近年、退職代行サービスの利用が増加しています。従来であれば、従業員が上司や人事に直接退職の意思を伝えたうえで手続きを進めるのが一般的でした。
しかし、近年は退職の意向を伝えることに心理的な負担を感じる人も多く、第三者を介して退職手続きを行うケースが増えています。
企業側としては、突然の退職連絡に直面するケースが増えており、「昨日まで普通に出社していた社員が、翌日には連絡もなく退職代行を通じて辞職の連絡をしてきた」といった状況も珍しくありません。
従業員本人と直接連絡が取れない場合も多く、対応に戸惑う企業も少なくないでしょう。
本記事では、退職代行を利用された際の企業の適切な対応について解説します。
目次
1. 退職代行とは?
退職代行とは、従業員に代わって退職の意思を企業へ伝えるサービスです。
依頼者は直接上司や人事とやり取りする必要がなく、代行業者を通じて退職手続きを進めることができます。退職代行サービスには、大きく分けて弁護士が運営する退職代行と民間の退職代行業者の2種類があります。
それぞれの退職代行について以下で解説します。
弁護士が運営する退職代行
弁護士が運営する退職代行は、法律の専門家が対応するため、単に退職の意思を伝えるだけでなく、未払い賃金の請求や退職条件の交渉といった法的手続きを進められます。
企業側が退職を拒否した場合でも、弁護士が代理人として交渉を行うため、従業員は直接対応する必要がありません。
民間の退職代行業者
民間の退職代行サービスは、あくまで従業員に代わって退職の意思を企業へ伝達する役割にとどまります。
労働問題に関する交渉権は持たず、企業側から退職条件の調整を求められたとしても対応はできません。
法的知識が十分でない業者も存在し、企業からの問い合わせに適切に対応できない場合や、トラブルに発展するケースもあります。
企業側としては、従業員がどのタイプの退職代行を利用しているのかを見極めたうえで、適切な対応を取ることが求められるでしょう。
2. 退職希望の従業員が退職代行を利用する理由
近年、退職代行サービスを利用する従業員が増えている背景には、自ら退職を申し出ることに対する心理的・実務的なハードルの高さがあると考えられます。
退職代行を利用する理由には、以下のような理由が挙げられます。
職場の人間関係が悪化している
上司からのパワハラや過度な叱責、職場の雰囲気が悪いことなどが原因で、退職の意思を直接伝えることに大きなストレスを感じることがあります。
上司に退職の意思を直接伝えられない状況では、直接上司へ話すよりも第三者を介した方がスムーズに退職できると考えるのです。
退職の引き止めが強い
人手不足の職場では、退職の申し出を受け入れてもらえず、長時間の説得を受けることがあります。「今辞めると迷惑がかかる」と引き止められたり、退職時期を先延ばしにされたりすることを避けるため、最初から退職代行を利用するケースがあります。
メンタルの不調を抱えている場合
メンタルの不調を抱えている場合も退職代行を利用しやすい理由の一つです。仕事のストレスが原因で精神的に追い詰められていると、退職の意思を伝えること自体が大きな負担になります。
特に、うつ症状などで出勤が困難になっている場合は、直接会社とやり取りすることが難しく、退職代行を使って手続きを進めることが現実的な選択肢となります。
会社とのコミュニケーションが苦手な従業員
コミュニケーションが苦手な従業員も退職代行を利用する傾向があります。
特に若手社員の中には、上司に退職の意思を伝えることに強いプレッシャーを感じる人も多く、できるだけ対面でのやり取りを避けたいと考えることがあります。
その結果、退職代行を通じて円滑に退職しようとするケースが増えています。
上記のように、退職代行の利用者にはさまざまな背景があり、単に「楽をしたい」という理由だけではなく、職場環境やメンタル面の問題が影響していることも少なくありません。企業としては、従業員が安心して退職を申し出られる環境を整えることが、退職代行の利用を減らすための重要な対策となります。
3. 退職代行を利用された際の企業の対応フロー
退職代行を利用された場合、企業は予期せぬ形で退職の意思を知り、迅速で適切な対応、手続きを進めなければなりません。
以下では、退職代行を利用された際の基本的な対応フローについて解説します。
退職連絡を受けた際の対応
退職代行を通じて退職の意思が伝えられた場合、まずは従業員本人と直接連絡が取れるかを確認することが重要です。
退職代行業者が間に入っている場合、従業員の意思が本当に退職に向けたものかどうか、退職代行業者からの通知が正式なものであるかを確かめる必要があります。
また、退職代行業者の信頼性の確認も忘れてはいけません。
信頼性の確認は、トラブルを避けるために非常に重要です。弁護士が監修している場合は法的なサポートが受けられますが、民間の代行業者の場合は法的効力が乏しいことがあり、その対応範囲が限られます。
何よりも、退職の意思が示された際は、慌てず状況を正確に把握しましょう。
退職手続きの進め方を決める
退職が確定した場合、次に進めるべきは退職届や合意書の回収です。
