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退職所得の源泉徴収票|書き方・計算方法・注意点を人事担当者向けに解説

公開日:2026年5月13日

ここがポイント!

  • 退職所得は給与と異なり、他の所得と合算せず単独で税額を計算する分離課税として個別に処理を行う。
  • 税額は勤続年数による控除や「1/2課税」を適用して算出し、退職から1か月以内に書類を本人へ交付する。
  • 退職手続き・税計算・帳票作成を一連の業務として整理し、一括化・一元管理することが重要 。

従業員の退職時に発生する「退職所得の源泉徴収」。
給与とは別枠で処理する必要があり、税額計算や書類作成も独立しているため、実務で迷いやすい領域です。

特に近年は、「退職金だけ別システムで処理している」、「給与システムと連携できず二重管理になっている」といった課題を抱える企業も少なくありません。

本記事では、退職所得の源泉徴収票について、給与所得との違いから所得税・住民税の計算方法、票の書き方、実務上の注意点について解説します。

1. 給与の源泉徴収票と何が違う?退職所得の基本的な位置づけ

退職所得とは、退職に際して勤務先から受け取る退職金や一時金など、退職を理由に支払われる所得を指します。

毎月の給与や賞与は「給与所得」として一括で管理できますが、退職金はそれとは切り離した「退職所得」として個別に処理を行わなければなりません。

給与所得は、他の所得と合算したうえで税額を計算する「総合課税」が適用されます。
一方、退職所得は他の所得とは分離して課税され、原則として源泉徴収で課税関係が完結します。

給与所得の源泉徴収票は原則として翌年1月末までの交付ですが、退職所得の源泉徴収票は退職日から1か月以内に本人へ交付しなければなりません。
退職者が転職先での手続きや確定申告のために必要とするケースもあるため、速やかな交付対応が求められます。

退職所得は給与所得と提出書類が異なるだけではなく、税法上の区分そのものが異なるのです。

それぞれの主な違いは、以下のとおりです。※表1

表1

給与所得 退職所得
課税方式 総合課税(他の所得と合算) 分離課税(単独で税額計算)
年末調整 対象 対象外
交付期限 年末調整後 退職後1か月以内

2. 退職金にかかる所得税の計算方法

退職所得の計算は、給与よりもシンプルに見えて、実はミスが起きやすい構造です。
次のポイントをおさえてミスの予防を行いましょう。

ポイント①:勤続年数に応じた退職所得控除額を算出

  • 勤続20年以下の場合は、40万円×勤続年数(最低80万円)
  • 勤続20年を超える場合は、800万円+70万円×(勤続年数−20年)

※端数がある場合、1年未満の端数は切り上げて1年として計算します。

ポイント②:課税退職所得金額を算出する

課税退職所得金額 =(支払金額 − 退職所得控除額)× 1/2
上記の計算式のように、退職所得は控除後の金額をさらに2分の1にした額が課税対象となります。

ただし、勤続年数5年以下の役員等(特定役員退職手当等)には、この1/2課税が適用されません。
また、2022年度税制改正により、勤続5年以下の一般従業員(非役員)が受け取る退職金のうち、控除後300万円を超える部分については、その超過部分について1/2課税を適用しないこととなっています。

ポイント③:税率を適用して源泉徴収税額を決定する

源泉徴収税額 =(課税退職所得金額 × 税率 − 控除額)× 102.1%

上記の計算式のように、課税退職所得金額に所得税の速算表(超過累進税率)を当てはめ、復興特別所得税(2.1%)を上乗せして最終的な源泉徴収税額を求めます。

ポイント④:退職所得の受給に関する申告書の提出状況を確認する

「退職所得の受給に関する申告書」が未提出の場合、一律20.42%(所得税+復興特別所得税)で源泉徴収しなければなりません。

  • 申告書の提出がある場合:退職所得控除を適用した通常計算
  • 申告書の提出が無い場合:支払金額に対して、一律20.42%(所得税+復興特別所得税)を源泉徴収

