人事部門で労務管理の効率化を進めるため、クラウド型の労務システム(SaaS)の導入を検討する企業は増えています。
電子申請や手続きの自動化など、多くのメリットがある一方で、導入の際に大きなハードルとなるのがセキュリティ審査です。
特に大企業では、情報システム部門や法務部門による確認が厳しく、導入検討が思うように進まないケースも少なくありません。その際に必ずと言ってよいほど求められるのが「セキュリティチェックシート」です。
本記事では、労務SaaS導入時に求められるセキュリティチェックシートの基本と、社内審査を円滑に進めるためのポイントを解説します。
目次
1. 労務SaaS導入を阻む「情報システム部門の懸念」とその正体
人事部門が新しい労務システム(SaaS)を導入しようとすると、情報システム部門から「セキュリティ面は問題ないのか」と確認されることがあります。
これは単なる形式的なチェックではなく、企業として重要なリスク管理の一環です。
労務システムでは、従業員の氏名・住所・給与情報、さらにはマイナンバーなどの機微情報を取り扱います。
こうした情報が万が一外部に漏えいした場合、企業は法的責任を問われる可能性があります。
マイナンバーを扱う労務業務の管理方法については以下の記事もあわせてご参照ください。
それだけでなく、従業員からの信頼低下や企業ブランドの毀損にもつながりかねません。
そのため、情報システム部門は新しいサービスを導入する際、そのシステムの安全性や運用体制を慎重に確認します。
この確認プロセスで活用されるのがセキュリティチェックシートです。
2. セキュリティチェックシートとは?
セキュリティチェックシートとは、導入しようとするサービスやシステムなどのセキュリティ対策が、企業の基準を満たしているかを確認するための評価資料です。
企業が外部サービスを導入する際、サービス提供企業(ベンダー)に回答を依頼し、その内容をもとに安全性を評価します。
チェック項目は企業ごとに異なりますが、多くの場合、以下のような領域について質問が設けられています。
- データ管理や暗号化の仕組み
- システムの可用性や障害対策
- 物理的なセキュリティ対策
- ネットワークやアプリケーションの安全性
- 運用体制やインシデント対応
質問数は数十項目から数百項目に及ぶこともあり、特にクラウドサービス導入の際には重要な審査プロセスとなっています。
企業によっては「クラウドサービス利用チェックシート」「SaaSセキュリティ評価表」など、名称が異なる場合もありますが、目的は同じです。
3. 情報システム部門が重視する「3つのセキュリティ評価基準」
セキュリティチェックシートの内容は企業ごとに異なりますが、多くの場合、以下の3つの観点が重視されます。
①データ管理と暗号化
労務システムは、企業の人事情報を扱う基幹システムの一つです。従業員の個人情報や給与データなど、機密性の高い情報が多く含まれています。
そのため、データが安全に管理されているかは最も重要な評価項目です。
具体的には、通信時の暗号化や保存データの暗号化、アクセス権限の管理などが確認されます。
データの保護だけでなく、誰がどの情報にアクセスできるのかを適切に制御する仕組みが整っているかも重要なポイントです。
こうした仕組みが不十分な場合、内部不正や外部からの不正アクセスによって情報漏えいが発生するリスクが高まります。
②システムの可用性と障害対策
労務システムは、日常の人事業務を支える重要なインフラです。もしシステムが停止してしまうと、給与計算や各種申請の処理が滞る可能性があります。
そのため、情報システム部門はシステムの安定性や障害対策についても確認します。
例えば、サーバーの冗長化構成やバックアップ体制、障害発生時の復旧手順などです。
サービス提供企業がどのようなインフラ環境で運用しているのかも、評価の対象となります。
業務継続性を確保するためには、単にシステムが動くだけでなく、万が一のトラブルにも対応できる体制が必要です。
③運用体制と第三者認証
システムそのものだけでなく、サービス提供企業の運用体制も重要な評価ポイントです。
どれだけ優れたシステムであっても、運用体制が整っていなければ安全性を維持することはできません。
例えば、セキュリティ管理体制の整備状況や監査の実施状況、インシデント発生時の対応プロセスなどが確認されます。
プライバシマークやISMSなどの第三者認証を取得している場合、一定のセキュリティ基準を満たしていることの裏付けとなり、審査が進めやすくなる場合もあります。
情報システム部門が確認する項目として、データの保存場所(国内/国外)、ログ監査、認証方式(SSO・多要素認証)などが重要視されることが多くあります。
4. セキュリティチェックシートの回答にかかる負担
セキュリティチェックシートは重要な仕組みですが、実務上は以下のような課題もあります。
- 質問項目が多く回答に時間がかかる
- ベンダーと何度もやり取りが必要になる
