実施された定期健康診断の結果について、期限内に労働基準監督署へ報告する必要があります。
提出が遅れた場合、労働基準監督署からの是正指導や改善命令の対象となる可能性があるため、必ず期限を守ることが重要です。
なお、すべての従業員を1日で受診させることが難しい事業場では、健康診断を複数回に分けて実施し、一定期間分をまとめて報告することが可能です。
この場合、提出書類に対象期間や提出回数を記載することで、複数回に分けた報告に対応できます。(具体的な様式の運用は所轄労基署へ確認してください。)
提出方法
令和7年(2025年)1月からは、さらなる電子申請義務化の対象拡大に伴い、「定期健康診断結果報告書」も含まれることとなっています。
電子申請義務化の拡大により、原則として紙での提出は認められず、e-Govを通じた電子申請が必須となります。
電子申請を行う場合、デジタル庁が提供する「電子申請届出システム(e-Gov)」を利用したオンライン手続きが必要です。
4. 電子申請の義務化に向けた準備ポイント
電子申請への切り替えにあたり、労務担当者が事前に準備すべき主なポイントは以下の通りです。
- 提出環境の整備:e-Govが利用できるPCの準備や、社内ネットワークのセキュリティ確保、使用するブラウザ・電子証明書が準備できているか等を確認しましょう。
- アカウントの準備:e-Govを利用する為には、e-GovアカウントやgBizID、Microsoftアカウント、Googleアカウント等が利用できます。事前に申請に利用できるアカウントの登録を行っておきましょう。
電子申請に不安がある場合は、クラウド型の電子申請サービスを導入することで、提出漏れや入力ミスを防ぐことができます。
電子申請に関する準備や導入の注意点については、以下記事もご参考ください。
5. 電子申請に対応するためのセキュリティと体制整備の重要性
電子申請の義務化により、企業にはシステム上の正確な操作だけでなく、情報管理やセキュリティ体制の見直しも求められます。
e-Govアカウント情報の管理、権限の適切な設定、提出データ保管体制や、誤送信・不正アクセス防止措置(ファイル管理ルール、操作ログの記録等)を整備する必要があり、従来以上に組織としての情報統制力が問われます。
特に複数の担当者や部署が関わる場合、誤送信や設定ミスによる情報漏洩リスクを避けるためにも、アクセス管理や操作ログの確認体制を整備しておくことが重要です。
また、担当者の異動や退職時にアカウント情報が放置されると、不正利用や管理漏れの原因にもなります。
電子申請の円滑な運用には、単なる仕組みの変更だけでなく、企業全体での申請業務を支える体制の構築が鍵となります。
今後は、申請システムの基本的な操作だけではなく、社内での申請手順や管理方法をしっかり整えることが重要になります。
まとめ
定期健康診断結果報告書の提出は、企業の法令遵守と従業員の健康管理の両面で重要な役割を担います。
すでに施行されている2025年からの電子申請義務化により、これまで以上に正確かつ迅速な対応が求められます。
提出にあたっては、e-Gov上での操作方法に慣れ、必要な情報(健診実施日、対象人数、有所見者数など)をあらかじめ整理しておくことが、正確な対応の鍵となります。
事前に社内体制などを含め整備しておくことで、今後の提出も円滑に対応できるでしょう。
「Charlotte(シャーロット)」とは?
「Charlotte」は、人事給与システムのデータを活かし、幅広い電子申請(146手続き)に対応。26の人事給与系システムとの連携実績があり、複数のソフトを介さず1つのシステムで行えるSaaS型クラウドサービスです。
●社会保険、雇用保険、労働保険の電子申請 ●36協定や就業規則変更などの労使手続き ●健康保険組合に向けた手続き ●労務担当者が対応する税申告「e-Tax」「eLTAX」に関する申告
さらにオプションとの組み合わせで公文書や離職票、支払い決定通知書を従業員に自動で届けるサービスなど、労務DXの実現により労務ご担当者様の業務負担を軽減します。