退職代行業者を通じて退職の意向が伝えられたとしても、最終的には正式な退職届を取得する必要があります。郵送での手続きを行う場合もあるため、手続きの進行を管理し、適切に退職に向けた書類を収集しましょう。
また、有給休暇の消化や退職日をどう扱うかも重要な点です。
退職代行を通じて、従業員が有給を消化したい意向を示すことがありますが、企業側としては残りの勤務日数と合わせて、適正に調整を行う必要があります。
退職日を決定する際には、従業員と調整し、法律に基づいた適切な処理を行いましょう。
さらに、未払い給与や退職金の処理についても、正確に計算し、円滑に支払うことが求められます。特に、退職金が支給される場合、退職金の金額や支払い時期について、従業員と合意形成を図りましょう。
労務担当者が対応する退職手続きの基本からイレギュラー対応については以下の記事でご紹介しています。あわせてご参照ください。
業務の引き継ぎについて
退職代行を利用して退職した場合、通常の引き継ぎ業務ができない場合があります。
退職代行業者は業務の引き継ぎを直接行わないため、必要な引き継ぎが滞る可能性があります。この点については、企業側がどのように対応するかが課題となります。
引き継ぎを求めることができるかについては、従業員の意思を尊重する必要があり、退職後の引き継ぎを要求する際には、法的に問題がない範囲で交渉を行います。
ただし、退職代行を通じて辞める決断をした場合、従業員が引き継ぎを拒否する可能性もあるため、その場合の対応策を事前に対策しておきましょう。
退職代行を利用された際、企業としては法的リスクを回避しつつ、円滑に退職手続きを進めることが重要です。冷静で迅速な対応を心がけ、従業員との最適な調整を行いましょう。
4. 退職代行の利用を防ぐために企業ができること
退職代行を利用する従業員が増加する中、企業ができる対策を講じることは、今後の労務管理を円滑に進める上で非常に重要です。
退職希望者が直接相談しやすい環境作り
退職を決意した従業員が退職代行を利用する背景には、上司や人事に直接話すことが難しいと感じる場合が少なくありません。
企業としては従業員が気軽に退職の意向を伝えやすい環境を作ることが大切です。
具体的には、上司と人事担当者が日常的にコミュニケーションを取る機会を増やし、従業員が不安や不満を早期に伝えられる場を設けることが有効です。
また、退職に関するフローやマニュアルを整備し、従業員がどのように退職の意思を伝えればよいかを明確にすることで、従業員は不安なく直接相談できるようになります。
こうした取り組みが、退職代行を利用することなく、従業員が円満に退職するための第一歩となります。
退職をスムーズに受け入れる仕組み(退職手続きの明確化)
退職を希望する従業員にとって、退職のプロセスがスムーズであることは非常に重要です。
退職届の提出方法や退職日、最終勤務日までの業務の引き継ぎ、未払い給与や退職金の支払いなど、退職に伴うすべての手続きをあらかじめ明確化しておくことで、従業員が退職時に迷うことなく、必要な書類や手続きに従って進められるようになります。
退職に際して不明点や疑問がある場合でも、従業員が迅速に対応できるような仕組みを整えることで、退職代行が利用される事態を避けやすくなります。企業内でのマニュアルやガイドラインを整備し、人事担当者や上司が円滑に退職手続きをサポートできる体制を整えておきましょう。
社内ハラスメント対策・メンタルケアの強化
職場でのハラスメントやメンタル面での問題も退職代行を利用する理由に挙げられることが多いです。
従業員が退職代行を利用する背景には、職場での人間関係や上司からの圧力、過度な業務負担などが影響していることが少なくありません。企業としては、社内ハラスメント対策を強化し、従業員が安心して働ける環境を整えることが重要です。
具体的には、ハラスメントの発生を防止するための研修や、第三者による相談窓口の設置が効果的です。ハラスメントを受けている従業員が安心して相談できる環境を整えることで、問題が深刻化する前に解決に向けた対策を講じることができます。
また、メンタルケアの強化も重要です。従業員の心理的な負担やストレスを軽減するために、定期的なメンタルヘルスチェックやカウンセリングサポートを導入し、企業として従業員の心身の健康を支援する環境を作りましょう。
まとめ
以上、退職代行に関する企業の対応と予防策について解説しました。
退職代行サービスの利用が増加している現状において、企業は退職代行業者から連絡があった場合、従業員の退職の意思が確かなものかを確認し、迅速かつ法的に適切な対応を行うことが求められます。
また、退職代行を防ぐためには、従業員が退職の意思を気軽に伝えやすい環境作りや、退職手続きの明確化を進めることが重要です。
企業としては、従業員の不安や不満を早期に解消できるように、円滑なコミュニケーションを促進することが、退職代行の利用を減らすための有効な対策となります。
2025年の深刻な人材不足という課題に関して、大手企業の事例を交えて企業が取り組むべき具体的な対策を知りたい方は、以下の記事もあわせてご参照ください。
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