通常計算と比べて税額が大きく変わるため、退職前の回収フローを整備しておくことが重要です。

参照:国税庁_ No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

3. 住民税の処理は給与との違いに注意

退職所得にかかる住民税は、所得税と異なり税率が一律です。

【住民税額の計算】
住民税額 = 課税退職所得金額(1,000円未満切捨て)× 10%
(内訳:都道府県民税4% + 市区町村民税6%)

退職所得に係る住民税は支払時に特別徴収し、翌月10日までに退職者の居住地の市区町村へ直接納付します。

住民税の特別徴収実務については、以下の記事もあわせてご参照ください。

所得税の納付期限とは別に管理が必要なため、見落とさないよう注意しましょう。

4. 退職所得の源泉徴収票の記入方法

退職所得の源泉徴収票は、国税庁のホームページから、手書き・入力用の様式をダウンロード、またはe-Taxでの作成ができます。

退職所得の源泉徴収票の記入項目自体は多くないものの、計算ロジックと連動しているためミスが起きやすい書類です。

記入項目には、受給者(従業員)の氏名・住所や支払者(企業)の他に、以下の記入項目があります。
記入項目と記入時のポイントを確認しミスをしないようにしましょう。※表2

表2

主要項目 記入内容
支払金額 退職金として支払った総額(控除前の金額)を記入
源泉徴収税額 復興特別所得税を含めた所得税の源泉徴収額を記入
退職所得控除額 勤続年数をもとに算出した控除額を記入
勤続年数(年・月) 入社日から退職日までの期間を記入
※勤続年数に端数がある場合は、切り上げて記入

参照:国税庁_退職所得の源泉徴収票(同合計表)_ 令和 年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)PDF

5. 退職所得の源泉徴収票処理の課題と解決のポイント

退職所得の源泉徴収票は、給与計算システムが対応していないケースも珍しくありません。そのため、

  • 退職所得の計算だけ別のツールや手計算で対応している
  • 複数システムを行き来するため、転記ミスが起きやすい
  • 法改正のたびに計算ロジックを確認・修正しなければならない

といったミスや担当者の負担などの課題が発生します。

このような課題を解消するためのポイントは、「退職所得の処理を給与業務と一元管理する」ことです。
具体的には、

  • 退職手続きと連動した計算処理
  • 申告書の事前回収フロー整備
  • 源泉徴収票の自動作成・電子化

といった仕組みづくりが有効です。

給与計算から退職所得の源泉徴収票発行まで対応しているシステムを使えば、勤続年数や退職金額を入力するだけで控除額・課税額の自動計算が完了し、各提出先向けの帳票を正確に出力することができます。

労務・税務業務の効率化やシステム活用については、以下の記事もあわせてご参照ください。

法改正への対応もシステム側で継続的に行われるため、担当者が都度確認・修正する手間を少なくでき、ミスやトラブルを防ぐことができます。

まとめ

退職所得の源泉徴収は、給与とは異なる分離課税であることから、計算方法・帳票・処理タイミングのすべてが独立しています。

そのため、制度理解だけでなく、実務フローの設計次第で業務負荷やミスの発生率が大きく変わる領域です。

加えて、多くの企業で見られる「退職所得だけ別管理」という運用は、二重入力や属人化の温床になりやすく、見直しの余地があります。

退職手続き・税計算・帳票作成を一連の業務として整理し、一括化・一元管理されたフローへ移行することで、実務の安定性と効率は大きく向上します。

退職者対応が増える時期に備え、現行の運用を棚卸しし、どこに無駄やリスクがあるのかを可視化しておくことで、トラブル防止につながります。

「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般)」や「退職手当金等受給者別支払調書(及び同合計表)」に対応している「Charlotte(シャーロット)」を活用することで、退職業務の効率化と精度向上を同時に実現できます。
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本コラムの著者

塩坂 うみ

フリーライター

社会保険関連や企業の人事・労務向けのコラムを中心に執筆するフリーライター。美容関連やクリニック紹介、マニュアル作成などの執筆経験を活かし、読者が理解しやすい、実務に即した記事づくりを心がけている

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