- 情シス・人事・法務など複数部門が関わる
このように、回答準備には多くの工数がかかるという課題があります。
セキュリティチェックシートは数十〜数百項目に及ぶこともあり、質問項目が多い場合、ベンダー側でも社内のセキュリティ担当者や開発部門への確認が必要になるため、回答作成に時間を要することがあります。
また、企業ごとにチェックシートの形式や質問内容が異なるため、同じサービスであっても新たに回答を作成しなければならないケースも少なくありません。
その結果、人事部門・情報システム部門・ベンダーの間で複数回の確認が発生し、審査完了まで数週間から1か月程度かかることもあります。
労務管理SaaSの導入を進める際には、このような審査プロセスに一定の時間が必要であることを理解しておくことが重要です。
5. 労務管理SaaS導入審査を円滑にするための「事前相談」の進め方
セキュリティ審査をスムーズに進めるためには、導入申請前の準備が重要です。
特に次のような進め方を意識すると、審査を円滑に進めやすくなります。
①情報システム部門へ事前相談をする
まず重要なのは、情報システム部門との事前相談です。
導入申請の前に、以下を共有しておくとスムーズです。
- 導入目的
- 取り扱うデータの種類
- システム概要
事前に認識を合わせることで、審査時の指摘を減らすことができます。
導入の目的や利用範囲、取り扱うデータの種類などを共有しておくことで、後から大きな認識のズレが生じることを防げます。
情報システム部門の視点を早い段階で取り入れることにより、審査時の指摘を減らすことにもつながります。
②ベンダーへセキュリティ情報を確認する
検討している労務システムのベンダーに対して、セキュリティ関連の資料を事前に確認しておくことも重要です。
導入を検討している労務システムのベンダーに対して、以下のような情報を事前に確認しておきましょう。
- セキュリティチェックシートの回答実績
- セキュリティ認証の取得状況
- データ保護の仕組み
- 障害発生時の対応体制
セキュリティチェックシートの回答実績や認証取得状況、運用体制などを把握しておくことで、社内稟議の準備をスムーズに進められます。
③必要書類をまとめて準備する
さらに、必要となる資料をあらかじめ整理しておくことで、審査のリードタイム短縮につながります。
社内審査では、セキュリティチェックシートだけでなく、サービス仕様書やセキュリティポリシー、データ管理体制に関する資料などの提出を求められるケースも少なくありません。
こうした資料を事前にベンダーから取得し、社内で共有できる状態にしておくことで、追加確認のやり取りを減らすことができます。
結果として、情報システム部門による評価も進めやすくなり、導入検討をよりスムーズに進められるでしょう。
6. 大手企業の基準をクリアする「Charlotte」のセキュリティ設計
労務管理SaaS「Charlotte」では、企業が求めるセキュリティ基準に対応できるよう、堅牢なセキュリティ体制を整えています。
ISMSに準拠した運用体制のもと、通信やデータ保存時の暗号化、厳格なアクセス権限管理、安定したクラウドインフラによる運用など、労務データを安全に管理するための仕組みを備えています。
こうした取り組みにより、多くの大手企業で安心して利用できる労務管理SaaSとして導入が進んでいます。
労務手続きの電子申請や業務効率化を実現しながら、企業の重要な人事データを安全に管理できる点が特徴です。
Charlotteのセキュリティガイド(セキュリティチェックシート)はこちらをご覧ください。
Charlotte(シャーロット)のセキュリティガイド
まとめ
労務管理SaaSの導入では、機能や価格だけでなく、企業の重要な人事データを安全に管理できるかという視点が不可欠です。
特に大企業では、情報システム部門によるセキュリティ審査が導入プロジェクトの成否を左右するケースも少なくありません。
人事担当者としては、セキュリティチェックシートの目的や評価ポイントを理解し、情シス部門やベンダーと事前に情報共有を行うことが重要です。
こうした準備を行うことで、労務管理SaaS導入の社内審査をよりスムーズに進めることができるでしょう。
「Charlotte(シャーロット)」とは?
「Charlotte」は、人事給与システムのデータを活かし、幅広い電子申請(149手続き)に対応。複数の人事給与系システムとの連携実績があり、複数のソフトを介さず1つのシステムで行えるSaaS型クラウドサービスです。
●社会保険、雇用保険、労働保険の電子申請
●36協定や就業規則変更などの労使手続き
●健康保険組合に向けた手続き
●労務担当者が対応する税申告「e-Tax」「eLTAX」に関する申告
さらにオプションとの組み合わせで公文書や離職票、支払い決定通知書を従業員に自動で届けるサービスなど、労務DXの実現により労務ご担当者様の業務負担を軽減します。

